元子爵家子息だってやる時はやるのさ！~従者は華麗に死亡フラグを回避する~

クラスティナ様というご令嬢

ノヴァ兄が部屋のドアをノックする
｢クラスティナ、入るぞ｣
｢どうぞ｣

部屋の中に入った俺は驚いた。そこにいる女の子はまだ4歳と言うのが信じられないほど大人びていた。
綺麗に整えられた金髪はキラキラと輝き、蒼の瞳は澄んだ海の様に美しい。気品と威厳を兼ね備えた美しい姫君が彼女の他に居ようものか。俺は自然と彼女の傍に跪いた。ノヴァ兄やクラスティナ様は俺の行動が予想外だったのかすごく驚いていた。

｢フィ、フィス......！？｣
｢お目にかかれて光栄です、クラスティナ･ジェラルド公爵令嬢。私わたくしは、これから従者兼護衛として貴女の傍に付くフィス･マリベルと申します。誠心誠意務めさせて頂きます。｣
｢！？……クラスティナ･ジェラルドです。こちらこそよろしくお願いします。｣

そういったクラスティナ様の目には諦めのような感情が宿っていた。仕方がないと思う。自分は従者が辞めてしまうような行動を取ったつもりは無いのに、立て続けに何人も従者が辞めているのだ。そんなことがあれば疑心暗鬼に陥っていてもおかしくない。絶対にその疑心暗鬼を解いてみせる。

｢早速ですが、クラスティナ様、私わたくしと契約を交わしませんか？｣
｢契約……とは具体的にどのような内容ですか？｣
｢今から話し合って決めますが、そうですね……貴女のことを守るための契約です。私わたくしは何があろうとも、貴女の従者は辞めないと決意しております。ですが、私わたくしが辞めないとなれば後妻やその娘が貴女にどのような危害を加えてくるか分かりません。｣

再びクラスティナ様が目を見開く。

｢それらから私を守るためということですか？こんなどうしようもない私を？｣
｢どうしようもない？貴女が言った我儘は人の役にたっています。そんな貴女のどこがどうしようもないのでしょうか？｣
｢だ、だって、私が言った我儘にもうついていけないって……だから辞めていったってお義母様もお義姉様もおっしゃって......。｣

後妻達はクラスティナ様に余計なことを吹き込んでくれたらしい。ノヴァ兄の顔が険しくなっていく。3歳の子供をこんなにも追い詰めて何がしたいんだ！！俺は彼女を優しく抱きしめた。

｢クラスティナ様、貴女は従者に酷いことはしていません。貴女に従者が辞める原因はありません！｣
｢ふぅ、う、うわぁん！わ、私が、ヒック、私が悪かった、ん、だと、おもって、何も、言わなく、って、でも、みんなっ、やめちゃって、悲し、かったぁ｣

彼女の本音は、子供にさせるには悲しい決断を下してしまったことを物語っていた……。