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精鋭隊の突撃
しおりを挟む「……出るぞっ!!」
「リク様、申し訳ございませんっ!」
「行きますよぉ~!」
「ぬおぉ!!」
「行きます!」
「ぬぅ!!」
何度目かの大量の魔法が結界に到着する頃合いを見計らい、号令を出したシュットラウル様を先頭に、アマリーラさん、リネルトさん、父さん、ヤンさん、元ギルドマスターが結界に向けて駆け出す。
その後ろから、侯爵軍の大隊長さん達を筆頭に、隊長格の人達も駆け出した。
精鋭で固めた突撃隊は予定ではアマリーラさんを先頭にして、一番結界が弱っている部分を見仕えられるのであれば見つけ、そこへ集中攻撃を加えるつもいだった。
アマリーラさんが本当かどうかはわからないけど、感覚的にリクさんの力の片鱗を感じて判断できると言っていたから……治癒魔法をかけられた時に、リクさんの魔力を全身で覚えたかららしいけど、本当かしら?
一応、結界に張り付いていた時はともかく、こういう時は真面目に取り組んでくれるとリネルトさんやシュットラウル様のフォローもあって、任せる事になったらしいわ。
ただ予定は予定、今はシュットラウル様が先頭になり、マルクスさんのおかげで結界が弱っている部分はいくつか視覚的にわかるようになっているわね……ヒビという現象で。
あとは、全力で精鋭たちがそこへ向けて攻撃するだけ。
その中でも一番弱っているはずの場所、マルクスさんがマインゴーシュを突き刺した所へは、予定通りアマリーラさんが行くみたいね……駆けながら、シュットラウル様が少し横にズレたのがわかった。
「威力だけで言えば、先程の次善隊よりもありそうね……」
「魔法鎧を身に付けた三人の迫力が特にな。侯爵様やアマリーラさん達も負けれはいないが」
さすが精鋭というべきか、突進するその勢いだけで数百人からなる次善隊の突撃よりも、威力のようなものを感じるわね。
ソフィーも言っているように、魔法鎧を身に付けたせいで頭二つか三つ……それ以上に突出した大きさの父さん達三人が、その勢いと威力を増しているように見えた。
「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」
先頭のシュットラウルさんが、まずレイピアを結界に突きこみ、後押しするように隊長格の人達が結界へと殺到。
ヒビが入っている部分を重点的に狙い、何枚かの結界が割れたのが見えた……さすがね。
さらにアマリーラさんがマインゴーシュが刺さっていた場所に、ロングソードで斬り込む……魔物と戦う時、軽々と振り回していた大剣はどうやら、負傷した時に置いて来てしまったらしく、今は長剣、ロングソードを持っているわね。
リネルトさんがアマリーラさんを援護するように、素早く動き回り、何度も何度もアマリーラさんが斬り込んだ場所の周辺に、次善の一手で斬り付けていた。
重点的に狙う場所には強力な一撃。
それでいてその周辺はシュットラウル様を始めとした、隊長格の人達から修復をさせる間を与えないように分散した攻撃。
分散しているからとただの援護ではなく、それらも確実に結界の一部を割り、削っていた。
マルクスさんが淹れたヒビのおかげも大きいし、皆が全力で当たっているのも大きい。
「アマリーラ殿!!」
「おう!!」
決めていたのか、父さんが大きな声を上げた瞬間、横に大きく飛ぶアマリーラさん。
そこへ持っている剣……ではなく盾を構えての父さんが体当たり。
剣ではなく盾ってところが父さんらしいわね。
その体当たりにより、さらに周辺に広がるヒビが大きくなり、さらに深くまで達しているように見えるわ。
父さんが広げたヒビの中心、魔法鎧の見た目からは想像が付かない程の速さで飛びのいた父さんの後に、ヤンさんがガントレットから伸びる二つの刃を合わせて突き込んだ!
ヤンさんや元ギルドマスター、二人の持つ武器はヒュドラーの足止めをするために急遽改良した魔法具。
ヒュドラーにすら食い込ませる事の出来る武器は、マルクスさんのマインゴーシュよりもさらに深く入り込む……。
「っっ!!」
「折った!? まさか、マルクスさんのを見て!?」
「多分違うの。最初からそうするつもりだったみたいなの」
少し深めに突きこまれたヤンさんの武器、それをねじってその場で二つとも折った。
驚く私に、ユノちゃんから冷静な声。
それを肯定するかのように、飛びのいたヤンさんの代わりに元ギルドマスターが、大きなハンマーを振り上げて駆ける勢いすら乗せて撃ち込む!!
「刃が中に入り込んだのだわ。ヒビも広がって……中々やるのだわ」
「結界はガラスみたいな性質なの。だから、大きく割る事を狙うより、あぁして中に食い込ませた方が結果的に大きく割れるの」
「な、成る程……」
マルクスさんの事がなくても、最初からそうする事を話し合って決めていたんだろう。
アマリーラさんが弱っている部分を見つけ、攻撃。
リネルトさんは強い一撃よりも、分散した攻撃を得意とするから援護として周辺への攻撃。
そして、父さんの体当たりで狙う箇所を確定させて、ヤンさんが斬り込む。
最後に元ギルドマスターが、斬り込んだヤンさんの武器を押し込む……と。
おそらくだけど、さっきマルクスさんがやったような現象も手伝っているんだと思うわ。
ヤンさんは次善の一手を使えないけれど、あの武器は魔法具で、当然ヤンさんの魔力が込められていたはずだから。
じゃないと、そもそも結界に突き込む事ができなかったと思うわ。
そして、元ギルドマスターさんのハンマー……あれも魔法具だったはずだけれど、それで霧散しそうになった魔力ごと打ち付けて……と。
貫通力をヤンさんの武器の刃が、さらにハンマーでとてつもない衝撃を加えた事で、外部と内部からヒビを広げられた、のかしらね。
「刃が突き込めるかは、おそらく賭けだったのだわ。だけど、マルクスが突き刺した事で……だわ」
「よりやりやすく、流れを確定させたってわけね。マルクスさんもそうだけど、父さんも皆もすごいわ」
偉大な父の背中……いえ、私達より上の世代達の偉大さを、今実感しているわ……さすが元Bランク冒険者や、Aランク相当の実力者達ね、隊長格の人達は私達と同じCランクからBランク相当だと思うけれど。
……でも上の世代っていうのはアマリーラさんとリネルトさんには、ちょっと失礼かしら。
あの二人、今いくつなんだろう?
見た目は私やリクさんより、少し上っぽいけれど。
「私達も、そろそろだな……」
「えぇ。父さん達には負けていられないわ」
シュットラウル様達による精鋭隊の突撃。
そして最後にダメ押しとして、私達が突撃する。
父さん達はそれまで攻撃を続け、次善隊は転身して同じく突撃を繰り返す。
到着した私達が、エルサちゃんとも協力して結界をこじ開ける……これが、結界を破るまでの一連の流れになっているわ。
「ソフィー、フィネさん……絶対にリクさんの所に行くわよ」
視線は攻撃を続ける皆を見据えたまま、決意を込めて二人へと声を掛けた。
これだけの協力を得たんだもの、絶対に結界を破るし、必ず繋がりとリクさんを取り戻して見せるわ――。
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