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強い理由

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「そうなの。今は……王都に初めて行った時くらい? だと思うの」
「それでも、十分強いと思うけど……」

 これには、さっき俺のやる事が過激というのに頷いていたモニカさん達も、再び頷いていた。
 特にモニカさんとソフィーは、ユノを間近で見て一緒に戦ってきたからね、王都での戦いも経験しているし。
 身体能力が後退、なんて言い方をしていたけど、あの時で既に十分人間離れした強さを見せていたからね。

 俺はともかく、他に誰が魔物の密集する場所に突っ込んで暴れて、無傷で生還できるのか……。
 四方八方を囲まれる場所にも入り込んでいたのに。

「まだまだなの。今は多分、最善の一手が使えないの。戦えば戦う程、体の動かし方と魂の適合が進んでいくのだけど、なの」
「リクにわかりやすく言えば、レベルアップってところかしら。強くなるのではなく、力を取り戻す方が近いのだけれどね」
「レベルアップ……」

 急にゲーム的になったね……言い方がそうなだけだけれど。
 要は、戦えば経験値が手に入り、それによってレベルアップしていけば魂が適合して、身体能力が上がるってわけだね。
 その後も少し話を聞いてみると、戦闘技術なんかは神様だからそれを体に入り込む前に覚えさせているとかなんとか。
 モニカさん達は完全に首を傾げて、ハテナマークを浮かべていたけど……パソコンのインストールに近いと言っていた。

 剣を扱う、だけじゃなくて達人級の技を使えるように技術をソフトとして、入れ込むんだとか。
 あらゆる戦闘技術を覚える事で、常人にはできない達人級どころかそれ以上の強さになるとかなんとか……。
 ただし、パソコンでもソフトを使うためのスペック要件というのがあるように、それらの技術を使うためには身体能力がそれ相応になければいけない。
 例えば今なら、最善の一手は技術として覚えていても、体がそれを実行するための動きができないってわけだね。

 あくまでも、俺にわかるように言い方を変えているだけで、ユノもロジーナもパソコンとか機械的な何かではないみたいだけど。
 神様ってすごいな……なんて思っていたら、それができるのはユノとロジーナだけとの事。
 まぁ他の世界の神様は別だけど、少なくともこの世界にいる神様はそうなんだとか。
 エルフを創ったアルセイス様とかは、人間の体に入り込むとかはできるとしても、最初から技術を習得した状態ではないらしい。

 人間以上の能力を発揮する事もできなくはないけど、そのためにはそれ相応の訓練や努力が必要と。
 創造神のユノは、それらの技術を創造して体に覚えさせ、破壊神のロジーナは、破壊の技術として体に覚えさせているからとか……正直ここらの話は、全部理解できなかったけど。

「とりあえず、ユノやロジーナが尋常じゃない強さの理由が、なんとなくわかったよ」
「リクには言われたくないわね。まぁでも、それも自分達が司る世界だからこそできるのよ。神の権能が届く場所って事ね」

 他の世界にまで、別の神々がいる? 所までは力が及ばないって事かな。
 そういえば、ユノが地球に遊びに来ていた時には完全に他の人間と同等だったようだから、限定的ではあるんだろうね。
 こちらでのユノやロジーナを見ていると、突っ込んできたトラックなんて簡単に避けられそうだし。

「その……少しいいか? リク。それにユノ達も」
「うん、どうしたのソフィー?」

 大体の話し……ユノやロジーナの秘密、と言えるのかはわからないけど、強さの理由が判明したところで、おずおずと手を挙げたのは食事が終わった様子のソフィー。
 話し込んでいたけど、俺も食べないとね。
 ソフィーに顔を向けて、食べかけになっていた料理に手を付けながら聞き返すけど、何やらフィネさんやフィリーナもソフィーと同じく真剣な目をしていた。
 その視線は、俺……ではなくロジーナに向けられている。

「先程からの話を聞いていたら、ロジーナ……殿? は、ユノと同じような存在に思えたのだが……?」
「あ、そういえばロジーナの事を、まだ詳しく話していなかったね」
「そういえばそうね。私の事は特に伝えていなかったわ。まぁ、私は別に自分の事を語る気はないんだけれど……今ではこうして、人間になっているわけだし」

 ソフィーの質問に、フィネさんとフィリーナも頷いた……疑問は同じって事だろう。
 言われて思い出したけど、紹介というか詳細な事情に関しては落ち着いてからと思っていたため、ロジーナの事はまだ皆に話していなかったね。
 元破壊神……今もかもしれないけど、とりあえず人間になってしまった破壊神のロジーナは、ユノと同等の力があるというだけで済ませていた。

 今思うと、見た目には幼女としか見えないロジーナが、ヒュドラーの足止めができるなんてシュットラウルさんを始め、皆はよく信じてくれたと思う。
 ヒュドラーが来る前、兵士さん達に協力して戦っていた実績があったからかもしれないけど。
 
「えっとロジーナは……ってあれ? モニカさんは特に気にしていない様子だけど」
「私は、なんとなくね。ユノちゃん達の話や、リクさんの話の端々でそれっぽい事を言っていたから」

 はっきりとは言っていなかったと思うけど、色々話していたから、そこから察してくれたんだろう。
 どういう存在か、まではわからなくともユノと同様の存在なのではないか? くらいはわかっていたのかもしれない。
 ユノと協力してっていう部分もあるし、ロジーナはヒュドラーにも向かっていっていたんだから。
 それに関しては、これまでの話と状況からソフィー達も多少は察しているのかもしれないけど、確証はないってとこかな。

「ロジーナ、一応確認するけど……いいかな?」

 すでに話そうとしていた事ではあるけど、あまり広く言いふらす事でもない気がするので、とりあえず確認。
 ここにいるソフィー達なら信用できるし、誰にでも言いふらすような人達でもないうえ、ユノの事も知っていて、ある程度察しているみたいだけど。
 まぁ、創造神とか破壊神とか、そこらの人に言っても信じてくれる人は多くないと思うけどね。
 他に、姉さんはもちろんとして、シュットラウルさんやマルクスさんにも話しておいた方がいいかな。

 今回の魔物襲撃や、レッタさんの事もあるし。
 アマリーラさんとリネルトさんは……信用できる人達なのは間違いないけど、リネルトさんはともかくとして、アマリーラさんの俺への信奉度が上がってしまう気がして、話すのは躊躇われる。
 とりあえず、獣人組は様子を見てにしよう。
 シュットラウルさんに話した時に、どうするか聞いてみるのもいいかもしれない。

 そういえば、神様の話題でふと思ったけど、この世界では信仰ってどうなっているんだろう?
 エルフはアルセイス様に対して、獣人もアマリーラさん達があるような事を言っていたんだけど、アテトリア王国ではそういった話を一切聞かない。
 施設や集会なども聞かないし……俺が知らないだけかもしれないけど。
 ただ、なんとなく神様という存在を信じていない、というわけでもないような気がする。

 まぁだからといって特別敬ったり、信奉しているようにも見えないんだけどね……機会があれば、ユノや姉さんに聞いてみよう。
 この国にはなくても、他の国にはあるっていうだけかもしれないし――。


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