短い恋のお話

愛理

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「永遠の愛を君にあげるから」

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 今まで沢山傷ついてきた君に僕が永遠の愛をあげるよ。
 だから、もう泣かないで。

 仕事が休みの日曜日、僕は恋人のゆあの家に向かっていた。
 僕とゆあは去年、同じ会社に同時期に入って、そこで知り合った。
 ゆあは短大を卒業して、事務職で入ってきて、僕は大学を卒業して、営業職で入った。
 なので、ゆあは今、21歳で僕は23歳で2つの歳の差がある。
 でも、ゆあは今まで過ごしてきた環境があまりにも悪くて、あまり甘えることとかを知らない子だった。
 そして、心から人を信頼しようとも中々しない子だった。
 だけど、僕はそんなゆあを見て、何とかしてやりたいと思った。
 だから、ゆあに沢山声をかけて、ゆあを沢山、遊びに誘った。
 最初は中々誘いに乗らなかったけど、徐々にゆあは僕に慣れてくれて、一緒に遊びに行くようになり、そして、僕はゆあが好きなんだとはっきり気付いた時、すぐに告白した。
 するとゆあは目に涙を溜めて、私でいいの? と言ってくれた。
 そして、私も何だか守くんといると楽しいし、ずっと一緒にいたいって思い始めてて、これが好きだってことなのかなって思ってたのと言ってくれた。
 だから、僕達はめでたく恋人同士になった。
 だけど、ゆあはやっぱりまだ心から甘えるとかそういうことはあまりしてくれなくて。
 僕はもっとゆあの心を溶かしてやりたい。
 最近、強くそう思うようになった。
 ゆあの家まで後少しというところに花屋があり、いつもはあまり気にしないで通り過ぎるけど、今日は何だか凄く目を惹いた花があった。
 ピンク色の可愛い花だった。
 見た目は僕には何だか優しく感じた。
「すいません」
 だから、僕は自然と花屋の前にいて、店員に声をかけた。
「はい、いらっしゃいませ」
 店員の人は優しそうな女性だった。
 多分、僕と歳が変わらないと思う。
「この花はなんていう花なんですか?」
「この花はトルコキキョウっていうお花なんです。花言葉は永遠の愛なんですよ。可愛いですし、素敵な花言葉でもありますよね」
 店員の女性は何処となく嬉しそうな顔でそう言った。
 多分、本当に心から花が好きな人なんだろうな。僕はこの女性を見てそう思った。
「永遠の愛……」
「はい」
 僕が花言葉を言うと店員の女性は更に嬉しそうな顔になった。
「じゃあ、これ、束にしてくれますか? 何本とかはおまかせします」
「ありがとうございます。プレゼントですか?」
「ええ、恋人に贈ろうかと思いまして」
「じゃあ、可愛いくしておきますね」
 そして、店員の女性は花を束ねる包みを凄く可愛いものにしてくれた。
「恋人の方、喜ばれると思いますよ」
「ありがとう」
 そして、僕はその花束を受け取って再びゆあの家へと向かった。

 ゆあはマンションで1人暮らしをしている。
 短大生の頃から1人暮らしをしていたらしい。
 ゆあの今の母親は義理の母親で、小さい頃からその母親に虐待などされていたらしい。
 ゆあの産みの母親はゆあを生んだと同時に亡くなってしまったらしい。
 そして、ゆあの父親はゆあが5歳の時に再婚し、そこから母親の虐待が始まったらしい。 
 ゆあの父親はかなり大きくなるまで仕事仕事ばかりでそのことに気付かなかったらしく、だけど、気付いてからも何も言ってはくれずにゆあの心は更に傷つき、そして、高校生の時に絶対に家を出ると決めていたらしい。
 だから、短大の費用は出してもらったけど、後の費用は自分でバイトで稼いできたらしい。
 そして、また、ゆあは家庭内がそんな環境だったからか、心から信頼できる友達もつくれなかったらしく、会社に入ったばかりの時もあまり周りと打ち解けることもできなかった。
 今はだいぶと周りと打ち解けられるようにはなったとは思うけど。
 そして、僕はゆあのマンションの部屋のドアの前に立ち、チャイムを鳴らした。
「はい?」
「ゆあ、僕だよ」
「あ、守くん?」
「うん」
「待ってね、今、すぐ開けるから」
 そう言いゆあは本当にすぐにドアを開けてくれた。
 そして、僕は中に入りドアをすぐに閉めた。
「ゆあ、これ」
 僕は玄関先でいきなりゆあにさっき買ったトルコキキョウの花束を渡した。
「え?」
「プレゼント」
「お花……珍しい」
「うん、その優しい見た目と花言葉が気に入ってね、ゆあにどうしても贈りたくなったんだ」
「このお花なんていうお花なの? でも、本当に優しい感じのお花だね」
「うん、そうだろ? ゆあの見た目にぴったりだなって思って」
「私、こんなに優しい雰囲気してないよ」
「してるよ。十分に。で、この花はトルコキキョウっていうんだって。後、花言葉は永遠の愛なんだって」
「永遠の愛……」
「そ。ゆあ、ゆあはさ、まだ、僕にもそんなに甘えたりしないし、多分、まだ、何処かで僕のことも心から信頼はしてないかもしれないけど、僕は本当にゆあを愛してるし、どんなゆあでも受けとめる自信はあるから、全部、僕に心を預けてくれないかな?」
「……守くん」
「そういう意味も込めて、この花をゆあに贈ろうと思ったんだ」
 僕がそう言うとゆあの目から涙が零れた。
「ゆあ? どうした? 僕、変なこと言ったかな?」
 僕がそう言うとゆあは首を横にふるふると振った。。
 そして、花束を持ったまま僕に抱きついて、
「違うの。反対。凄く嬉しくて。ありがとう。私、本当に守くんに出会うまで自分以外の人が信じられなかった。だけど、守くんに出会って、守くんのこと好きになって、そして、守くんは私の心を段々溶かしてくれて……だから、今、くれた言葉もこのお花も凄く嬉しい」
 そう言った。
 だから、僕はゆあを抱きしめ返して、
「そう言ってもらえたら僕も本当に嬉しいよ。でも、ゆあ、本当にこの花の花言葉どおり、僕はゆあに永遠の愛を捧げるからね」
 そう言った。
 その後、ゆあは今までで1番最高の笑顔になって、コクンと頷いた。
 
 そう。本当に僕は永遠の愛を君に捧げるから、これからは心から沢山笑って。
                                                                         END
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