9 / 21
Episode9
写真
しおりを挟む
その日、私は吉岡さんの家で夜ご飯を食べる事になっていた。
吉岡さんはお客さんではあるけれど、とても話しやすく、一緒に買い物に行ったり、映画館にも行ったりするようになっていた。
仕事帰りにケーキを買って吉岡さんの家に行き、一緒に鍋をした。
吉岡さんはいつも、私の話を聞きたいと言ってくれる。
今日のテーマは恋愛だった。
私は中学の頃の河村くんの話をしたり、憧れのシチュエーションの話をした。
「水族館にデートが一番の憧れです。イルカのショーを見たり」
「そういうのが好きなのね。よくある王道パターンね。私はおじいちゃんと行ってみたかったのは、映画館よ。おじいちゃん、じっとしていられない人でね。読書もしなかったし、常に体を動かしているような人だった」
憧れや理想の話になった時、吉岡さんは必ず、旦那さんとの憧れや理想を語る。
そんな吉岡さんの表情はとても幸せそうだった。
「あ、そうだ依子ちゃん。野島さんが撮った写真見る?新聞の切り抜きだけど持ってるの」
と隣の部屋の棚に探しにいった。
野島さんの写真。
前から気にはなっていた。
一度、調べようと思ったけれど、それはなんとなく違う気がしてやめていた。
「あったあった。これ、なんか凄い賞を撮ったのよ」
渡された写真には、桜の木が大きく写っていた。後ろに少しだけ夕焼けが見える。
よくある桜の写真ではあるけれど、色合いが他とは違い、とても綺麗だった。
「新人賞だったはずだけど、おじいちゃんが切り抜いたから、文字の部分がなくて。”写真を見れば分かるだろ”って言うのよ。でも結局、歳をとると忘れちゃって...本当に綺麗ね...」
薄いピンクとオレンジに少しの水色。
心が浄化されるような美しさだった。
「彼が学生の頃、あの映画館で何度か小さな写真展を開いていたの。おじいちゃんと一緒に行ったのよ。入り口で緊張した顔で野島さんが立っていて本当に可愛かった。写真が素晴らしくて、風景がメインなんだけど、たまに人の写真もあったわよ。この桜の写真が大きく壁に貼り出されていて、凄かった」
吉岡さんの話を聞きながら、その写真展を想像してみた。
学生時代の野島さん。
大きな桜の木の写真。
吉岡さんと旦那さんの笑顔。
「素敵だったでしょうね。行きたかった...」
「前は常に色々な展示をしてたんだけどね。今は貸し出しスペースになってて、たまには絵画展とかやってるけど...野島さんの写真展は全然しないの」
カメラを側に置き、遠くを眺めていた野島さんを思い出す。
そして、涙の跡も。
吉岡さんはお客さんではあるけれど、とても話しやすく、一緒に買い物に行ったり、映画館にも行ったりするようになっていた。
仕事帰りにケーキを買って吉岡さんの家に行き、一緒に鍋をした。
吉岡さんはいつも、私の話を聞きたいと言ってくれる。
今日のテーマは恋愛だった。
私は中学の頃の河村くんの話をしたり、憧れのシチュエーションの話をした。
「水族館にデートが一番の憧れです。イルカのショーを見たり」
「そういうのが好きなのね。よくある王道パターンね。私はおじいちゃんと行ってみたかったのは、映画館よ。おじいちゃん、じっとしていられない人でね。読書もしなかったし、常に体を動かしているような人だった」
憧れや理想の話になった時、吉岡さんは必ず、旦那さんとの憧れや理想を語る。
そんな吉岡さんの表情はとても幸せそうだった。
「あ、そうだ依子ちゃん。野島さんが撮った写真見る?新聞の切り抜きだけど持ってるの」
と隣の部屋の棚に探しにいった。
野島さんの写真。
前から気にはなっていた。
一度、調べようと思ったけれど、それはなんとなく違う気がしてやめていた。
「あったあった。これ、なんか凄い賞を撮ったのよ」
渡された写真には、桜の木が大きく写っていた。後ろに少しだけ夕焼けが見える。
よくある桜の写真ではあるけれど、色合いが他とは違い、とても綺麗だった。
「新人賞だったはずだけど、おじいちゃんが切り抜いたから、文字の部分がなくて。”写真を見れば分かるだろ”って言うのよ。でも結局、歳をとると忘れちゃって...本当に綺麗ね...」
薄いピンクとオレンジに少しの水色。
心が浄化されるような美しさだった。
「彼が学生の頃、あの映画館で何度か小さな写真展を開いていたの。おじいちゃんと一緒に行ったのよ。入り口で緊張した顔で野島さんが立っていて本当に可愛かった。写真が素晴らしくて、風景がメインなんだけど、たまに人の写真もあったわよ。この桜の写真が大きく壁に貼り出されていて、凄かった」
吉岡さんの話を聞きながら、その写真展を想像してみた。
学生時代の野島さん。
大きな桜の木の写真。
吉岡さんと旦那さんの笑顔。
「素敵だったでしょうね。行きたかった...」
「前は常に色々な展示をしてたんだけどね。今は貸し出しスペースになってて、たまには絵画展とかやってるけど...野島さんの写真展は全然しないの」
カメラを側に置き、遠くを眺めていた野島さんを思い出す。
そして、涙の跡も。
0
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる