短い恋のお話

愛理

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「君にしか」

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 本当は弱いところだってある。
 だけど、そんな部分は君にしか見せれない。
 だから、お願い。
 これからもずっと俺の傍にいて。
 そうしたら俺はいつだって心のバランスを保っていられるから。

 ぎゅっと彼女の彩香(さやか)を1人暮らしをしているマンションのリビングリームで抱きしめた。
 今日は金曜日で仕事を終えた彩香が来てくれて部屋に入った途端に。
 俺と彩香は勤めている会社は違うけどお互いに一般企業に勤めていて、だいたいは土曜日と日曜日は休みでこうして金曜日の夜から会うことも多かった。
 そして、今日は彩香はここに泊まっていく。
 俺もさっき帰ってきたばっかりだけど彩香も今日は仕事が忙しかったらしく今の時間、午後8時過ぎにここに来てくれた。
「真司、どうしたの?」
 いきなり俺が抱きしめたからか少し驚いたような口調で彩香が言った。
「うん、ちょっとだけこうしていたい」
 俺がそう言うと彩香はもう何も言わずに俺の背中にそっと両手を回した。
 きっと彩香には伝わったんだと思う。
 俺が今、精神的に辛いことを。
 今日、仕事で大失態をした。
 今の仕事は大学を卒業してから就いた仕事で今年で5年目になるけど、こういった失態は凄く久し振りで自分が勿論悪いことは解っているけど気持ちが酷く動揺してしまった。
 そして、その失態を上司が尻拭いをしてくれたけど、その後、俺はずっと暗い気持ちを引き摺っていて……。
 仕事をしている間中、いや、彩香がここに来てくれるまで俺は彩香にもの凄く会いたかった。
 幸い彩香に今日、仕事が終わってすぐに会いたいとLINEで連絡するとすぐに“解った。じゃあ、今日、泊まりにいくよ。少し遅くなるかもだけど”と返事が来て、今、こうして彩香が来てくれている。
 夜ご飯もつくってくれるらしい。だけど、俺は本当に彩香をこうして抱きしめたかったから、夜ご飯より先にこうした。
 彩香とは共通の友達を通じて飲み会で知り会った。
 初めて出会った時、何故か彩香とはすぐに打ち解けて、それからすぐに一緒に遊びに行って、俺から告白してつきあうようになった。
 彩香とつきあってからの俺は前よりもだいぶと凄く気持ちが楽になった。
 だって、こんな風に素直に自分の弱いところも見せられるから。
 そして、そんな俺を彩香はいつもそっと優しく包み込んでくれるから。
 俺と彩香は同じ歳なのにこんな時は彩香は何処か優しいお姉さんみたいで、
「真司、大丈夫だよ」
 こんな風に優しい口調で言ってくれる。
 そして、俺はそんな彩香の言葉を聞いて暗い気持ちがどんどん消化されていく。
 彩香に会うまでは俺はこんな風にはなれなかった。
 俺は性格からか何があってもへこたれない人と思われているみたいで。
 だから、彩香に会うまではこんな風に弱い部分も見せれる人がいなくて。
 だけど、彩香に出会い、彩香は俺のそんな部分にも気づいてくれて、いつからか俺は素直に彩香に弱い部分も素直に見せれるようになった。
 そうしたら本当に気持ちが楽になって……。
 だから、今では何か辛いことがある度にこうして彩香に甘えてしまう。
 そして、そうすることで前よりもずっと心のバランスも上手く保てるようになったから。
 だから、俺は彩香に、
「うん、彩香がこれからもずっと俺と一緒にいてくれるなら俺は絶対にこれからも何があっても大丈夫だよ」
 そう言った。
 すると彩香は俺の背中に回している手の力を強めて、
「じゃあ、ずっとずっと真司と一緒にいるから大丈夫だね」
 もの凄く優しい口調でそう言ってくれた。
 そして、俺達は少しの間、見つめ合い、その後、キスをして、それから彩香はご飯作るね~と言ってくれて、とてもまったりとした幸せな時間を過ごした。

 なあ、彩香、本当にずっとこれからも一緒にいてくれよな。
 そして、これからもどんな俺も受けとめて。
                                                          END
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