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番外編②:初めての流れ星
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——告白のあと、視界の色が少し変わった。
星も街灯も、前より輪郭がはっきりして見える。
夏休み前の夕方。屋上の鍵は、美月が先に開けてくれていた。
柵に寄りかかって、手帳に何かを書いている。
夕焼けの中、その姿は影絵みたいにくっきりしていた。
「……早いな」
声をかけると、彼女は振り返って笑った。
「怜先輩も、でしょ」
来るのがわかっていたみたいな笑い方。胸の奥が温かくなる。
荷物を置いて、自然に隣に立つ。
以前は互いに半歩分あけていた距離が、今日はゼロに近い。
星図を覗き込むと、肩が触れた。誰も引かない。
「この星、わかります?」
指先が触れる距離で、彼女が差す。
視線が星よりも横顔に吸い寄せられる。
——告白の前は、こんな見方はしていなかった。
「風、冷えるかも」
ポケットから上着を出して、そっと肩にかける。
「ありがと……でも、観測って結構動くから」
「じゃあ、動かないときは掛けとけ」
冗談めかして言ったつもりが、思ったより真剣な声になった。
少し離れた街の明かりが、空の端をぼんやり染めている。
美月が双眼鏡をのぞき、位置を修正する。
「見つけた。アルタイル」
「……やっぱり、君は俺の目印だな」
「それ、ロマンチックすぎ。観測者のくせに」
「ロマンチックも、観測に入れることにした」
流星がひとつ、静かに落ちる。
「お願いごと、しました?」
「……叶えたくて、もう叶ってることだったから」
「……ずるい」
そう言いながら、彼女がそっと腕をつかむ。
その手を、握り返す。
夜空の下、二人の呼吸がそろう。
——恋人になって初めて、一緒に見た流れ星だった。
星も街灯も、前より輪郭がはっきりして見える。
夏休み前の夕方。屋上の鍵は、美月が先に開けてくれていた。
柵に寄りかかって、手帳に何かを書いている。
夕焼けの中、その姿は影絵みたいにくっきりしていた。
「……早いな」
声をかけると、彼女は振り返って笑った。
「怜先輩も、でしょ」
来るのがわかっていたみたいな笑い方。胸の奥が温かくなる。
荷物を置いて、自然に隣に立つ。
以前は互いに半歩分あけていた距離が、今日はゼロに近い。
星図を覗き込むと、肩が触れた。誰も引かない。
「この星、わかります?」
指先が触れる距離で、彼女が差す。
視線が星よりも横顔に吸い寄せられる。
——告白の前は、こんな見方はしていなかった。
「風、冷えるかも」
ポケットから上着を出して、そっと肩にかける。
「ありがと……でも、観測って結構動くから」
「じゃあ、動かないときは掛けとけ」
冗談めかして言ったつもりが、思ったより真剣な声になった。
少し離れた街の明かりが、空の端をぼんやり染めている。
美月が双眼鏡をのぞき、位置を修正する。
「見つけた。アルタイル」
「……やっぱり、君は俺の目印だな」
「それ、ロマンチックすぎ。観測者のくせに」
「ロマンチックも、観測に入れることにした」
流星がひとつ、静かに落ちる。
「お願いごと、しました?」
「……叶えたくて、もう叶ってることだったから」
「……ずるい」
そう言いながら、彼女がそっと腕をつかむ。
その手を、握り返す。
夜空の下、二人の呼吸がそろう。
——恋人になって初めて、一緒に見た流れ星だった。
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