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調査に参加するリク

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 物珍しい物を発見しては、あちこち行こうとするユノを、フィネさんが手を引いて離れ過ぎないように注意してくれている。
 それを見ている俺に、苦笑しながら話すモニカさん。
 その話は聞いていなかったけど、ルジナウムでユノを任せていた時そんな事があったんだ……エアラハールさんも途中から一緒にいたし、モニカさんは大変だったのかもしれない。


「結構、人がいるね」
「そうね。いくら討伐しても、魔物が減らないから……ここらでは、少し周辺を見ると冒険者を見かける事が多いわ」
「すっかり、稼ぎ場のようになってしまっているな。まぁ、魔物も弱いから、低ランクの冒険者が稼ぎつつ、経験を積むのにもちょうどいいのだろう」
「そう、みたいだね」

 センテを出て、南に少し進んだあたりにある草原。
 そこでは、周辺に目を向けると遠目にいくつかのグループに分かれている、冒険者さん達が見えた。
 さすがにまだ街に近く、冒険者さん同士の距離が近いうえに魔物は見かけない。
 地面に座っていたり、何か食べたりしているらしいグループを見かける……。

「もしかして、ここ休憩所みたいになってる?」
「そのようなものだな。魔物が来ないとも限らないが、周辺に人が多く、多少油断してもすぐに別の冒険者が助けに入れる距離だ。見晴らしがいいから、近付いて来る魔物もすぐにわかるし……危険が少ないため、一旦休息を取ったり、魔物を討伐したりした後の素材の剥ぎ取りなどを行ったりしているのを見かけるな」
「元々、魔物が少ない場所でもあったから、よくここらで冒険者が休憩してはいたらしいの。だから、今でもこうして多くの冒険者が休んでいるわ。まぁ、川とかもないし、本当に少し休むくらいだけどね」
「ふーん……」

 ユノが別の冒険者の所へ、何を思ったか突撃しようとしているのをフィネさんが止めていたり、そんな様子を眺めながらも周辺にいる冒険者さん達を少しだけ観察。
 ソフィーやモニカさんの話を聞くに、魔物討伐の合間に休憩をとる場所になっているみたいだね。
 確かに、街の外なのに周囲の雰囲気は和やかだ……魔物がいるような状況なら、もっと緊迫しているはず。
 グループごとに別れているとはいえ、人が多く集まっているので弱い魔物は近付きづらいし、もし来ても協力してなんとかなるんだろう。

「とりあえず、このまま南へ行くわね。私達はまだ街から出て来たばかりだし、休憩しなくてもいいから」
「そうだな。若干一名、休憩した方がいい人もいるが……」
「あっちはなにしてるの? 魔物っぽい何かを、掴んでいるの」
「あれは、きっと討伐した魔物から、素材などを剥ぎ取っているのでしょう。って、ユノちゃん! 走って行かないで! 私達の目的は調査だから!」
「あー、あはははは……フィネさん大変そうだけど、大丈夫かな?」
「まぁ、昨日も一昨日も、似たような感じだったわ。さすがに、そろそろ私達も助けた方がいいでしょうけど」
「とは言っても、本格的な調査になると、ユノはおとなしくなってくれるからな」

 冒険者さん達の休息場を抜けて、さらに南へ向かう。
 途中、別の冒険者さんがいる場所に、好奇心から突撃しようとしているユノを止めながらだけど。
 エルフの村で、アルセイス様と会った後くらいから、さらに見た目相応の行動をする事が増えた気がするなぁ……まぁ、俺やエルサ、姉さん以外にも自分の素性を話して、遠慮がなくなったからかもしれない。
 ルジナウムの時も、迷子になりかけたらしいから、本当にこれまで遠慮があったのかは謎だけども。

 そんなこんなで、フィネさんばかりに任せて疲れてはいけないと、俺達も協力して他の冒険者さん達の方へ突撃しようとするユノを止めながら、街から離れていく。
 しばらく歩いた場所で、周囲を見渡しながら少し緊張した雰囲気を出すソフィーが、足を止めた。

「この辺りから、魔物を警戒しておいた方がいいな。目撃や戦闘する事の多い場所になる」
「魔物が潜んでいたりもするから、要注意ね」
「成る程……んー、今のところは、何もいないみたいだね」
「リク様の探知魔法でしたか。それがあると、警戒が楽になりますね」

 周辺を注意深く見ながら話すソフィーに、モニカさんも頷く。
 先程の休息場と違って、草原ではあるんだけどそこかしこに大きな木があって、モニカさんが言うように魔物が潜みやすい場所になっている。
 二人の言葉を聞きながら、探知魔法で周辺を窺ってみたけど、近くには魔物がいないみたいだ。
 遠くまで見ようにも木に遮られてしまうため、知恵のある魔物だと木の陰に隠れながら接近する事もありそうだ……。

「ん? あれは……昨日は、あんな所にはなかったはずだが」
「そうね。リクさん、あれを……」
「あれ、ウルフかな? うわぁ……」

 魔物の警戒もあるんだろうけど、周囲を注意深く観察しているソフィーが、早速何かを見つけたようで、モニカさんと一緒に少し歩いた先の木の陰を示される。
 近付きながら、その場所を確認すると……ウルフと思われる魔物の死骸が、色々と色々な事になっていて思わず声が漏れた。
 なんというか、体が斬られて真っ二つ……とかならまだしも、足の一部、顔や胴体の一部が食いちぎられていて、そこかしこに中身がぶちまけられているという……ね。

「首に、牙の痕があるな。おそらく、別の魔物に咬み付かれてやられたんだろう」
「……躊躇いもなく調べるなぁ。まぁ、そう言う俺も魔物と戦ってきて、それなりに慣れたけど」

 ウルフの死骸の傍にしゃがみ込み、調べ始めるソフィー。
 和やかな雰囲気だった休息場から一転、急にグロテスクな光景が目に入って、ちょっとだけ躊躇してしまったけど……それなりに魔物と戦ってきた経験から、慣れている。
 というか、これまでも散々俺自身で魔物を真っ二つにしたり、討伐証明部位だなんだと、切り取ったりしていたからね、今更でもある。

「とにかく、これは昨日なかったって事は、今までの間にここに持って来られたって事だよね」
「そうなるな」
「……やはり、周辺には痕跡がありませんね。人に踏まれた草花などもありますが、このウルフには向いていません。おそらく、他の冒険者達が近くを通った跡でしょう」

 死骸を調べるソフィーとは別に、フィネさんとモニカさんは周辺の様子を調べてくれている。
 木の陰ではあるけど、周辺には草花が生えているためそれらを踏まずに、ここまで持って来られるとは思えない。
 踏まれた草花はウルフから離れているし、死骸を見つけたかどうかはわからないけど、ただ近くを通りがかっただけのようだ。

「GI、GIGI!」
「ん? 魔物……ゴブリンだね」
「そのようだ。どうする?」

 人ならざる声が、少し離れた場所から聞こえて来る。
 そちらに目を向けてみると、こちらに近付いて来るゴブリンが三体……死骸を調べていたソフィーが、俺に窺う。

「邪魔されたくないし、ちゃっちゃと片付けよう」
「それならば、私が」
「私も行くのー」
「うん、お願いするよ」

 腰にあるぼろぼろの剣に手を掛ける俺に対し、フィネさんとユノがゴブリン討伐に立候補。
 周辺には他に魔物もいなさそうだし、三体のゴブリンなら大丈夫だろうと任せる事にした――。


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