白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~

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第二章 学園編

24 魔道具の授業

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 学園内で広がっている身分を隠した皇族の噂、それは当然アルメリア達のいるクラスでも広がっていた。

「おい、知っているか。一年生の中に皇族の方が……」
「なんでも、身分を隠して……」

 そして、そんな生徒たちの噂話は嫌でもアルメリアの耳にも入ってくる。

(あの噂、ここまで広がっていますのね。ですが、噂をしている彼等もまさか自分たちのすぐ近くにその本人がいるとは思ってもいないのでしょうね)

 そして、アルメリアがそこまで考えた時、チャイムが鳴った。次の授業が始まる合図だ。その音が鳴ると、噂話をしていた生徒たちは一瞬にして静まりかえる。
 すると、その直後に教室に入ってきたのは白衣を着た女教師であった。

「初めまして、わたしは皆さんの魔道具に関する授業を受け持つアイシャと言います。よろしくお願いします」

 そして、アイシャと名乗ったその女教師は早速と言わんばかりに授業を始めた。

「では、これより授業を行います。今日は魔道具の歴史についての講義です。皆さん、早速ですが魔道具が何なのかは知っていますね」

 アイシャのその言葉に教室にいた全員が首肯する。魔道具は今の人間の生活に欠かせないものだ。それこそ、街を照らしている街灯や火を起こすためのコンロに始まり、戦場で使われる武器に至るまで、ありとあらゆる場所で魔道具は使用されている。

「では、魔道具がどのようにして作られているのか、それが分かる人はいますか?」

 アイシャのその言葉に数名の生徒が手を上げると、彼女はその内の一人を指名し答えるように促した。

「魔道具は魔獣の死骸から採取できる骨や皮、或いは魔石を素材としています。それを錬金術を用いて加工することで作られています」
「はい、その通りです」

 そして、アイシャはそれらの内容を黒板に書き記していく。

「ここにいる皆さんであるなら魔獣の事はご存じですよね」
「はい。魔獣とは魔族が生み出した眷属、或いはその子孫の事です」
「ええ、その通りです」

 そして、彼女は魔獣と錬金術についての歴史を話し始めた。

 かつて、存在した魔王の眷属であった魔族たちは自らの眷属や下僕として野生の獣を元に魔獣を生み出した。
 しかし、今では聖魔大戦と呼ばれる戦争の最終局面、勇者と魔王の最終決戦時に数多くの魔族が魔王と共に討たれる事になった。その際、彼らが従えていた魔獣たちの一部が生き残ってしまったのだ。それらは主を失い、そのまま野に放たれることになる。
 そんな魔獣たちは野生の獣と交わり子孫を残していた。幸か不幸か、どちらかの親が魔獣であった場合、生まれてくる子供も全て魔獣になるという特性も備えていたのだ。
 そんな特性からか、野生の魔獣は時間とともにその数を増していった。
 教会の騎士たちも魔獣を討伐していたが、討伐速度に対し繁殖速度が勝り次第に魔獣たちはその数を増やしていく。
 更に言うなら、魔獣の個体数の増加には周辺諸国の協力性の無さも大いに影響していた。
 魔王という強大な敵がいなくなった事で協力体制を築いていた国々が小競り合いを始めたのだ。
 また、魔王とは違い、魔獣は知性の低い獣でしかない。言うなれば、魔獣という存在は各国にとっては獣害程度でしかなく、国家規模の脅威ではなかった。
 更に言うなら、魔獣を討伐すること自体が、国家にとって殆ど利益のない行為であった。魔獣の死骸は魔王の遺産であるとされていた為、教会によって回収されることになっていたからだ。
 そのため、各国は魔獣の討伐にはかなり消極的であったのだ。

 そこで、教会が考え出した苦肉の策が魔獣の死骸の再利用であった。魔獣から採取する事が出来る数多の素材、それを利用した錬金術による魔道具の作成、それを認めることで各国に自発的に魔獣を討伐するように仕向けたのだ。
 その目論見は見事に成功し、各国は挙って自国内の魔獣を討伐し始めたのである。

「そして、今では各国が錬金術を研究しております。昨今では錬金術の技術水準は国家の国力を決める大きな指針の一つであるとも言われておりますね」

 そう言いながら、アイシャは黒板にそれらの内容を書き記していく。

「それでなのですが、教会は魔獣の死骸を素材とすることを認めたと説明したと思いますが、その中には認められないものもありました。それが魔王とその力に関する研究ですね。
 魔獣は魔王の眷属であるが生み出した下僕です。魔獣を研究してかつての魔王と同じ力を手に入れようと野心ある国が昔は少なからずあったみたいですよ。
 でも、それが教会に見つかって、周辺諸国や教会の抱える聖騎士部隊に一気に攻め込まれて国が滅んだという話もセットで付いて来るのですけどね」

 そう言いながらアイシャは苦笑する。

「因みにですが、その研究は魔王の持つ魔力になぞらえて魔の錬金術と呼ばれていますね。
 余談ですが、魔の錬金術は魔族の残党が一番詳しいそうですよ。教会が禁止しているといっても元から教会の敵である魔族には関係ありませんからねぇ。先程の話で出た野心ある国々も大体が裏に魔族がいたそうです」

 そして、アイシャは先程と同じように今迄の内容を黒板に記した。

「では、ここからは錬金術の歴史についての……」

 と、アイシャが話しだそうとした時、チャイムが鳴った。授業終了の合図だ。

「あら、もう時間ですか。では、ここで授業は終了とします」

 そして、アイシャは手元の資料を纏めると、そのまま教室から退出していった。それを見送った生徒たちはこの授業が本日最後という事もあり、帰る準備を始める。
 そんな中、アルメリアは先程の授業の内容を思い返しながら、ふと自らの指に嵌められた指輪へと視線を落とした。

(お父様から頂いたこの指輪、まさか……)

 この指輪は入学祝いとしてアルメリアが父である皇帝から贈られたものだ。曰く、帝国の錬金術の粋を集めたもので、その効果はアルメリアの持つ魔力の隠匿というものだそうだ。
 そして、先ほどのアイシャの説明通りであるなら、この指輪には魔の錬金術が間違いなく関わっている。
 つまり、ガイウスの裏には魔族がいるという事だ。しかも、今までの事を考えればその関係は相当に長く深いのだろう。

(お父様は一体いつからこの事を見越して……?)

 そこまで考えたその時、アルメリアの元にリリアが現れた。

「姫様、お迎えに参りました」
「ええ、いつもありがとう」

 そして、リリアの言葉でアルメリアは考えるのを止め、帰る準備を始めるのだった。
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