勇者の弟が魔王の配下に恋をした

しょうこ

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出会い2

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 予定よりも少し遅い帰宅になってしまいノアはイーサンに何か言われるかなと心配したが、特に小言もなく「初めてだったしね」と無事に戻り、目的のブルーベリーを摘んできたノアを褒めてくれた。
「問題はなかった?」
 イーサンに問われノアは一瞬口をつぐんだ。迷子になっていたことを言えばきっとイーサンに心配させてしまうだろうし、やっぱりノアにはまだ一人は無理なのだと思われるのは嫌だった。
「ノア?」
「ううん、大丈夫っ! ちゃんととってこれただろ?」
 イーサンの反応を窺えば、イーサンは少しだけ考えるように顎に指を添えてから「……うん、そだね」とノアの肩を軽く叩いた。
「だから安心してっ」
 ノアはにっこりと笑うがイーサンはまだどこか不安そうにするも笑みを返した。
「そうだね、ノアももう一人前だしね」
 一人前、その言葉にノアは頷いて「母さんに渡してくるね」と家の中へと入って行った。
「ただいまー」
「おかえり、大丈夫だった?」
 ぱたぱたと足音を鳴らしながらノアの母が家の奥から顔を覗かせる。
「うんっ、ほら見て」
 ノアが手元の籠を母に渡すと、母は「すごいわね、危ないことはなかった?」と籠の中とノアを交互に確認をしてから「ありがとう」と、ノアの頭を撫でた。
「一人で行かせるなんて心配したけど、無事に帰ってきてよかったわ」
「次もボク一人で行くよ」
「あら、いいの?」
「うんっ、イーサンに頼ってばかりいられないからね」
「……そうね」
 母は少しだけ寂しそうに微笑んでから「さあ、朝ごはんにしましょう」とノアに手を洗ってくるように促した。
 朝食を終えて部屋に戻ると先に食事を終えたイーサンが荷造りをしていた。ノアの家は広くはない。穀物の栽培を生業としている両親とノアとイーサンの四人暮らしで、部屋は小さな頃からイーサンと一緒だった。だけどもあと数日でこの部屋はノア一人になる予定だ。
「手伝えることある?」
「大丈夫だよ」
 イーサンはノアに背を向けたまま自分に与えられた机を片付けながら必要なものを鞄へと詰め込んでいる。
 ノアたちの暮らすこの世界は大きく四つの国で成り立っている。その内の一つであるティエラ国にノアたちの暮らす村がある。それぞれの国にはそれぞれの根本となる力が存在しているといわれ、その力を操れる者が少なからず存在し、タレント持ちと呼ばれている。そのような者は王都に招かれ国のために従事することが一般的で、イーサンもその内の一人だった。
「……淋しいな……って言ったら困る?」
「困らないよ。オレも淋しいし、少しだけ心配」
「心配はいらないよ」
「そう?」
「うん、大丈夫だから」
「そう」
「手紙書いてもいい?」
「勿論、オレも書くよ」
「おやすみの日は帰ってくる?」
「んー……生活に慣れてからにはなるかなぁ」
「……」
 改めて言葉にするとあと数日で離ればなれになるのだと実感が沸いてきて、イーサンの背中が遠く感じてしまう。
「ノア?」
「あ、ごめんっ」
 何も言わないノアに心配そうに振り向かれ、慌てて「王都の生活に慣れたらだよね」と笑みを浮かべて誤魔化す。王都に招かれるなんて誇らしいことだ。
「ほら、これが終わったら父さんの手伝いに行こう」
「うん」
「そのあとはからだを動かすの付き合って」
「うん」
 イーサンはとても身軽で身体能力も高い。付き合ってなんて言うが実際は逆でノアに身体の使い方を教えるといった方が正しい。こんなご時世だ、最低限自分の身は自分で守れなければと、イーサンはノアに小さな身体の生かした体術を叩き込んでいた。
「よし、いいよ」
 ノアは準備は大丈夫? と問われ特にすることはないノアも大丈夫と返事をして父が待つ畑へと駆け出した。
 畑の手伝いにイーサンとの手合わせをすれば辺りはあっという間に暗くなり一日の終わりを告げる。家族四人で食事をしてそれぞれ湯浴みをすれば夜はすぐそこだ。イーサンと二人で両親におやすみと告げて部屋へと戻る。
「明日はどうするの?」
「明日はほどけない縄の結び方を教えてあげる」
「ほんとっ?」
「ノアに嘘なんて吐かないよ」
「ナイフの使い方は?」
「んー……結び方をマスターしてから、かな?」
「それじゃあずっと先じゃん」
「あれ、明日でマスターは無理?」
「結び方何通りもあるの知ってるんだからね」
「はは、じゃあオレが帰ってくる時まで時間はあるから沢山練習しとくんだよ」
「はぁい」
「ほら、そろそろオレたちも寝るよ」
 明かりを消して寝床へと足を進めるイーサンの洋服の裾をノアは掴む。
「なに?」
「あ、あのさ……」
 明かりの消えた部屋はイーサンの気配はあれども輪郭がぼやける。改めて離ればなれになってしまう淋しさに「一緒に寝てもいい……?」と、幼かった頃のようなおねだりをして恥ずかしくないと言えば嘘になる。だけども少しでも一緒に居たくて子供じみているなと頬は赤くなるが幸い辺りは暗くて見えない。
「ノアが子供の頃に戻ったみたいだ」
 ぐりぐりと頭を撫でながら「一緒に寝ようか」と、イーサンの寝床へと横になる。小さい頃はあまり変わらなかった身長も気づけば頭一つ分以上差がでてしまった。
「なに?」
 ノアの視線に気づいたイーサンが笑う。
「……なんでもない」
「そう?」
 ほら寝るよともう一度頭をぐりぐりと撫でてイーサンは瞳を閉じたので、ノアも瞼を落としながらふと今朝出会ったイーサンとは違う、ふわりと優しく頭を撫でるディランを思い出しながら眠りについた。
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