眷属のススメ

原点回帰 ④

刑部家から、ヴァンパイアポリスへの道のりをこんなにもどかしく思ったのは初めてだ、それは、俺の気持ちが急いているからかもしれない。

アヤメに何と言って切り出すか、頭の中でぐるぐるとそればかり考えていた。

ヴァンパイアポリスに到着する。俺は、車からさっき買ったチョコレートやドリンクを持って一気に4階に駆け上る。事務所には、俺以外のすべての隊員がいた。

「本田君。」
「一宇。」
「本田さん。」

みんなが俺を見て、駆け寄ってくる。なんとあの赤目まで、、、。
「なんだよ、本田。もう復帰するのか。」
「赤目様ったらそんなこと言って、寂しがってたくせに。」
常盤さんにそんなことを言われて、赤目が顔を赤くしてみんなの輪から離れて行った。
俺は自分の居場所に戻った心地よさを感じた。

休んでいた間のお詫びをしてお土産をいつもの場所に置くと、俺は半沢主任の部屋に向かった。

「おお、本田君。身体の方は大丈夫か？」

「お陰様ですっかり元気です。医者からもお墨付きをもらいました。実は、お願いがあります。俺をここに復帰させてください。」

「休みは、あと3日も残っているだろう。もう少しゆっくりしたらどうだ。」

「身体がなまってしまって、お願いします。」
俺は主任に頭を下げる。

「実は、さっき、宗助さんから連絡が来てね。君が戻って復帰したいと言ったらすぐに復帰させてくれってね。」

（宗助所長、、、。俺パッチ貼ってたんだけどな？）

「それで、、。俺は、、。」

「いいだろう。明日から現場復帰を認める。」

「ありがとうございます。」

「君がいないと、刑部君も調子が出ないと言うか、、、。あ、刑部君に言っちゃ駄目ですよ。絶対、反論するでしょうから。ははははは。君が戻ってくれて私も嬉しいですよ。お帰りなさい。本田君。」

「俺も、ここに戻れて本当にうれしいです。ただいまです、半沢主任。」

俺は、なぜか涙が出そうになって、笑顔でごまかした。

「主任に何の用事だったの？」
自分の席に戻るとすぐアヤメが聞いてきた。

「明日から復帰させてくれって言ったんだよ。」

「ああ、そう。」
アヤメは気のない返事をする。

「それと、今日、アヤメに話があるから一緒に帰ろう。」

「別にいいけど。ここまで何できたの？」

「あ、レンタカーだった。明日から復帰だったら帰してこないとな。あと、アパートにも戻らないと。明日の昼は忙しくなりそうだ、、、。」

「それなら、話は今日じゃなくってもいいじゃない。明日でも、、。」

「いや、今日話したいんだ。」
俺は、言いながら無意識にアヤメの手を握る。

「あああ、一宇。何しに来たのかと思ったらアヤメとイチャイチャしてるぅ。」
それを、目ざといノエルが大声で指摘する。

「なにぃ。本田！許さんぞ。アヤメっちの手を離せ！」
赤目が、アヤメの席まで飛んできて、俺たちの手を振りほどく。
いつもの日常だ、、、。

「ふーん。わかったわ。一宇がそこまで言うなら今夜話しましょ。私、お休みがたまっているから、今から早退する。」
言うが早いか、アヤメが事務所を出て行く。たぶん半沢主任のところへ行ったのだろう。
戻った、アヤメは帰り支度を始めた。

「アヤメっち、ええ。どうしたの？？もう帰るの？」

「アヤメと一宇。これからデートに行くんだよ。ノエルこういう事には勘が働くんだからぁ。」

周りの喧騒を受け流して、アヤメはスタスタと事務所を出て行く。
赤目が後ろで何か叫んでいたが、俺は、「明日から復帰します。」と言い残してアヤメの後を追った。