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ロジーナの正体を皆に話す
しおりを挟む「別に構わないわ。私から言う事は何もないけど、誰に言ったって信じるかはまた別の話だし。こうして人間の体を使っている以上、私もユノも、存在として実はこうだなんて証明もできないわ」
「どれだけ調べても、魔力も含めて人間であるという結果しか、今は出ないの。だから私達は、リクが話したいと思う相手になら、話してもいいと思うの」
「私は……そこまでリクを信用していないわ。けどそうね、どうせ誰にも証明できない、誰にも本当かどうか確かめる術がないのだから、自由にしてくれて構わないわ。それを利用しようとする者がいるのなら、全て破壊するだけよ」
「怖い事を言うねロジーナは……」
承諾してくれたロジーナとユノ。
ユノからは信頼を感じる言葉だったけど、ロジーナからは凄みを感じる笑みが付け加えられていた。
ロジーナなら、魔法が使えなくともそれくらいの事をやってのけるだろうし、そういう相手が出てきた頃には魔法が使えるようになっているかもしれない。
ユノもロジーナも、魔法が使えるようになったらどうなるのかはわからないけど、少なくとも通常の人間くらいではないのは間違いないはず。
思いっ切り魔法を使って、俺と同じような事をとか言っていたからね。
あと、邪な事を考える輩を相手にするとして、破壊と言うのはいかにもロジーナらしい。
破壊神だからだろうか、ロジーナのかなでは倒すや殺すなどではなく大体は破壊という言葉になるみたいだ。
俺と戦っている時も、同じように言っていたし。
「まぁでも、皆に教えるのを許可してくれてありがとう。それじゃえっと、ロジーナはユノと同じで……」
話す事を許してくれたロジーナに感謝をして、俺達の話しを黙って聞いてくれていたソフィー達に、ユノとロジーナ……主にロジーナの事を話し始める。
最初は、ユノと同じ神様でそれが実は破壊神だと言われて、ソフィーやフィネさん、フィリーナはものすごく驚いていた。
けど、大きな声を上げずに目を見開いてロジーナを見るだけだったのは、ユノで慣れてくれているからかもしれない。
モニカさんは、さっきも話してくれたようにある程度察していたようで、神様だっていうのはもとより破壊神となんらかの関係があるとは、思っていたみたい。
それでも、破壊神本人……本神? だとは思っていなかったらしく、ソフィー達と同じく驚いていた。
「ほ、本当に破壊神……なのか?」
さすがにすぐには信じられなかったのか、ソフィーが驚き目を見開いたまま、ロジーナを凝視しつつ窺っている。
「さっきも言ったけど、それを証明する方法を今は持たないわ。だから信じるも信じないもあなた次第よ」
「ソフィー、信じられない気持ちもわかるわ。私も、リクさんと一緒にいなければ信じられなかったと思うの。でも、ユノちゃんとロジーナちゃんだけで、ヒュドラーの足止めができた事。それはつまりユノちゃんと同等と思っていいわけよね。それに、私とフィネさんは見ているけれど、リクさんがいた大きな植物……あれに突入する際に使った力は、とてもじゃないけど人の身でできる事じゃないわ……リクさん以外は」
ロジーナをフォローするように話すモニカさん。
ユノと同等、それはつまり破壊神である事の証明、と言うには弱いけど……ユノと協力して使った力の方は説得力十分だ。
ソフィーとフィリーナは見ていないけど、一緒にいたフィネさんは深く頷いていた。
ただ最後に、俺以外はと付け加えるのはどうなんだろう? 俺も、今同じ事をできる気がしないし、実際できないと思うんだけど……。
「あの光、白く眩い光が天から降り注いだ光景は、まさしく神々しいという言葉が正しいかと思います」
「そうか……私は見ていないが、話しには聞いている。モニカとフィネがそう言うのならそうなんだろう。いやなに、本気で疑っていたわけじゃないんだ。リクが話す事は信じがたい事でも真実だと、知っているからな。ただあまりにもな話だったので、ついな」
「そうね、私も同じく見ていないから、ソフィーの気持ちはわかるわ。でも、ヒュドラーを足止めできていたのは確かなのよね。中央では、足止めというよりなんとか凌ぐだけで精一杯だったのに、報告ではユノちゃん達の方は、ヒュドラーを倒すには至らなくとも圧倒はしていたようだし」
「中央の一番援護が多い場所で、父さん達が必死に頑張ってなんとか凌げたんですものね。それも、リクさんの到着が遅ければ、どうなっていたか……南側にはレムレースも出て来て、それすらも無傷で凌いでいたのは、大きな証明にもなるんじゃないかしら」
フィネさんが、ユノとロジーナが協力した時の事を思い浮かべているのか、少し恍惚とした表情で話し、ソフィーが納得。
まぁソフィーは信じられないと言うより、すぐには飲み込めないといったところだったんだろう……頭の中で上方が渋滞していたのかもしれない、わからないけど。
フィリーナは、ソフィーと同じく隔離結界の外での事を聞いてはいても見てはいないので、対ヒュドラーの状況で判断したようだ。
確かに、中央にレムレースがいたら俺が行くまで持ちこたえられなかったと思うから、ユノとロジーナだけで無傷で食い止めたのは、モニカさんが言った通り信じる材料になるのか。
アマリーラさんの怪我や協力があってこそでもあるけど。
それにしても、一番戦力が集まってそうな中央に、何故レッタさんはレムレースを向かわせなかったんだろうか?
西側に伏兵としてレムレースを配置してはいたみたいだけど……全力でこちらの戦力を打ち崩すのであれば、最初からヒュドラーと一緒に中央を攻めていた方が、被害は大きくなるはず。
まぁ俺を警戒していたようでもあるから、最大戦力を全て一か所に集めなかったのは納得できるけど。
だから、ヒュドラーも北、中央、南の三か所に別けてんだろうし。
いや、レムレースも含めて、全ての魔物の配置をレッタさんが考えたと決めたわけじゃないけど。
でも多分大半はそうだろうし、理由はわからないけど誘導もできていたようだから。
もしかすると、俺とロジーナが協力しているとは思わなかったとか、もっと被害が出ると考えていて、さらに西側を伏兵……というか伏魔物? で攻め立てる事で短期間で多くの被害を出そうと目論んでいたのかもしれないけど。
なんにせよ、レッタさんが起きて話を聞いてみればわかる事かな。
直接会った感じ、俺に対して素直に話してくれるとは思わないけど、ロジーナがいれば聞き出せそうだ。
……ロジーナが協力してくれれば、だけどね。
「だが、そうなると……だ。ロジーナは帝国側ではないのか? 協力しているという話を聞いたが」
「アルセイス様からだね。まぁ技術的な事は多少助言したみたいだけど……」
ソフィーの考えは当然で、俺達は破壊神が帝国に協力していると思っていた。
アルセイス様から聞かされていた事や、ユノが敵対視するような事を言っていたからだけど。
実際には、ロジーナからすると帝国を特別視していたり、協力しているという程ではないような事を言っていたっけ――。
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