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「桜雨」
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ねぇ、今ならきっとあなたのことを包み込むように愛せるのに。
春になったら日本には必ず何処かで桜が咲く。
その桜はとても綺麗で大勢の人が桜を見ている時は桜に心を奪われる。
だけど、私は桜を見る度に今は3年前に別れてしまった恋人のことを思い出すようになっていた。
何故なら、その恋人だった人と出会ったのが桜並木道で別れたのも桜並木道だったから。
その人とは大学で知り合って、それからお互いに社会人になり、私はその恋人―伸也を好きになりすぎて、離れている時間が長くなったのが耐えられなかった。
今、思えば私は凄く子供だったんだと思う。
だって、伸也はどんなに仕事が忙しくても私に会う時間をつくってくれようとしていたんだから。
それでも私は我儘すぎて……。
そして、とうとう別れてしまった。
離れている時間に伸也を想い過ぎるのが辛くて。
本当はまだ大好きだったのに。
だからか伸也と別れてから後で恋人になった人達とは皆、うまくいかなかった。
もう伸也と会えるはずなんてないのに。
私は今も伸也の面影をずっと心の何処かで探していた。
私はそう思いながら今、歩いている桜並木道の桜を見上げた。
もう満開に咲いている桜を。
今は平日の昼間だからか、ここにそんなに人はいなかった。
桜を見上げていると急に強い風が吹いて、桜の花びらが舞い散った。
「桜雨……」
私は思わず桜の花びらが舞い散っているのを見てそう言った。
だって、本当に桜の雨が降っているみたいだったから。
そういえば伸也と初めて出会った時もこんな風に桜の花びらが舞い散っていたな。
伸也と出会ったのは本当に偶然で。でも、今思えばきっと必然的な出会いだったのかもしれないとも思う。
そんな風に伸也のことばかり想いながら私は桜の花びらが舞い散るのを見ていた。
そして、風がやんで、桜雨もやんだ時……。
私の目の前に誰かが立った。
その誰かは伸也だった。
私は伸也を見て驚いた。
え? 何? 伸也の幻?
私が今あんまりにも伸也のことを考えていたから伸也の幻を見ているのだろうか。
そんなことを思った後、すぐに、
「美咲」
とまさしく伸也の声が私の名前を呼んだ。
「え? 何? 嘘」
「……何となく今日、ここに来たら美咲に会えるような気がしたんだ」
「どうして?」
「……桜雨の中で美咲が泣いてるような気がして」
「――」
「美咲、俺、やっぱり美咲が忘れられなかったよ」
「――」
「前はお互いに精神的に子供すぎて、解りあえないまま終わってしまったけど、もし美咲がいいなら、もう一度恋人同士になりたいんだ。今度はもっと美咲のことを包み込むように愛するから」
私は伸也のその言葉で堪らなくなり、泣きながら伸也に抱きついた。
伸也はそんな私をすぐに抱きしめてくれた。
「それは私の台詞だよ。本当にそう思ってた。もう一度伸也とやり直せたらどんなにいいかって」
「美咲」
「伸也」
「じゃあ、もう一度本当にやり直そう。またこの場所から」
私は伸也の言葉に大きく頷いた。
そして、私達は暫くその場で抱きあっていた。
その間、さっきの激しい桜雨とは違い、 今度はまるで私達を祝福してくれるかのようにふわふわと桜の花びらが優しく舞っていた。
END
春になったら日本には必ず何処かで桜が咲く。
その桜はとても綺麗で大勢の人が桜を見ている時は桜に心を奪われる。
だけど、私は桜を見る度に今は3年前に別れてしまった恋人のことを思い出すようになっていた。
何故なら、その恋人だった人と出会ったのが桜並木道で別れたのも桜並木道だったから。
その人とは大学で知り合って、それからお互いに社会人になり、私はその恋人―伸也を好きになりすぎて、離れている時間が長くなったのが耐えられなかった。
今、思えば私は凄く子供だったんだと思う。
だって、伸也はどんなに仕事が忙しくても私に会う時間をつくってくれようとしていたんだから。
それでも私は我儘すぎて……。
そして、とうとう別れてしまった。
離れている時間に伸也を想い過ぎるのが辛くて。
本当はまだ大好きだったのに。
だからか伸也と別れてから後で恋人になった人達とは皆、うまくいかなかった。
もう伸也と会えるはずなんてないのに。
私は今も伸也の面影をずっと心の何処かで探していた。
私はそう思いながら今、歩いている桜並木道の桜を見上げた。
もう満開に咲いている桜を。
今は平日の昼間だからか、ここにそんなに人はいなかった。
桜を見上げていると急に強い風が吹いて、桜の花びらが舞い散った。
「桜雨……」
私は思わず桜の花びらが舞い散っているのを見てそう言った。
だって、本当に桜の雨が降っているみたいだったから。
そういえば伸也と初めて出会った時もこんな風に桜の花びらが舞い散っていたな。
伸也と出会ったのは本当に偶然で。でも、今思えばきっと必然的な出会いだったのかもしれないとも思う。
そんな風に伸也のことばかり想いながら私は桜の花びらが舞い散るのを見ていた。
そして、風がやんで、桜雨もやんだ時……。
私の目の前に誰かが立った。
その誰かは伸也だった。
私は伸也を見て驚いた。
え? 何? 伸也の幻?
私が今あんまりにも伸也のことを考えていたから伸也の幻を見ているのだろうか。
そんなことを思った後、すぐに、
「美咲」
とまさしく伸也の声が私の名前を呼んだ。
「え? 何? 嘘」
「……何となく今日、ここに来たら美咲に会えるような気がしたんだ」
「どうして?」
「……桜雨の中で美咲が泣いてるような気がして」
「――」
「美咲、俺、やっぱり美咲が忘れられなかったよ」
「――」
「前はお互いに精神的に子供すぎて、解りあえないまま終わってしまったけど、もし美咲がいいなら、もう一度恋人同士になりたいんだ。今度はもっと美咲のことを包み込むように愛するから」
私は伸也のその言葉で堪らなくなり、泣きながら伸也に抱きついた。
伸也はそんな私をすぐに抱きしめてくれた。
「それは私の台詞だよ。本当にそう思ってた。もう一度伸也とやり直せたらどんなにいいかって」
「美咲」
「伸也」
「じゃあ、もう一度本当にやり直そう。またこの場所から」
私は伸也の言葉に大きく頷いた。
そして、私達は暫くその場で抱きあっていた。
その間、さっきの激しい桜雨とは違い、 今度はまるで私達を祝福してくれるかのようにふわふわと桜の花びらが優しく舞っていた。
END
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