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無意識に近い事をしている者もいるらしい

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「ルギネなんかは、持った瞬間に倒れたらしいな。リク以外……まぁ、エルフなら多少持っていられるのかもしれんが、魔力が勝手に吸われると考えたら呪われていると言ってもおかしくないだろう」

 うーん、俺が使っている剣にはお世話になっているというか、役立ってもらっているから、呪われているとかあまり思いたくないんだけど……。
 でも確かに、俺以外の人が持ったら魔力がなくなって倒れる剣とか、呪われていると言われてもおかしくないのか。
 剣身も真っ黒だし、邪悪な剣とか魔剣とか……あまりいい方向ではないようにも見えるし。
 いや、魔法具の剣って意味では魔剣で間違いないんだけどね。

「リクの呪われた剣みたいに、勝手に魔力が吸われる事はないの。武器を持った本人が、その意志で魔力を這わせるの。小さな魔法を使う程の魔力も使わないから、枯渇とかの危険もほとんどないの」
「ユノまで呪われた剣って……まぁいいけど。成る程ね、任意に魔力を這わせる事で、俺の剣と近い性質の武器になるって事かぁ」
「リクさんの剣と同じって事は……魔物を軽々と斬るとか、そんな感じよね?」
「刃こぼれもないし、斬れ味はかなり鋭いと思う。まぁなんでも斬れるわけじゃないはずだけど、少なくともワイバーンくらいなら簡単に斬れるね」
「ワイバーンが簡単にという時点で、恐ろしいのだがな。……そこまでではないにしろ、似た性質という事は刃こぼれが少なく、斬れ味が通常よりも鋭くなるわけか……」
「魔物もそうだけど、兵士でも鎧を着ていたりして硬かったりするの。だから、次善の一手を使えば、それなりに有効な攻撃ができるはずなの」

 斬る事が全てじゃないとは思うけど、ユノが言う通りならかなり有効な手だと思う。
 刃こぼれしないだけでも、武器を長く使う事ができるし板金鎧……プレートアーマーでも斬れるのなら、兵士さん達がかなり楽になるはずだ。
 どこかで聞いた話だけど、通常のプレートアーマーに対して特に魔法効果のない剣だと、関節とか隙間を狙うか衝撃を与えるか……鈍器のような物を使って内部の体にダメージを与える方法が有効だとか。
 基本的に厚めの金属で守られている部分に、直接剣を通す事はできないらしいからね。

「実際、どれだけの効果があるんだ?」
「それは、人によって違うの。魔力を剣に這わせる密度とか量とか……」
「ふむ……魔法が使える者と使えない者では、多少差がでそうだな」
「多分。でも、お爺ちゃんやおじさんのように、無意識にでも魔力を使っている人もいるから、一概にそうだとは言えないの」
「おじさん?」
「ヴェンツェルおじさん」
「あぁ、ヴェンツェルさんか……って、あの人も魔力を使っていたのか。いや、ある意味納得だけど」

 ソフィーが言うように、魔力の扱いに慣れているかとか、色々な要素で別れてしまいそうな事でもあるね。
 ユノが言うには、魔法が使えなくても無意識に使っている人もいるそうだから、そういう人は意識的に使う事を考えるだけで魔法が使えなくてもいいらしいけど。
 エアラハールさんはともかく、ユノが言うおじさんが誰かわからなくて聞いたら、ヴェンツェルさんの事だった。
 ヴェンツェルさん、溢れる筋肉が目立ってしまいがちだけど、決して力任せに剣を振るっているわけじゃないからね……エアラハールさんの訓練を受けてから、ようやく気付いたけど。

 殴り飛ばしたり、見た目も相俟って、オーガよりもパワータイプに見えるけど……。
 ツヴァイの地下研究所の時、オーガや人間相手に戦っていた様子からしても、ユノが言う次善の一手に近い事はしていてもおかしくない。
 まぁ、将軍という軍のトップにいるから上等な剣を使っているんだろうけど……高い地位にいる人が、そこらで安く売っているような剣を使っているわけないし、エアラハールさんにボロボロの剣を使えと言われた俺とは違うだろう。

「今、フィネが訓練場で兵士達を相手に練習しているの!」
「フィネさんが? そういえば部屋にいると思っていたけど、いないね?」
「うん。フィネは私やお爺ちゃんが考えているのを見ているし、教えたからやり方はわかっているの」

 フィネさんが部屋にいない理由はそれだったのか。
 ユノと一緒にいたはずなのに、今部屋の中にいないからどこに行ったのかと思っていたけど。

「……だが、攻撃の手段が強化されても、防御面がな。やはり、生存率を上げると考えればそちらも何とかしたいところだ」
「対兵士なら、これまでと同じでもこちらの攻撃力が上がれば、生存率を上げられるだろうけど……魔物は人間よりも強力な魔法を使う事だってあるし、強力な魔物だったら鎧が役に立たない事もあるわ」

 ユノとエアラハールさんが考えた、最善の一手の劣化版……劣化と言うと役に立たないように感じてしまうけど、要は誰にでも練習すれば使えるようにした、攻撃力を高める手段といったものだ。
 その方法、次善の一手が使えたとしても、ソフィーとモニカさんが話しているように、魔物相手にはどうなのか……。
 攻撃は最大の防御という言葉もあるくらいだし、向こうからの攻撃を受ける前に倒せればいいんだろうけど、絶対にそうできるとは限らない。
 魔物は人間より生命力が高いのが多いし、腕を斬られても残っている腕や足、魔法も含めて別の方法で攻撃してくるかもしれないからね。

 戦争ともなれば、革の鎧ではなく兵士さん達はプレートアーマーを身に着ける事が多いし、そもそも普段でも付けている人が多いけど……それでも魔物の攻撃に耐えられる物ではない。
 低ランクの魔物ならまだしも、高ランクの魔物を大量に相手にした場合、乱戦になる事も考えられるから、防御力を高めるのは重要だ。
 ……新兵さん達に作られた、ワイバーン製の鎧とかがあれば話は別だろうけど。

「まずは攻撃なの。防御は個人の技術もあるし……鎧の質にもよるの。リクみたいに魔力に溢れていたら、そこらの服でも剣を通さなくなるんだけど……」
「さすがに、服や鎧に魔力を纏わせるのは難しいか」
「できなくはないの。でも、武器と一緒にすると習熟が難しくなるの。それに、武器は小さな面積だから……」

 魔力を這わせて強化する部分が小さいから、練習も少なくて済むって事か。
 全身に魔力をとなると、それなりの魔力量が必要だろうし、それは望めないと……。
 まぁ、部分的にでもと思ったけど、結局それもユノが言うように習熟が難しいだろう。
 それこそ、準備期間に数年とかければある程度使える人が増えるだろうけど、いつ戦争になるかわからない状況なら、他の事を急いで準備した方が良さそうだね。

「とにかく、フィネさんの練習を見に行ってみようか? 話を聞いただけじゃなく実際に見た方が良さそうだし」
「そうだな。まぁ、リクには必要なさそうだが、私やモニカは参考になるだろう」
「というより、私達もできるようになった方がいいわよね。――でもリクさん、クランの事に関してはどうするの?」


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