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敵の次の一手 ②
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洞窟前のテントで生活を始めて4日が過ぎた、、、。日に3度、洞窟に入って中を点検しているが、あの日以来洞窟内に変化はない。
俺は、大きい方のトイレと、烏の行水状態で風呂に入る以外は、ほぼこの中で過ごしていた。
洞窟の入り口に真っすぐテントの入り口を向けているため、洞窟に誰かが近づけばすぐに気が付くようになっている。
昨日から、テントの中にポータブルタイプのテレビとラジオ。パソコン、それと折り畳み式のベッドがやって来た。テントでの生活は格段に向上したが、それでもいつまでこの生活が続くのか考えると、憂鬱になる。
日が暮れると、ゆずがやって来て朝までテントで一緒に過ごす。
俺は毎日来なくていいと言っても、「来たくないときは来ません。」と言いながら、ゆずは毎晩やって来た。
その晩は、ゆず以外の客テントにやってが来た。
「こんばんわぁ。一宇君、すごいところに引っ越したんですね。」
そう言って宗助所長が入って来る。
「宗助所長は、ここに来ても大丈夫なんですか?」
「こう見えてアタシは一般人ですよ。全然大丈夫じゃないんですがね。ちょっと話があったんで一宇君を呼びに来ました。ここを出て話でもしませんか?」
「ええ、でも。もし俺がいない間に、奴が来たら、、。」
「思い詰めたらだめです。今日は奴は来ない!アタシの勘がそう言っていますから。それにこれ以上ここに滞在したら、一般人のアタシはおかしくなっちゃいそうなんでね。あ、ゆずちゃんもご一緒に。ゆずちゃんにも話を聞いていただきます。」
俺たちが、テントの外に出ると白い布で全身を覆った男たちが数人テントのすぐそばに立っている。
ゆずが槍を構える。
「彼らは大丈夫ですよ。」君たちが不在の間ここを見ていてくれる仲間ですから。そう言って宗助所長は俺たちの前をすたすたと歩いて行く。俺たちも宗助所長の後をついて寺に入って行った。
寺の本堂には、ヴァンパイアポリスと眷属隊の全員が集められていた。
宗助所長、それにゆずと俺がその円座に加わると宗助所長がすぐに話し始めた。
「白神剣護が、杜人安芸をこの世に連れ戻すために今回の事件を引き起こした。という仮説は既に皆さんにお話しした通りです。」
宗助所長は、この前、俺に話した内容をすでにここにいる全員にも説明している様だった。
「それで、その後でアタシが白神家や杜人家で古文書などを読んで導き出した答えを皆さんにお話ししようと思って、集まってもらいました。」
「あ、杉山さん。少し長くなるかもしれませんから、正座だと辛いですよ。」
杉山さんが足を崩して座りなおす。
「なぜ、白神家と杜人家の古文書かというと、彼が、まだ白神家の当主になる前の話をしなければいけません。アタシと平助が子どもの頃に白神剣護に東門から助けられた事は以前皆さんにお話しした通りです。その時、彼はこんな事も言っていたんです。あの門は、黄泉の国に繋がっているけど、その先は天国じゃなくって、地獄なんだってね。だから、そこに入っても君たちの犬はいないって。そして、前回お話ししたように、この世にその犬を連れて来ても、ここではその犬は暮せないって話に続くわけです。彼がどこからそんな情報を仕入れたのか、白神がモリアキトの偽名で図書館から借りた本の中にその答えはありませんでした。そうすると、蔵書の多い杜人家か、門に関する蔵書の豊富な白神家のどちらかだと考えたわけです。ご存知の通り、白神家の当主として、剣護は幼い頃から杜人家で暮らしています。歴史好きで読書家の彼がそれらを目にしていないわけはありません。」
「それで、東門が黄泉の国に繋がっていると書かれた本はあったんですか?」
高木班長が訊ねる。
「ありましたよ。でも、アタシは剣護ほど歴史に明るくないし、あんな毛筆でクネクネした文字で書かれた古い本を読むのは本当に大変でしたよ。お陰でこんなに時間がかかってしまって。その本は、作者不詳でいつの時代に書かれたものかもわからないくらい古い本なんですがね。書いてあったのは昔話みたいな奇妙な物語でした。」
「昔ある男が愛する女を誤って殺してしまうんです。男はひどく後悔して、何とか女を生き返らせることは出来ないか、知恵者たちを訪ねて方々を旅をします。そしてある知恵者から黄泉の国に通じる洞窟を教えられるんですが、知恵者は女をこの世に連れて帰るのは不可能だと男を諭すんです。あの世に行ってしまった女は現世に戻って来ることは出来ないって。しかも、殺された女には記憶があるからお前のことを決して許さないだろうってね。諦めろって言われるんですが、男はあきらめられない。なんとか彼女を現世に連れて来てもう一度一緒に暮したいから知恵をお授け下さいって、知恵者に何年も何年も頭を下げ続ける。ある時、根負けした知恵者は、彼女をこの世に連れてくるなら、この世の中を黄泉の国のように亡者だらけにすれば良いと教えてしまう。知恵者はそう言えば男が諦めると思ったんだ。そして彼女の男に殺された記憶をなくする為に無垢な状態の魂の卵で持ち帰ればいいって教えたんだよ。男は、知恵者に何度もお礼を言ってから、知恵者を殺した。世の中を亡者でいっぱいにする為の第一歩としてね。そして国に住んでる人たちを一人残らず殺して、亡者の世界を作り上げた後、黄泉の国へ続く洞窟に向かった。」
「それで?」
みんなが興味津々だった、この話の内容はあまりにも白神の人生とリンクすることが多すぎる。
「おしまい。お話はここで終わっているんですよ。続きがあるのかもしれませんが、どこを探しても見つけることは出来ませんでした。」
「なんとも救いのない嫌な話だ。宗助さんは、その本に書かれている事をを白神が実現しようとしてるって思っているんですか?」
高木班長が信じられないといった表情でつぶやく。
「その通りです。東門を白神が黄泉の国への扉と考えているなら、つじつまが合うとアタシは思うんですけどねぇ。ただ、魂の卵ってのがいくら調べてもアタシにはわからないんですよ。お話の続きに書かれているのかもしれませんねぇ。でも、白神ならその辺の事も調べ上げているような気がします。だって、剣護兄ちゃんは、アタシなんかよりずっと頭がいいんですから。」
「もし、宗家さんの説が正しいなら、白神は次は何をしてくるのかしら。」
アヤメが聞く。
「もちろん。東門を死ぬ気で狙ってくるでしょうね。アタシは引き続き、続きの本があるのか、それと卵について調べてみますよ。今日の夜が明けたら、自衛隊がこの付近一帯に人感センサーをつけてくれるそうです。どれほど役に立つかは分かりませんが、何もないよりいいでしょう。」
「一宇君。今晩、一緒に市内に出てみませんか?ちょっと付き合ってほしいところがあります。」
「でも、本田さんが居なくなったら東門の警備はどうするんですか?」
杉山さんが宗助所長に聞く。
「アタシが持ってきた、あの箱の中に入っている衣装なんですけどね。あれには瘴気の影響を押さえる香が焚き染めてあります。あれを着れば皆さんも、あの洞窟の前で少しの時間なら大丈夫でしょう。時間は、、、。2時間くらいですかねぇ。皆さんには大変申し訳ないのですが、一宇君が出かけている少しの間だけ、交代でゆずちゃんと一緒に洞窟を見張っていてもらえませんか?」
「それは構いませんが。」
杉山さんが即座に返答する。彼女の頭の中では担当割が始まっているのだろう。
「じゃ、決まりです。一宇君。久しぶりに街に繰り出しましょうか。それじゃ、またお迎えに上がりますよ。」
宗助所長はそう言って本堂を出て行った。
俺は、大きい方のトイレと、烏の行水状態で風呂に入る以外は、ほぼこの中で過ごしていた。
洞窟の入り口に真っすぐテントの入り口を向けているため、洞窟に誰かが近づけばすぐに気が付くようになっている。
昨日から、テントの中にポータブルタイプのテレビとラジオ。パソコン、それと折り畳み式のベッドがやって来た。テントでの生活は格段に向上したが、それでもいつまでこの生活が続くのか考えると、憂鬱になる。
日が暮れると、ゆずがやって来て朝までテントで一緒に過ごす。
俺は毎日来なくていいと言っても、「来たくないときは来ません。」と言いながら、ゆずは毎晩やって来た。
その晩は、ゆず以外の客テントにやってが来た。
「こんばんわぁ。一宇君、すごいところに引っ越したんですね。」
そう言って宗助所長が入って来る。
「宗助所長は、ここに来ても大丈夫なんですか?」
「こう見えてアタシは一般人ですよ。全然大丈夫じゃないんですがね。ちょっと話があったんで一宇君を呼びに来ました。ここを出て話でもしませんか?」
「ええ、でも。もし俺がいない間に、奴が来たら、、。」
「思い詰めたらだめです。今日は奴は来ない!アタシの勘がそう言っていますから。それにこれ以上ここに滞在したら、一般人のアタシはおかしくなっちゃいそうなんでね。あ、ゆずちゃんもご一緒に。ゆずちゃんにも話を聞いていただきます。」
俺たちが、テントの外に出ると白い布で全身を覆った男たちが数人テントのすぐそばに立っている。
ゆずが槍を構える。
「彼らは大丈夫ですよ。」君たちが不在の間ここを見ていてくれる仲間ですから。そう言って宗助所長は俺たちの前をすたすたと歩いて行く。俺たちも宗助所長の後をついて寺に入って行った。
寺の本堂には、ヴァンパイアポリスと眷属隊の全員が集められていた。
宗助所長、それにゆずと俺がその円座に加わると宗助所長がすぐに話し始めた。
「白神剣護が、杜人安芸をこの世に連れ戻すために今回の事件を引き起こした。という仮説は既に皆さんにお話しした通りです。」
宗助所長は、この前、俺に話した内容をすでにここにいる全員にも説明している様だった。
「それで、その後でアタシが白神家や杜人家で古文書などを読んで導き出した答えを皆さんにお話ししようと思って、集まってもらいました。」
「あ、杉山さん。少し長くなるかもしれませんから、正座だと辛いですよ。」
杉山さんが足を崩して座りなおす。
「なぜ、白神家と杜人家の古文書かというと、彼が、まだ白神家の当主になる前の話をしなければいけません。アタシと平助が子どもの頃に白神剣護に東門から助けられた事は以前皆さんにお話しした通りです。その時、彼はこんな事も言っていたんです。あの門は、黄泉の国に繋がっているけど、その先は天国じゃなくって、地獄なんだってね。だから、そこに入っても君たちの犬はいないって。そして、前回お話ししたように、この世にその犬を連れて来ても、ここではその犬は暮せないって話に続くわけです。彼がどこからそんな情報を仕入れたのか、白神がモリアキトの偽名で図書館から借りた本の中にその答えはありませんでした。そうすると、蔵書の多い杜人家か、門に関する蔵書の豊富な白神家のどちらかだと考えたわけです。ご存知の通り、白神家の当主として、剣護は幼い頃から杜人家で暮らしています。歴史好きで読書家の彼がそれらを目にしていないわけはありません。」
「それで、東門が黄泉の国に繋がっていると書かれた本はあったんですか?」
高木班長が訊ねる。
「ありましたよ。でも、アタシは剣護ほど歴史に明るくないし、あんな毛筆でクネクネした文字で書かれた古い本を読むのは本当に大変でしたよ。お陰でこんなに時間がかかってしまって。その本は、作者不詳でいつの時代に書かれたものかもわからないくらい古い本なんですがね。書いてあったのは昔話みたいな奇妙な物語でした。」
「昔ある男が愛する女を誤って殺してしまうんです。男はひどく後悔して、何とか女を生き返らせることは出来ないか、知恵者たちを訪ねて方々を旅をします。そしてある知恵者から黄泉の国に通じる洞窟を教えられるんですが、知恵者は女をこの世に連れて帰るのは不可能だと男を諭すんです。あの世に行ってしまった女は現世に戻って来ることは出来ないって。しかも、殺された女には記憶があるからお前のことを決して許さないだろうってね。諦めろって言われるんですが、男はあきらめられない。なんとか彼女を現世に連れて来てもう一度一緒に暮したいから知恵をお授け下さいって、知恵者に何年も何年も頭を下げ続ける。ある時、根負けした知恵者は、彼女をこの世に連れてくるなら、この世の中を黄泉の国のように亡者だらけにすれば良いと教えてしまう。知恵者はそう言えば男が諦めると思ったんだ。そして彼女の男に殺された記憶をなくする為に無垢な状態の魂の卵で持ち帰ればいいって教えたんだよ。男は、知恵者に何度もお礼を言ってから、知恵者を殺した。世の中を亡者でいっぱいにする為の第一歩としてね。そして国に住んでる人たちを一人残らず殺して、亡者の世界を作り上げた後、黄泉の国へ続く洞窟に向かった。」
「それで?」
みんなが興味津々だった、この話の内容はあまりにも白神の人生とリンクすることが多すぎる。
「おしまい。お話はここで終わっているんですよ。続きがあるのかもしれませんが、どこを探しても見つけることは出来ませんでした。」
「なんとも救いのない嫌な話だ。宗助さんは、その本に書かれている事をを白神が実現しようとしてるって思っているんですか?」
高木班長が信じられないといった表情でつぶやく。
「その通りです。東門を白神が黄泉の国への扉と考えているなら、つじつまが合うとアタシは思うんですけどねぇ。ただ、魂の卵ってのがいくら調べてもアタシにはわからないんですよ。お話の続きに書かれているのかもしれませんねぇ。でも、白神ならその辺の事も調べ上げているような気がします。だって、剣護兄ちゃんは、アタシなんかよりずっと頭がいいんですから。」
「もし、宗家さんの説が正しいなら、白神は次は何をしてくるのかしら。」
アヤメが聞く。
「もちろん。東門を死ぬ気で狙ってくるでしょうね。アタシは引き続き、続きの本があるのか、それと卵について調べてみますよ。今日の夜が明けたら、自衛隊がこの付近一帯に人感センサーをつけてくれるそうです。どれほど役に立つかは分かりませんが、何もないよりいいでしょう。」
「一宇君。今晩、一緒に市内に出てみませんか?ちょっと付き合ってほしいところがあります。」
「でも、本田さんが居なくなったら東門の警備はどうするんですか?」
杉山さんが宗助所長に聞く。
「アタシが持ってきた、あの箱の中に入っている衣装なんですけどね。あれには瘴気の影響を押さえる香が焚き染めてあります。あれを着れば皆さんも、あの洞窟の前で少しの時間なら大丈夫でしょう。時間は、、、。2時間くらいですかねぇ。皆さんには大変申し訳ないのですが、一宇君が出かけている少しの間だけ、交代でゆずちゃんと一緒に洞窟を見張っていてもらえませんか?」
「それは構いませんが。」
杉山さんが即座に返答する。彼女の頭の中では担当割が始まっているのだろう。
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