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空の異変を感じるリク

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「なんだろう、あれ……?」

 モニカさん達がいるはずの方に向かって、魔物達を斬りながら突き進んでいる時、ふと空での異変に気付いた。
 ……魔物を倒す事に夢中になって、空の変化がはっきりと目で見えるようになるまで気付かなかったのアは、ちょっと楽しくなっていたからだったりする。
 魔物を倒す事がじゃなくて、魔力の調整で伸び縮みする剣身がだけどね。
 白く輝く剣、魔力吸収モードが基本みたいだけど、柄から魔力を流し込むと剣身が伸び縮みする放出モードに切り替わる。

 魔物を斬って魔力を吸収していても、柄から流れて来る魔力を押し込むようにこちらから流してやると強制的に切り替わる事がわかった。
 慣れが必要だし、放出モードにすると剣身の伸縮以外に以前の黒い剣身の時よりも多くの魔力を持っていかれるけど、使い勝手は悪くなさそう。
 まぁ、魔力量が多い人じゃないと扱えないだろうというのは、変わっていないんだけど。
 それはともかくとして、空での異変についでだ。

「霧? ゴースト……にしては大きいというか、全部繋がっているみたいだから、違うだろうし……」

 近寄って来るオルトスの二つある首を斬り落とし、魔力吸収モードでガルグイユが放ったらしき魔法を打ち払って吸収消滅させながら空を見る。
 以前……エルフの村を襲撃した魔物の中にいた、ゴーストという霊体っぽいけどただの煙の塊みたいな魔物。
 一瞬そのゴーストを思い浮かべたけど、よく見ると違う。
 煙というよりは黒く濃い霧で、陽の光を遮っている。

 ゴーストのように一定の大きさで、一つ一つが煙の塊として独立しているわけではなく、空を覆いつくすように広がっている事だ……霧か煙かの違いも少しはあるけど、正直なところ下から見上げている俺からだとなんとなく違うくらいしかわからない。
 霧が広がる範囲は、ヒュドラーの体や首を合わせたよりも大きく、見上げる俺の視界一杯に広がっている。

「ん? こっちにも、かな?」

 よく見ると、その霧は地上から空へと向かっているようで、ちらほらと魔物の隙間からゆっくり立ち上っているようにも見える。
 さらに、少しずつ広がっている霧全体が空へと向かっているようで、見上げる俺から離れて行っているようでもあった

「何かの魔法……? いや、あの霧が魔法を使っている?」

 見ていると、下にいる俺ではなくモニカさん達がいると思われる方に向かって、いくつかの魔法を放っているようだ。
 霧その物が何者かの魔法、という事ではないみたいだ……あれが魔物、なのかな?
 放った先がどうなっているのかは魔物達に遮られて見えないし、周囲の魔物の声などにかき消されて音は聞こえて来ないけど……。

「これは、放っておくとまずそうだね……とりあえず、さっさとモニカさん達の所へ向かおう! せやぁっ!」

 放たれた魔法の威力……着弾した所を見ていないから断言はできないけど、ガルグイユが使って来る魔法より威力が高そうだ。
 モニカさん達なら、なんとか対処しているかもしれないけど、それでも連発されると危険だ。
 前後左右から襲い掛かって来る魔物を斬り伏せ、モニカさん達がいる方へと急いだ。


「あれは……盾隊が来てくれていたんだ……!」

 キマイラを斬り伏せ、オルトスに剣を突き刺して魔力を吸収しつつ、ガルグイユに向かって放り捨てて破壊する。
 名前も知らない始めて見る魔物を真っ二つに斬る傍ら、マンティコラースの顔面に拳を叩き込んで破裂させつつ体を掴んで一回転、近寄る魔物を弾き飛ばす。
 そうこうしていると、ようやく見えてきたモニカさん達の姿……ではなく、継ぎ接ぎの青い模様のようになっている大きな壁が見えた。
 いや、壁じゃなく盾だね。

 青いのは、急いで張り付けたワイバーンの皮だろう。
 タワーシールドと呼ばれるそれは盾に長く大きく、横一列に並んでいる。
 そのため盾の向こう側を見る事はできない。

「いや、隙間が少し開いているから、ちょっとだけ見えるけどあまり状況はわからないか」

 まだ数十メートルくらいの距離があるので、いくつか隙間があるものの、やっぱり向こうの様子はわからない……兵士さんが必死で盾を構えているのは見えたけど。
 マックスさんが指揮しているわけじゃないから、上手く整列できなかったのかな? と一瞬考えたけど違った。
 隙間がある所には、地面が抉れている様子が見て取れる。
 いくら盾が頑丈でも、地中深くに埋めるわけにはいかないため、地面を爆発させるか何かで吹き飛ばされたんだろう……。

「やっているのは、あの霧か……って、あれはいけない!」

 ヒュドラ―を除き、魔物達から放たれる魔法の中ではこれまで一番ガルグイユの魔法が強かったけど、あれが地面に激突したとして、盾ごと吹き飛ばすような威力はなかった。
 となるとそれ以上の威力の魔法……空に広がる霧が放っている魔法しかありえないね。
 そう思って睨むように空を見上げた時、危険な光をこの目で捉えた。
 威力はガルグイユ以上なのはこれまで通り、でもその数が多い!

 同時に魔法を放てるのは、ガルグイユのような特殊な魔物を除けばほぼいない……というか、ドラゴンの魔法を使える俺やエルサを除けば、魔物も含めて今の魔法体系では不可能とも言えるらしい。
 魔法の効果を二つ以上含ませるならともかく、別の魔法を同時に発動する事はできない、と考えればいいか。
 ともかく、あの霧もそれは例外ではないようで、魔物達を斬り伏せながら観察していたけど、同時発動ではなく連続発動………一秒にも満たない時間差で魔法を発動させているようだった。
 おそらく、ある程度魔法をストックさせておいて、一気に連続発動するんだろう。

 一度連発が止むと、少しだけ溜めの時間があったから。
 そんな霧の魔物がこれまで以上に溜めに時間をかけ、無数の魔法を放とうとしている……。
 狙いは……上空から盾の向こう側に向かってだ!
 盾にならまだしも、直接兵士さん達に当てようとしているんだろう、だから空に上がって行っていたのかもしれない。

「ギ……ギ……ギ……」

 霧の魔物のものなのか、他の魔物とは違う声のような音がする。
 その瞬間、足に力を込めて一気に並ぶ盾の方に走り込み、ジャンプ!

「モニカさんや皆は……いた!」

 盾を越える高さに飛び上がり、視線を巡らせると結構後ろの方にモニカさん達がいるのを発見。
 立っているようだからまだ無事みたいだ……良かった。
 さらに少し離れた場所で、信号機さん達もといリリフラワーの皆が転がっているけど、何があったんだろう? もしかしたら、応援に駆けつけてくれて協力していたのかもね……動いてはいるので生きているのは間違いないようだ。
 さて、軽く皆の無事を確認したところで……体を空中で捻り、霧の魔物へと視線を向ける。

 霧の魔物には、一つだけ数メートルはありそうな目が付いており、異様さを醸し出している。
 その目は俺をはっきりと捉えていて、完全に目が合っているのが気持ち悪い。
 人間の物とは違うのを示すように、虚ろな感じでほぼ白目がない……というか、白い部分は霧の集まっていない場所なだけのようだ。
 ただ形ははっきりとしていて、それが目だって言う事がわかる……魔物にとっては目とは違い器官の役割をしているのかもしれないけど――。


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