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第10話「倉崎さんの噂」
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“倉崎さんが女性の手を取って歩いていた”
“倉崎さんが小柄な女性を事務所の前で抱きしめていた”
私が倉崎さんと小柄な女性が2人で何処かへ行くのを目撃してしまった次の日、会社にいくと職場のあちこちで倉崎さんのそんな噂をしているのが聞こえてきた。
「ね、野中さんは倉崎さんの噂、知ってる?」
昼休み、一緒に食堂でまた昼食を食べていると長谷さんまでもがそんなことを言ってきたので、私は若干、驚きつつも、
「うん、だって、今日、倉崎さんの噂が職場のあちこちで聞こえてきたから」
そう、あまり何も気にしていない感じを出して言った。
だけど、長谷さんは、
「ああ、それは昨日の倉崎さんと女性とのことでしょ?」
と意外なことを言ってきた。
「え? そうだけど」
私は長谷さんの言葉の意味が解らず、思わず首を傾げる。
だからか長谷さんはすぐに、
「昨日の倉崎さんと女性の噂じゃなくて、昨日の女性と倉崎さんのもっと深い噂」
そう言ってきた。
「もっと深い噂?」
私がそう言うと長谷さんはコクンと頷き、
「そう、何か倉崎さんは今、噂になっている、昨日、一緒にいたという女性のことは昔から、凄く大切にしてるっていう噂があるみたいなんだ」
そう言った。
「昔から?」
「うん、でも、倉崎さんはその女性以外に今まで何人も彼女がいたことがあるみたいだし、私もそんな噂を聞いても、ほんとかなとは思ったんだけどさ。でも、結構、信憑性があるみたいなんだ」
確かに昨日の倉崎さんはあの女性のことを決して、冷たい態度や口調で接している感じではなかった。
それに言われてみれば恐らく、なるべく女性を傷つけないようにしていた感じも今はしていた。
今まで彼女ではなかったとしても、きっと倉崎さんとあの女性との間には噂どおりに特別な何かがあるんだろうと思う。
そして、私は、きっとあの女性以上の関係には倉崎さんとはなれないような気がする。
倉崎さんに恋をしていると自覚したけれど、だけど、その途端に倉崎さんとあの女性が2人でいるところを目撃したり、今、こんなことを聞いたりするのは、この恋はやめておきなさいってことなのかもしれない、私は心の中でそう思っていた。
長谷さんは、そんな私を見て、傷つけたと思ったのか、ごめんね、余計なこと言っちゃったかもと謝ってくれたけど、私は、ううん、むしろ教えてくれて良かったよと笑って言った。
だって、何も知らないで、倉崎さんへの気持ちを膨らませてしまうより、ずっといいから。
私はそう思う方だから。
“倉崎さんが小柄な女性を事務所の前で抱きしめていた”
私が倉崎さんと小柄な女性が2人で何処かへ行くのを目撃してしまった次の日、会社にいくと職場のあちこちで倉崎さんのそんな噂をしているのが聞こえてきた。
「ね、野中さんは倉崎さんの噂、知ってる?」
昼休み、一緒に食堂でまた昼食を食べていると長谷さんまでもがそんなことを言ってきたので、私は若干、驚きつつも、
「うん、だって、今日、倉崎さんの噂が職場のあちこちで聞こえてきたから」
そう、あまり何も気にしていない感じを出して言った。
だけど、長谷さんは、
「ああ、それは昨日の倉崎さんと女性とのことでしょ?」
と意外なことを言ってきた。
「え? そうだけど」
私は長谷さんの言葉の意味が解らず、思わず首を傾げる。
だからか長谷さんはすぐに、
「昨日の倉崎さんと女性の噂じゃなくて、昨日の女性と倉崎さんのもっと深い噂」
そう言ってきた。
「もっと深い噂?」
私がそう言うと長谷さんはコクンと頷き、
「そう、何か倉崎さんは今、噂になっている、昨日、一緒にいたという女性のことは昔から、凄く大切にしてるっていう噂があるみたいなんだ」
そう言った。
「昔から?」
「うん、でも、倉崎さんはその女性以外に今まで何人も彼女がいたことがあるみたいだし、私もそんな噂を聞いても、ほんとかなとは思ったんだけどさ。でも、結構、信憑性があるみたいなんだ」
確かに昨日の倉崎さんはあの女性のことを決して、冷たい態度や口調で接している感じではなかった。
それに言われてみれば恐らく、なるべく女性を傷つけないようにしていた感じも今はしていた。
今まで彼女ではなかったとしても、きっと倉崎さんとあの女性との間には噂どおりに特別な何かがあるんだろうと思う。
そして、私は、きっとあの女性以上の関係には倉崎さんとはなれないような気がする。
倉崎さんに恋をしていると自覚したけれど、だけど、その途端に倉崎さんとあの女性が2人でいるところを目撃したり、今、こんなことを聞いたりするのは、この恋はやめておきなさいってことなのかもしれない、私は心の中でそう思っていた。
長谷さんは、そんな私を見て、傷つけたと思ったのか、ごめんね、余計なこと言っちゃったかもと謝ってくれたけど、私は、ううん、むしろ教えてくれて良かったよと笑って言った。
だって、何も知らないで、倉崎さんへの気持ちを膨らませてしまうより、ずっといいから。
私はそう思う方だから。
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