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原点回帰 ②
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TIMEの店内は、時間帯なのか客がちらほらといるだけで話し合いにはちょうど良い感じだった、宗助所長と俺は、角の4人掛けの席に座る。
店員にコーヒーを2つ注文する。コーヒーが運ばれてくるまで二人とも無言だった。宗助所長は、ただ微笑んで俺を見ている。その無言の状態に俺が耐え切れなくなったころ、彼が唐突に口を開いた、
「一宇君は、ほんと安芸さんにそっくりですね。」
このいきなりの切り口、やっぱり宗助所長にはかなわない。
「宗助所長はいったい何者なんですか?」
「アタシですか。アタシ自身は、スマイル眷属紹介所の所長が本業なんですけどね。生まれの関係で東エリアに住むヴァンパイア族の統括なんかをやらされてます。」
「統括ってなんですか?」
「まぁ、簡単に言うと御まとめ役ってことですよ。」
「それって、偉い人なんですか?」
「実際に偉いのは、一宇君も会ったでしょ。顔に布を掛けたお年寄り連中に。」
「ああ、杜人家で会いました、」
「彼らは賢人衆といって、重要な決め事は彼らの判断でほぼ決まるんですよ。アタシはお飾りみたいなもんですから。」
「宗助所長は、いつから俺を監視、、じゃなくって見守っていたんですか?」
「君が生まれた時からですよ、だって君のその両肩にはヴァンパイア族の全ての運命がかかっているんですからねぇ。守人の仕事については賢人衆から聞いたんでしょ?」
「聞きました、、。それに、、。」
「過去で見たんですね。」
「知ってたんですか?俺が過去を見てきたこと。」
「確信はなかったんですがね、一宇君が守人石を手にした後、睡眠状態になったって聞いたので、もしやって思ってたんですよ。それで何を見たんですか?」
俺は過去で見たことを、所長にかいつまんで話す。
「宗助さんは、祖母をご存じだったんですね?」
「知ってるも何も、安芸さんはアタシの初恋の人でしたからねぇ。」
「は、初恋の人?」
「私の家、秦の本家ですが、杜人家の近所にあるんですよ。と言っても5kmくらい離れてますがね、あなたのおばあさんの安芸さんは、お転婆でね、杜人家を脱走してはうちまで遊びに来ていたんですよ。私と平助はまだほんの子供でしたが、野生児のような安芸さんによく遊んでもらいました。アタシも平助も将来、安芸さんをお嫁さんにするのは自分だって言ってケンカになったもんですよ。結局は、一宇君のおじいさんにさらわれてしまいましたがね。」
「ははは、、。すいません。」
「謝らなくっていいんですよ、甘い恋の思い出なんですから、」
「あの、宗助所長は、俺が守人の仕事を継ぐかもしれないってことは知っていたんですよね?」
「もちろんですよ。それで、一宇君を見守ってたわけですから。」
「ならどうして、俺をアヤメの眷属にしたんですか?2万円の給料につられてスマ眷に行ったのは俺なんですけど、止めることは出来ましたよね、それに、守人の仕事とアヤメの眷属は兼任できるんですか?」
「あの時は驚きましたよ。だって一宇君が突然、スマ眷に現われたんですから。」
「じゃ、あれはやっぱり、偶然だったんですね。」
「当り前ですよ、ヴァンパイアの能力で、一宇君の思考を操作したとでも?それは無理ってもんですよ。」
「じゃ、なんで俺を刑部家の眷属に?アヤメは、俺が行くまで何人もの眷属候補を断ってたたんですよね。俺が断られると思ってたんですか?」
「ブーー。それもハズレです。一宇君、ヴァンパイアが眷属を決める時にどうやって決めるか知っていますか?」
「知りません。」
「ヴァンパイア特有の一種の勘って言うんですかね、そんなところで決めているとアタシは思うんですよ。あなたの周りのヴァンパイアと眷属の関係を考えてもらえばわかると思うんですけどね、その二人の間に絆のようなものを感じる事はありませんか?」
俺は自分の周囲のヴァンパイアと眷属を思い浮かべる。あるかもしれない。杉山さんと灰野も、ノエルと稲葉も。それに安芸と里美も、、。
「ね、そうでしょ。」
俺はその問いにうなずく。
「アタシが一宇君を止めなかったのは、理由が二つあるんですよ。一つ目は、一宇君が初めてスマ眷に来た時に言った通り、そう言う感が働いたってこと。アヤメと君はうまくいくってね。あれは嘘じゃなくって、アタシはそう言う感が働くんですよ。でも、止めなかった理由として重要だったのは、アヤメと一宇君を会わせたかったってことですね。」
「会わせたかった?ってどういうことですか?」
「それは、一宇君は自分がヴァンパイアの血を持って生まれたことを知らなかったから、まぁ、眷属紹介所に来たくらいですから、ヴァンパイアに対して悪い感情を持っていないくらいは察しがつきます。でも、スマ眷に来た当時の一宇君は、真っ白なキャンバスみたいなもんです。いやなヴァンパイアに出会っていたら、ヴァンパイアの事が嫌いになってしまう。逆に良いヴァンパイアとの交流があればその逆です。その、君のキャンバスを染めるのにアヤメはうってつけだと思ったもんでね。あの子はちょっと生意気なところがありますが、性格は真っすぐで、良い子ですからねぇ。どうです一宇君。君は今ヴァンパイアに対して嫌な感情がありますか?」
「ない、、です。」
「あなたが、真実を知る前にヴァンパイア教育をするのにも丁度よかったのでね。」
俺は、宗助所長の掌の上でくるくると踊っていたことに今さらながら気が付いた。
「悪く思わないでくださいよ。一宇君。アタシは君の事が大好きなんですから、なんたって初恋の安芸さんのお孫さんなんですからねぇ。」
そういって、いつもの魅惑的な笑顔でほほ笑む。やっぱりこの人は曲者だ。でも、やっぱり憎めない愛すべき人だ。
店員にコーヒーを2つ注文する。コーヒーが運ばれてくるまで二人とも無言だった。宗助所長は、ただ微笑んで俺を見ている。その無言の状態に俺が耐え切れなくなったころ、彼が唐突に口を開いた、
「一宇君は、ほんと安芸さんにそっくりですね。」
このいきなりの切り口、やっぱり宗助所長にはかなわない。
「宗助所長はいったい何者なんですか?」
「アタシですか。アタシ自身は、スマイル眷属紹介所の所長が本業なんですけどね。生まれの関係で東エリアに住むヴァンパイア族の統括なんかをやらされてます。」
「統括ってなんですか?」
「まぁ、簡単に言うと御まとめ役ってことですよ。」
「それって、偉い人なんですか?」
「実際に偉いのは、一宇君も会ったでしょ。顔に布を掛けたお年寄り連中に。」
「ああ、杜人家で会いました、」
「彼らは賢人衆といって、重要な決め事は彼らの判断でほぼ決まるんですよ。アタシはお飾りみたいなもんですから。」
「宗助所長は、いつから俺を監視、、じゃなくって見守っていたんですか?」
「君が生まれた時からですよ、だって君のその両肩にはヴァンパイア族の全ての運命がかかっているんですからねぇ。守人の仕事については賢人衆から聞いたんでしょ?」
「聞きました、、。それに、、。」
「過去で見たんですね。」
「知ってたんですか?俺が過去を見てきたこと。」
「確信はなかったんですがね、一宇君が守人石を手にした後、睡眠状態になったって聞いたので、もしやって思ってたんですよ。それで何を見たんですか?」
俺は過去で見たことを、所長にかいつまんで話す。
「宗助さんは、祖母をご存じだったんですね?」
「知ってるも何も、安芸さんはアタシの初恋の人でしたからねぇ。」
「は、初恋の人?」
「私の家、秦の本家ですが、杜人家の近所にあるんですよ。と言っても5kmくらい離れてますがね、あなたのおばあさんの安芸さんは、お転婆でね、杜人家を脱走してはうちまで遊びに来ていたんですよ。私と平助はまだほんの子供でしたが、野生児のような安芸さんによく遊んでもらいました。アタシも平助も将来、安芸さんをお嫁さんにするのは自分だって言ってケンカになったもんですよ。結局は、一宇君のおじいさんにさらわれてしまいましたがね。」
「ははは、、。すいません。」
「謝らなくっていいんですよ、甘い恋の思い出なんですから、」
「あの、宗助所長は、俺が守人の仕事を継ぐかもしれないってことは知っていたんですよね?」
「もちろんですよ。それで、一宇君を見守ってたわけですから。」
「ならどうして、俺をアヤメの眷属にしたんですか?2万円の給料につられてスマ眷に行ったのは俺なんですけど、止めることは出来ましたよね、それに、守人の仕事とアヤメの眷属は兼任できるんですか?」
「あの時は驚きましたよ。だって一宇君が突然、スマ眷に現われたんですから。」
「じゃ、あれはやっぱり、偶然だったんですね。」
「当り前ですよ、ヴァンパイアの能力で、一宇君の思考を操作したとでも?それは無理ってもんですよ。」
「じゃ、なんで俺を刑部家の眷属に?アヤメは、俺が行くまで何人もの眷属候補を断ってたたんですよね。俺が断られると思ってたんですか?」
「ブーー。それもハズレです。一宇君、ヴァンパイアが眷属を決める時にどうやって決めるか知っていますか?」
「知りません。」
「ヴァンパイア特有の一種の勘って言うんですかね、そんなところで決めているとアタシは思うんですよ。あなたの周りのヴァンパイアと眷属の関係を考えてもらえばわかると思うんですけどね、その二人の間に絆のようなものを感じる事はありませんか?」
俺は自分の周囲のヴァンパイアと眷属を思い浮かべる。あるかもしれない。杉山さんと灰野も、ノエルと稲葉も。それに安芸と里美も、、。
「ね、そうでしょ。」
俺はその問いにうなずく。
「アタシが一宇君を止めなかったのは、理由が二つあるんですよ。一つ目は、一宇君が初めてスマ眷に来た時に言った通り、そう言う感が働いたってこと。アヤメと君はうまくいくってね。あれは嘘じゃなくって、アタシはそう言う感が働くんですよ。でも、止めなかった理由として重要だったのは、アヤメと一宇君を会わせたかったってことですね。」
「会わせたかった?ってどういうことですか?」
「それは、一宇君は自分がヴァンパイアの血を持って生まれたことを知らなかったから、まぁ、眷属紹介所に来たくらいですから、ヴァンパイアに対して悪い感情を持っていないくらいは察しがつきます。でも、スマ眷に来た当時の一宇君は、真っ白なキャンバスみたいなもんです。いやなヴァンパイアに出会っていたら、ヴァンパイアの事が嫌いになってしまう。逆に良いヴァンパイアとの交流があればその逆です。その、君のキャンバスを染めるのにアヤメはうってつけだと思ったもんでね。あの子はちょっと生意気なところがありますが、性格は真っすぐで、良い子ですからねぇ。どうです一宇君。君は今ヴァンパイアに対して嫌な感情がありますか?」
「ない、、です。」
「あなたが、真実を知る前にヴァンパイア教育をするのにも丁度よかったのでね。」
俺は、宗助所長の掌の上でくるくると踊っていたことに今さらながら気が付いた。
「悪く思わないでくださいよ。一宇君。アタシは君の事が大好きなんですから、なんたって初恋の安芸さんのお孫さんなんですからねぇ。」
そういって、いつもの魅惑的な笑顔でほほ笑む。やっぱりこの人は曲者だ。でも、やっぱり憎めない愛すべき人だ。
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