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Episode1
頰
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とても静かな夜。
街灯だけが輝いていて、それ以外は眠っているような夜。
私は港の近くにある公園を歩いていた。
ヒールならコツ、コツと鳴るだろう。
でも私はスニーカーで足音も響かず、静かに、静かに。
両手はリュックの背負い紐をしっかりと握っている。
この街に引っ越してきたのは一週間前。
言うのは簡単だけれど、自分を変えたいと思っていた。
このままじゃ複雑な気持ちのままだといつも感じていた。
こんな真夜中に外を歩こうと思ったのもそんな複雑な心境からだった。
悲しみというのか、切なさなのか、そんな気持ちが湧き上がってきてどうしようもなかった。
今日は稀にあるどうしようもない日。
外に出るとあまりにも静かだったからもっと悲しくなってしまうのではと心配になったけれど、静けさにほっとしている自分がいた。
小さな小さな世界の一番乗りみたいな。
ここは今だけ一人の世界だと思った。
公園を奥へ奥へと歩く。
港を見てみようと木々を抜けた。
その瞬間だった。
公園の一番奥の街灯の下に何かが見えた。
黒い?人?事件?死体?
やはり一人の世界ではなった。
何かいる。
そのまま立ち去った方が良いとも思ったけれど、気付いた時にはどんどん近づいていた。
何年振りだろう。
怖いもの知らず。
私の中にまだ、あった。
街灯の下には30代くらいの男の人がいた。
肩をじっと見てみると、呼吸をしているようだった。
良かった...
その場から去ろうとは思ったのだけれど一応
「大丈夫ですか?」
と声をかけた。
起きないから、肩を少し揺すってみる。
骨張った肩だ。
確かに全体的に結構な細身だ。
街灯に照らされた顔をよく見てみると頬に跡が残っていた。
「涙の...跡...」
すると目の前の男の人が目を覚ました。
大きな目だ。
至近距離に女がいて驚いているようだった。
私は、少し離れて
「大丈夫ですか」
と聞いた。
その人は
「あ、すみません。大丈夫です。あれ?何してんだろ、ほんとすみません」
と慌てている様子だった。
低く響く声。
悲しげな表情。
変な沈黙があってから私は
「大丈夫なら良かったです。失礼します」
と言い、そこから素早く来た道を戻った。
しばらくして遠くから大きな声で
「ありがとう」
と聞こえた。
私は振り返り、軽く会釈してさらに足早に進んだ。
突然の出来事だったから鼓動が速くなっていた。
でもその鼓動はあの、「ありがとう」からさらに加速した。
久しぶりに男の人と喋ったな、なんて呑気に考えつつ、灯りに照らされた涙の跡の事を思い出す。
少しだけ胸がギュッとなった。
私が感じていた切なさの隣に、知らない人の悲しみを置いてみる。
また胸がギュッとなる。
街灯だけが輝いていて、それ以外は眠っているような夜。
私は港の近くにある公園を歩いていた。
ヒールならコツ、コツと鳴るだろう。
でも私はスニーカーで足音も響かず、静かに、静かに。
両手はリュックの背負い紐をしっかりと握っている。
この街に引っ越してきたのは一週間前。
言うのは簡単だけれど、自分を変えたいと思っていた。
このままじゃ複雑な気持ちのままだといつも感じていた。
こんな真夜中に外を歩こうと思ったのもそんな複雑な心境からだった。
悲しみというのか、切なさなのか、そんな気持ちが湧き上がってきてどうしようもなかった。
今日は稀にあるどうしようもない日。
外に出るとあまりにも静かだったからもっと悲しくなってしまうのではと心配になったけれど、静けさにほっとしている自分がいた。
小さな小さな世界の一番乗りみたいな。
ここは今だけ一人の世界だと思った。
公園を奥へ奥へと歩く。
港を見てみようと木々を抜けた。
その瞬間だった。
公園の一番奥の街灯の下に何かが見えた。
黒い?人?事件?死体?
やはり一人の世界ではなった。
何かいる。
そのまま立ち去った方が良いとも思ったけれど、気付いた時にはどんどん近づいていた。
何年振りだろう。
怖いもの知らず。
私の中にまだ、あった。
街灯の下には30代くらいの男の人がいた。
肩をじっと見てみると、呼吸をしているようだった。
良かった...
その場から去ろうとは思ったのだけれど一応
「大丈夫ですか?」
と声をかけた。
起きないから、肩を少し揺すってみる。
骨張った肩だ。
確かに全体的に結構な細身だ。
街灯に照らされた顔をよく見てみると頬に跡が残っていた。
「涙の...跡...」
すると目の前の男の人が目を覚ました。
大きな目だ。
至近距離に女がいて驚いているようだった。
私は、少し離れて
「大丈夫ですか」
と聞いた。
その人は
「あ、すみません。大丈夫です。あれ?何してんだろ、ほんとすみません」
と慌てている様子だった。
低く響く声。
悲しげな表情。
変な沈黙があってから私は
「大丈夫なら良かったです。失礼します」
と言い、そこから素早く来た道を戻った。
しばらくして遠くから大きな声で
「ありがとう」
と聞こえた。
私は振り返り、軽く会釈してさらに足早に進んだ。
突然の出来事だったから鼓動が速くなっていた。
でもその鼓動はあの、「ありがとう」からさらに加速した。
久しぶりに男の人と喋ったな、なんて呑気に考えつつ、灯りに照らされた涙の跡の事を思い出す。
少しだけ胸がギュッとなった。
私が感じていた切なさの隣に、知らない人の悲しみを置いてみる。
また胸がギュッとなる。
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