短い恋のお話

愛理

文字の大きさ
5 / 73

「離さないで」

しおりを挟む
    こんなにも愛したのはあなたが初めて。
 だから、どうか、私を離さないでいてほしい。

 日曜日の朝10時に私は自分の家からの最寄りの駅の改札口の前で恋人の博次を待っていた。
 私と博次はお互いに社会人で同じ歳で25歳で、知り合ったのは1年前、偶然に私と博次に共通の友達がいて、その友達に誘われてバーベキュー大会に行った時だった。
 その時は10人くらい人がいたけど、私と博次はこれもまた偶然に近くにいて、会話が弾んで仲良くなり、それから、2人でちょくちょく遊ぶようになって、知り合って半年後に2人で遊んでいた時に博次が私に好きだから、つきあってほしいと告白してくれて、私達は恋人同士になった。
 お互いに一般企業に勤めているので、土曜日と日曜日がお互いに休みで、恋人同士になってからは毎週、どちらかの曜日には会っていた。
 そして、今日は博次と水族館に行く予定で、待ち合わせがこの場所だから私はここで博次を待っていた。
 大抵はいつも博次が車を出してくれるけど、今日は2人ともたまには電車で行くのもいいよねということになり、電車で行くことになった。
 博次の車を運転する姿を見るのは好きだけど、電車に乗るのも好きな私は今日、電車に乗ることも楽しみだった。

「ごめん、待った?」
 10時を少しだけ過ぎた頃に博次が現れた。
「ううん、さっき来たところだよ」
 私は笑顔で言った。
「ほんと? なら、良かった。それじゃ行こうか」
 博次はそう言い私に手を差し出してきた。
 だから、私はその手を掴んで、私達はしっかりと手を繋いで、駅のホームへと向かった。

 私達が待ち合わせした駅から電車に乗って、約50分くらいの駅の近くに今日、私達が行く水族館があった。
 水族館に着くと日曜日だからか人が多かったけど、博次は電車から降りてすぐに繋いでいた手を更に強く握ってくれて、私はそのことが凄く嬉しかったから、人が多いけど、何だか博次に凄く守られているような感じがして嬉しかった。
 そして、私達はラッコがいる水槽の前で長い間、立ち止まった。
 何故なら、ラッコが手を繋いでぷかぷかと浮かんでいるのが凄く可愛かったから。
 手を繋ぐラッコはテレビでは見たことがあったけど、実際に見るのは初めてだから何だか凄く感動もしていた。
「可愛いなあ。それに凄く仲良しに見える」
 私がそう言うと博次は私の方を見て、そうだねと一言だけど凄い優しい笑顔で言った。
 私はその優しい笑顔を見て、何だか凄く胸がきゅんとした。
 そして、博次と繋いでいた手を離して、博次の腕に両手でぎゅっとしがみついた。
「綾香?」
 急に私がそうしたことを不思議に思ったのか博次はどうした? という感じの顔で私の名前を呼んで、私の方を見た。
「このラッコ達を見てたら、私も何だかもっと博次にくっつきたくなったの」
 私がそう言うと博次はまたさっきの凄く優しい笑顔を私に向けてくれた。
 だから、私はまた凄く胸がきゅんっとなった。
「ね、博次、私ね今まで恋人がいたりもしたけど、こんなに愛してると思ったの博次が初めてなの。だから、お願いだから、私のこと離さないでね。私、多分、もう博次以外にこんなに愛せる人なんていないと思うから」
 私は凄く胸がきゅんっとなった後、そう言った。
 私がそう言った後、博次は一瞬だけ目を見開いた。でも、
「ああ、俺もこんなに愛しいなと思ったのは綾香が初めてだよ。だから、絶対に離さないよ。だから、安心してろよ」
 そう言って私の肩を抱いて、ぐっと自分の方に引き寄せてくれた。
 私は博次に今、言われた言葉と博次が凄く強く私の肩を抱いて、できる限り自分の方に引き寄せてくれたことで、もの凄く幸せを感じていた。
 そして、私達はその後、今まで恋人同士になって2人で過ごした中で1番甘い時間を過ごした。
                                                                                  END
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...