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原点回帰 ③
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俺は宗助所長と別れた足で、刑部家へ向かう。この時間帯なら、アヤメは仕事だから高梨さん一人だろう。
刑部家のインターフォンを押すと、すぐに応答があり高梨さんが中に入れてくれた。
「一宇様、お身体の方は、もう大丈夫なんですか?」
いつもの優しい高梨さんだった、この人は、初めて会った時から変わらない。
「もう、すっかり元通りなんです。俺が長々と眠っていた原因も分かりました。」
「それは良かった。コーヒーでもお飲みになりますか?」
「是非、お願いします。実は、50年前から飲みたかったんです。」
「50年前から?」
俺は、眠っていた間に、過去に起こったことを見ていたことと、じいさんがここで高梨さんのコーヒーを飲んで、俺がそれを見て高梨さんのコーヒーをどれだけ懐かしく思ったことを話す。
「ほほほほ、そんなことがあったんですか、それで、50年前からと。」
高梨さんは手回しの豆を挽く機械でコーヒー豆を挽きながら
「その時の事は、よく覚えておりますよ。」
と言った。
「そうでしたか、あの時の青年が、一宇様のおじい様でしたか、、。その青年は、大変緊張してらして、それでコーヒーを勧めたんですよ。と、言うことは一宇様は杜人家の血筋でいらっしゃるんですか?」
「そうみたいです。」
「一宇様の中にもヴァンパイアの血が流れていたとは、しかも守人の。縁と言うのは不思議なものですね。」
「俺も、聞かされるまで全く知りませんでした。だって、俺。太陽も平気だし、高梨さんのごはんはもりもり食うし。ヴァンパイアらしさって言うんですか全くないですよね。」
「そうでございますね。まぁ、食事を美味しく召し上がっていただけるのは私にとっては嬉しい事ですけど。」
「一宇様。今日は私に何かお話があっていらしたんでしょ?」
「実はそうなんです。今回、俺自身のルーツについて色々分かって、で、それをアヤメにどう話したらいいのか、高梨さんに相談しようと思って、、。」
「それで、アヤメ様のお仕事の時間帯にわざわざ来られたんですね。」
「アヤメには、全て話すつもりです。ただ、俺自身が混乱しちゃって、、、。俺、アヤメの眷属を続けたいんです。当分、ゲートは問題ないだろうって、宗助所長は言ってましたが。いつ俺が、守人の任に就くことになって、アヤメと一緒に働くことが出来なくなって、、。俺、それが怖いんです。」
俺の話を静かに聞いていた高梨さんは、しばらく考え込んでから口を開いた。
「そうでしたか、私が思うに、アヤメ様なら。隠し事をせず、事実をありのままに伝えるのが一番良いと思いますよ。アヤメ様は強い心をお持ちです。アヤメ様が刑部の当主になって10年です。その間、私はアヤメ様の弱音を聞いたことがありません。それは、アヤメ様に悩みがなかったわけではありません。むしろ沢山悩んでそれを自分の中で解決されてきたのでしょう。」
「アヤメが悩む、、。」
「むしろ一宇様には、アヤメ様という、相談相手がいてよかったじゃないですか。刑部の当主として悩んで苦しんだアヤメ様なら、一宇様のお悩みの解決に一肌脱いでくださいますよ。」
俺は胸にのみ込んだ重たい石が少しずつ溶けて行くような気がした。俺はカップの底に残ったコーヒーを一気に飲み干す。
「高梨さん、ありがとうございます。やっぱり高梨さんに相談して良かった。コーヒーも美味しかったです。俺行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ。二人でお戻りになるのをお待ちしておりますよ。」
居ても立っても居られない気持ちで俺は電気自動車に乗り込み、自動運転をセットする。
「行先:ヴァンパイアポリス」
車は静かに走り出した。
刑部家のインターフォンを押すと、すぐに応答があり高梨さんが中に入れてくれた。
「一宇様、お身体の方は、もう大丈夫なんですか?」
いつもの優しい高梨さんだった、この人は、初めて会った時から変わらない。
「もう、すっかり元通りなんです。俺が長々と眠っていた原因も分かりました。」
「それは良かった。コーヒーでもお飲みになりますか?」
「是非、お願いします。実は、50年前から飲みたかったんです。」
「50年前から?」
俺は、眠っていた間に、過去に起こったことを見ていたことと、じいさんがここで高梨さんのコーヒーを飲んで、俺がそれを見て高梨さんのコーヒーをどれだけ懐かしく思ったことを話す。
「ほほほほ、そんなことがあったんですか、それで、50年前からと。」
高梨さんは手回しの豆を挽く機械でコーヒー豆を挽きながら
「その時の事は、よく覚えておりますよ。」
と言った。
「そうでしたか、あの時の青年が、一宇様のおじい様でしたか、、。その青年は、大変緊張してらして、それでコーヒーを勧めたんですよ。と、言うことは一宇様は杜人家の血筋でいらっしゃるんですか?」
「そうみたいです。」
「一宇様の中にもヴァンパイアの血が流れていたとは、しかも守人の。縁と言うのは不思議なものですね。」
「俺も、聞かされるまで全く知りませんでした。だって、俺。太陽も平気だし、高梨さんのごはんはもりもり食うし。ヴァンパイアらしさって言うんですか全くないですよね。」
「そうでございますね。まぁ、食事を美味しく召し上がっていただけるのは私にとっては嬉しい事ですけど。」
「一宇様。今日は私に何かお話があっていらしたんでしょ?」
「実はそうなんです。今回、俺自身のルーツについて色々分かって、で、それをアヤメにどう話したらいいのか、高梨さんに相談しようと思って、、。」
「それで、アヤメ様のお仕事の時間帯にわざわざ来られたんですね。」
「アヤメには、全て話すつもりです。ただ、俺自身が混乱しちゃって、、、。俺、アヤメの眷属を続けたいんです。当分、ゲートは問題ないだろうって、宗助所長は言ってましたが。いつ俺が、守人の任に就くことになって、アヤメと一緒に働くことが出来なくなって、、。俺、それが怖いんです。」
俺の話を静かに聞いていた高梨さんは、しばらく考え込んでから口を開いた。
「そうでしたか、私が思うに、アヤメ様なら。隠し事をせず、事実をありのままに伝えるのが一番良いと思いますよ。アヤメ様は強い心をお持ちです。アヤメ様が刑部の当主になって10年です。その間、私はアヤメ様の弱音を聞いたことがありません。それは、アヤメ様に悩みがなかったわけではありません。むしろ沢山悩んでそれを自分の中で解決されてきたのでしょう。」
「アヤメが悩む、、。」
「むしろ一宇様には、アヤメ様という、相談相手がいてよかったじゃないですか。刑部の当主として悩んで苦しんだアヤメ様なら、一宇様のお悩みの解決に一肌脱いでくださいますよ。」
俺は胸にのみ込んだ重たい石が少しずつ溶けて行くような気がした。俺はカップの底に残ったコーヒーを一気に飲み干す。
「高梨さん、ありがとうございます。やっぱり高梨さんに相談して良かった。コーヒーも美味しかったです。俺行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ。二人でお戻りになるのをお待ちしておりますよ。」
居ても立っても居られない気持ちで俺は電気自動車に乗り込み、自動運転をセットする。
「行先:ヴァンパイアポリス」
車は静かに走り出した。
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