勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

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第14話 元勇者パーティに忍び寄る影

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 カーライルがフランに連行されて、宿に泊まらされていた頃、魔物から逃げ出して村に辿り着いた元勇者パーティ一行はというと……。

「ルイン様ぁ」
「ふっ、そんなに急くな。ちゃんと相手をしてやるからよ」
「私もお願いしますぅ」

「……またルインが村の娘を騙してたらし込んでるのね……はぁ、私も若くて良い男がいたら……この村じゃ芋臭い男ばかりで困るわ」
「ルインの好色具合にも困ったものだが、ミオリムの方も似たようなものだな……」
「二人共、変態なのよ」

 村長に宿を融通させ、ルインの口先で騙した村娘を何人か連れ込んで楽しんでいる所だった。
 部屋から漏れ聞こえて来る声を聞きながら、ミオリム他二人は溜め息を吐いている。
 ミオリムの溜め息だけは、違う意味だったが。

「魔物の討伐には失敗したけれど、明日からはどうするの?」
「俺に聞くな。どうせルインが村長を騙して、金をせしめた後はこの村から離れるんだろう?」
「ルインが勇者なわけ無いのになのよ。騙される村長もかわいそうなのよ」
「そう思うなら、マイア……貴女が村長に告げ口するか、ルインを注意しなさいよ」
「嫌なのよ。そんな事したらルインに殺されるなのよ」

 この村では、ルインが勇者で、パーティを率いていると伝えている。
 村長は素朴な人柄なのだが、そのためにルインに騙され利用されているのだ。

「はぁ……まぁ良いわ。今日は治癒を使い過ぎて疲れたから、もう休むわ」
「そろそろルインの方も落ち着いたようだしの。俺も休むとするか」
「走り回って疲れたなのよ。寝るなのよ」

 ルインの部屋から声が聞こえなくなって、部屋の外へ集まっていた三人は、それぞれ村長に用意してもらった部屋へと帰って行った。
 村全体がルインに騙されながらも、それに気付く者は誰一人としていないため、食い物にされている状況だ。
 もちろん、カーライルがここに居ればこんな事は許さなかっただろうが、魔王国にいるカーライルがこの事を知る事は無い。


 夜も更けた頃、村の外れにて……。

「ここか?」
「あぁ、ここに勇者を追放したという馬鹿者が潜伏してるらしい」
「村の者達は騙されている様子だな」
「かわいそうに……ルインとかいう男、口だけは達者なようだ」
「口だけでどうにかできるのも、今日までだろう。国王様を怒らせた罪は重い」
「まぁ、勇者が追放された挙句、国外に行ってしまったからな。……怒るのも仕方ないだろう」
「王国の最終手段である勇者が、だからな。国王様は何が何でも止めたかったようだが……勇者だから……どれだけの兵士を差し向けても適わんだろう」
「それで止められなかった腹いせが、追放した奴らへ……か」
「同情はできないがな」
「おい、世間話はそこまでだ。宿の明かりが消えた。行くぞ!」
「「「はっ!」」」

 一人の男の合図で、村の片隅に潜んでいた影が動き出す。
 複数の影は、ルイン達が泊まっている宿を目指して動いている。
 この時ルイン達は、何も知らずにこれまで同様、贅沢な暮らしと我が儘が通ると考えて寝ているだけだ。
 不穏な影が近づいている事を、夢にも思っていない事だろう。

 村にある一軒だけの宿、そこの壁に張り付いた無数の影が中の様子を窺う。
 中からは何も音はしない……かすかに聞こえるのは、元勇者パーティの誰かが漏らす寝息だけだ。
 あまり裕福では無い村だから、宿も安普請で漏れ聞こえてくるのだろう。
 その寝息を聞いた影達が、一人の男が送った合図で一斉に動き出す。
 窓から、入り口から、様々な場所から影は宿の中に侵入し、中にいる人物たちの退路を塞ぐ。

 ……ルイン達、元勇者パーティの破滅の足音がすぐそこまで近づいて来ていた――。


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