短い恋のお話

愛理

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「今のこの瞬間に」

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    生まれかわるとか、そんなこと今の私には解らないから。

「拓実」
 私は彼氏のことをそう呼んで正面からおもいっきり抱きついた。
 ソファーに座っていた拓実がソファーから少しずり落ちる程におもいっきり。
「うわっ! びっくりするだろ。急に何だよ?」
 そう言いながら拓実はソファーに座り直し、でも、私のことも抱き返してくれた。
 今、私達は拓実が1人暮らしをしているマンションのリビングルームにいた。
 今日は日曜日で大学生の私達は休みなので、私はほんのさっきここに遊びに来た。
 私と拓実は同じ歳で大学で同じ学科で、同じゼミなので、仲良くなった。
 私達は今、大学2年生で私達が恋人同士になってから、半年が経っていた。
 ちなみに私達が恋人同士になったのは大学1年生の終わりかけの頃だった。
 拓実は大学2年生になってから、1人暮らしを始めた。
 半分くらいは親に協力をしてもらったらしい。
 そして、私は拓実が1人暮らしを始めてから、ここにちょこちょこと来ていた。
「ん? だって、抱きつきたくなったから」
 私がそう言うと拓実は小さな溜息を吐いた。
 でも、表情は決して嫌そうなものじゃなかった。
「優奈はいつも思いついたら、すぐに行動に移すよな。こうやって抱きついてくるのも何処でもだし」
 少し呆れたように、でも、優しい表情と優しい声で拓実が言った。
「だって、生きてる時間って限りがあるから。まあ、生まれかわったりとかするのかもしれないけど、でも、そんなことは解らないし。そう思ったら、思いついた時にしたいことはやっておきたいって思うんだもん! 特に拓実と一緒にいる時にできることは!」
 私がそう言うと拓実はくすっと笑って、
「そうだな。生まれかわりとかあるかも本当に解らないし、あったとしても、今の人生は今だけだしな。それなら、今を精一杯生きてたいもんな。それに俺は本当は優奈のそういう純粋で素直なところが凄く好きだよ」
 そう言って、私を更に強く抱きしめてくれた。

 そう。今の私達には生まれる前のことも、この世から去った時のことも、何もかも解りはしないし、今のこの瞬間を大切にしたいと思うから、やりたいことは思いついた時にできるだけやっておきたい。
 そして、拓実、できればあなたとこれからも沢山の瞬間を過ごして、あなたと沢山の楽しいことをやっていきたいな。
  だから、どうかこれからも私の隣で笑っていてね。
                                                                          END
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