「愛って何ですか」

愛理

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第23話 「しずくの愛」

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    しずくは一命をとりとめたものの、まだ意識が戻らなかった。
 手術をした日から既に4日間が経っていた。
 悟は仕事の合間を縫っては病院に訪れていた。
 そして、その間にしずくの両親にも会った。
 しずくの両親は二人とも、泣きながら、しずくの名前を何度も呼んでいた。
 その様子を見て悟は思った。
 ああ。この二人は本当にしずくのことを愛しているんだと。
 例え過去にしずくとどんなことがあったとしても。
 そして、その過去をこの二人はずっと悔やみ続けてきたに違いないと。
 
 悟が病室に行くと知らない人達が何人もいた。
 誰だ?
 悟がそう思っていると悟より若そうな女性と小さな子供が手を繋ぎながら悟の所へ来た。
 どうやら雰囲気的に見ると親子らしい。
「こんにちは。私達はしずくちゃんのちょっとした知り合いで。実はこの子が自動車に轢かれそうになった時、しずくちゃんが咄嗟に庇ってくれて……。それから、この子もしずくちゃんに懐いて、私も親しくさせて貰ってるんです。それで、今回、しずくちゃんが大変なことになってるって、近所で噂になっていて、いてもたってもいられなくて、この子と病院を近所の方に教えて貰ってお見舞いに来たんです。だけど、しずくちゃん、意識不明だなんて。しずくちゃん、絶対に助かりますよね」
「……ええ」
 あまりにも凄い迫力で言われて悟はそう答えることしかできなかった。
 そして、同時に胸が締めつけられる思いだった。
 しずく。やっぱり君は凄いね。
 自分には関係のない人の命まで君は救ってあげていたなんて。
 悟がそう思っているとその親子と入れ替わりのように今度は優しそうなお婆さんが悟の所へやってきた。
「私はしずくちゃんの近所に住んでる者でね。一人暮らしの私をしずくちゃんはいつも気遣ってくれてね。で、ここのところ、顔を見ないなと思ったら、しずくちゃんが大変なことになってるって聞いてね。病院を近所の人に聞いてお見舞いに来たんだよ。だけど、意識不明だなんてね。早く目を覚まして、いつもの笑顔のしずくちゃんを見せて欲しいね」
 そう言いお婆さんは病室から出て行った。
 そして、その二組以外にも何人かいた病室にいた人達は悟に気づくなり病室を出て行った。
 皆、悟に気を使ったのだろう。おそらく、しずくの恋人が来たのだと思って。
 そして、今、病室を訪れていた人達はおそらく皆、しずくに何かの形で愛を貰った人達なのだろう。
 しずくが寝ているベッドの横にある棚には沢山の千羽鶴が置いてあった。
 きっと今来た人達、いや、それ以外の人達も、もしかすると来て、置いて行ってくれたのかもしれない。
 本当にしずくの無事を祈って。一羽一羽に想いを込めて織った千波鶴を。
 しずく。君は本当に凄いね。
 どれだけ君が愛を大事にしてきたか解るよ。
 だから、どうか目を開けてくれ。
 そして、俺と皆に愛をもう一度与えて。
 悟はしずくを見つめながら、切ない表情を浮かべ必死にそう願っていた。
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