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リクに国外へ行ってほしくない人達
しおりを挟む俺がいる事、アテトリア王国内で活動している事で、冒険者ギルドは頼れる状況であるとしたいのが本音らしい。
特に、ヒュドラーなどの通常ではあり得ない伝説的な魔物が確認された事で、それらに対する不安を払拭するのにも必要だとか。
ヤンさんやベリエスさんといった、冒険者や依頼を管理する立場にあるギルドマスターだと、もしもに対する備えを考える必要があるので、特にそう感じるみたいだ。
だから、俺がSランクになって自由に国外へと向かう事を考えたために、さっき言った良い事とは言えないとの話だったと。
「うーん、国外ですか……」
「リク様のランクを上げないわけには参りません。現状でも、ある程度特権を使って国外へは自由に行けますが……なにとぞ、アテトリア王国に留まっていて欲しいのです」
国外に興味がない、なんて事はない。
この世界に来る直前、ユノに色んな場所で楽しくする……みたいな事を言っていたから、もっと様々な国を見て回ったり、色んな事をやりたいといった思いもある。
まぁ、そのユノは人間の体に入って、既に満喫している様子なので特に気にする必要はなさそうだけど。
あと、アマリーラさんに獣人の国に誘われているからなぁ……絶対、モフモフ天国が待っていると確信しているので、すぐじゃなくてもいつかは行きたいし。
とはいえ……。
「いつかは国外に、という事はあるかもしれませんが、しばらくはこの国を出る気はありませんよ」
「ほ、ほんとですか!?」
手を組んで、願うように俺を見ていたベリエスさんが、表情を明るくした。
ヤンさんも似たようなものだけど、ベリエスさん程心配はしていなかった様子も少しだけ見える気がする。
「はい。少なくとも、帝国関連の事が収束するまでは。もしかしたら、一時的に国外へという事はあるかもしれませんが……すぐに戻ってきます。それに、クランも作らないといけませんから」
姉さんとも話しているし、クランの事もある。
それに、帝国に対して俺に協力できる事がある限りは、この国にいるつもりだ。
ロジーナからレッタさんの話を聞いた時は、今すぐエルサに乗って飛んで行って、皇帝になったらしいクズをしばき倒す……は言葉が悪いけど、とにかくもう乗り込んで解決させた方がいいんじゃないか? なんて思っていたけど。
魔法が使えなくなったから、それも難しくなったし……しばらくアテトリア王国にいるのは間違いない。
あと一時的にというのは、帝国との戦争になった時戦うために国境を越える事だってあるかも、と考えたから。
これまでの事を考えれば、まさか帝国が攻め込んできた魔物や兵士等々を、この国から追い払えば諦める……なんて軽く考えたりはしていないからね。
「クラン! そういえば、王都にある中央ギルドの統括ギルドマスターから、リク様のクランに関する話が来ていました。有望な冒険者をとの事でしたが」
「そうですね。まぁマティルデさんにはまだはっきりと意思は伝えていないんですけど……考える猶予の間に、今回の事が起こったので。でも、ほぼ作る方向で考えています」
俺が作る前提で、マティルデさんはセンテのギルド支部にも連絡していたのか。
クランと聞いて、ヤンさんには既に話していたような気もするから、特に驚いていないし多分そちらにも連絡が行っているんだろう。
俺達だけじゃ、クランのための冒険者を集めるのに限界があるし、色んな場所の色んな冒険者を精査して集めるみたいだね。
……作るとは決めたけどクランに加入してもらう冒険者数をどうするか、とかはまだ決めていないんだけども。
「成る程、クランを作る事に前向きになられたのなら、私達の心配は杞憂でした。であればベリエスさん、各支部への報告は任せても?」
「あぁ、任せろ。必ずリク様のランク昇格を承認させてみせるさ。ま、国内のギルド支部であれば、反対する者はいないだろうがな」
「そうですね」
「そういえば、ランク昇格ですけど……Aランクになった時、三つ以上冒険者ギルドとそのマスターに商人される事。という条件がありましたけど、Sランク以上はどういう条件が?」
時間がかかりそう、という事だったけど具体的にどういう事が行われるのかはわかっていないからね。
話を聞く限り、多くのギルド支部と連絡を取り合う必要があるみたいだけど……今回は、前回マティルデさんに書簡を届けた時のような依頼とかは、ないのだろうか?
「本来であれば、ギルド内で内密に行われ、Aランク以上は冒険者本人には報せないのですが、リク様であれば問題ないでしょう」
「信用問題にかかわる以上、もうリク様の昇格は決まっているようなものですからな……」
本人に報せず、内々で動いて昇格が本決まりになったら報せる、という決まりだったみたいだけど、俺には特例として教えてくれた。
同じ部屋にフィネさんもいるけど、俺と一緒に行動しているのでどうせ昇格した時にわかるだろうから、という事で同席を許可。
ヤンさんとベリエスさんによると、Aランクが三つ以上のギルドから認められる……というより本来は滞在国にある二つのギルドと、統括している中央ギルドの承認があればという事だ。
ちょっと勘違いしていたけど、結果的に三つのギルドから承認されればとなるわけだから、大きく間違ってはいないか。
Sランク昇格は、中央ギルドは当然ながら国内にある主要なギルド支部、十を越える承認を得たうえで冒険者ギルド本部に承認されると、昇格が決定するらしい。
ただ本部の承認は、既に十以上のギルドからの承認を得ているため、内容に不備はないかくらいの確認で、基本的に否認はされないとか。
素行不良で心配があるとかでない限りない事で、俺は能力以外にも人となりも十分過ぎる程なうえアテトリア王国から最高勲章を授与されて英雄と称されるから、絶対に否認される事はないとまでベリエスさん達に太鼓判を押された。
ちなみに、その素行不良などでSランクになれなかったのがエアラハールさんだったりするのを、ヤンさん達から聞いた。
ギルドマスターの間では、本部からほぼ否認される事のないはずの、珍しい事例として周知されているみたいだ。
まぁ、エアラハールさんはお酒好きなのはまだしも、現役の頃から女性によくちょっかいを出していたらしいからなぁ。
本人曰く、衛兵につき出されたり捕まったりしないギリギリを見極めている、と言っていた事もあったけど、それで続けていたから悪い意味で有名になり本部の知る所になって、否認されたんだとか。
……ユノのように、激しいツッコミで止められる人がいれば、違った結果になっていたのかもしれない。
そしてSSランクだけど、これはギルドの承認ではなくこの人なら実力やその他が足ると認められる人に対して、さらに多くのギルドからの嘆願を本部に出すんだとか。
承認ではなく嘆願、というところで歴代で一人しかいない理由がなんとなくわかった。
わざわざ嘆願を出す、という事を複数の冒険者ギルドに考えさせなければいけない、というわけだから当然難易度が高いというかなんというか。
その嘆願を受けて、本部が相応しいかどうかをしっかり精査して昇格が決まるかどうか……という事らしい――。
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