短い恋のお話

愛理

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「君がまた恋をさせてくれたから」

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    もう2度と恋はできないと思っていた。
 だけど、そんな俺に君はまた恋をさせてくれた。

 仕事が休みの日曜日の午後1時に俺は彼女の優花(ゆうか)と2人で俺が1人暮らしをしているマンションの近くにある小さな公園に散歩するついでに来た。
 日曜日はいつもこの公園の近くに住んでいる子供達が何人か来ているのに今日は珍しく誰もいなかった。
 だから、俺は思わず優花を後ろからぎゅっと抱きしめた。
 俺の身長は普通の方だと思うし優花も普通の方だと思うけど俺からしたら優花はすぽっと包み込めるサイズだった。
「どうしたの? 樹人(みきと)くん」
 優花はそう言いながら俺の手に自分の手を重ねる。
 優花は俺の2つ年下で、2年前、俺が25歳の時に友達のつきあいでしょうがなく行った飲み会で知り合った。
 実は俺は前に辛い恋をしたから、もう当分というか、ずっと恋なんてしたくないと思っていた。
 でも、優花に出会って、話してみると何だか凄く優しい気持ちになって。
 そして、気づいたら、飲み会の帰りに優花に自分から連絡先を聞いたりしていた。
 あんなにもう特定の女性と仲良くなんてなりたくないと思っていたのに。
 だけど、優花にあの時、連絡先を聞き、その後、電話をして会うことができて良かったと今は本当に心から思っている。
 優花は名前の字のように本当に優しい花みたいな女性だから。
 優しい花みたいというのは花の中には見ているだけで本当に優しくなる花があると俺が思っているから、そう表現してしまうんだけど。
 そして、今、俺は前の辛かった恋とはうってかわって、とても穏やかで、だけど、もの凄く幸せを感じる恋をしている。
 もう2度と恋はしたくない、できないと思っていたけど、優花が俺にまた恋をさせてくれた。
 それはとても意外なことで、だけど、とても嬉しい俺にとっての誤算だった。
「何か誰もここにいないし急に抱きしめたくなったんだ。優花への想いが抑えきれなくなったってことかな」
 俺がそう言うと優花は後ろから見ても真っ赤になっているのが解って、でも、とても嬉しそうにしているのも解って、俺は凄く嬉しくなった。
 だから、俺はますます優花を強く抱きしめた。
 そして、
「優花、俺にまた恋をさせてくれてありがとう。そして、できれば優花とは恋を終わらせたくない」
 そう言い俺は後ろから優花の右の頬にキスをした。
 そして、その後は公園のベンチに座り他愛もない話をした後、手を繋いで俺のマンションへと帰っていった。
                                                                     END
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