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シュリーガーラッテ討伐完了
しおりを挟む「KIKI! KI!」
「っ! 逃がすか!」
シュリーガーラッテのうち一体が、真っ先に枝から離れ、森の奥へと飛びかけるのを見て、近付く途中で魔力を流していた剣を縦に振るう。
対象法の定石である遠距離攻撃、魔法が使えなくとも今の俺にはこれがあるからね。
振り下ろした剣から、魔力がほとばしり、逃げ出したシュリーガーラッテに剣魔空斬が当たり、木々の枝と共に斬り裂いた。
「KI! KIKI!!」
「KII! KII!」
「KISYAAA!!」
「KII!! KISYA!」
仲間がやられたのがわかったのか、慌てて騒ぎ始めるシュリーガーラッテ。
約二十体のそれらは、逃げるのと俺に向かって来るので半々程度に別れた。
「よっ! ほっ! うん、確かに向かって来る方は、楽に叩き落せるね……っと! 逃がさないよ! ふっ!」
俺に向かって来たシュリーガーラッテは、左手に持った鞘で叩き落す。
空から飛来、といってもそこまでの速度はなく、フォレストウルフはもとよりラミアウネが木から飛び掛かって来る速度よりかなり遅い。
多分、人がジョギング程度で走る方が、早いんじゃないだろうか?
そんな速度なので、鞘で襲って来るシュリーガーラッテを対処しつつ、右手に持った剣で剣魔空斬を飛ばして逃げ出した方の対処もする。
ちょっと忙しいけど、これくらいの速度なら何とか対処可能だ。
ラミアウネ相手に、広場を作るついでに色々試しておいて良かった。
ここで剣魔空斬を使うのが初めてとか、数回目だと結構逃げられていたと思う。
「おっと! もう少し集中しないとね……とぁ! せいっ!」
頭の中で考えて、少し集中が足らなかったのか、顔面にシュリーガーラッテがぶつかる。
魔力のおかげなのと、速度がなく勢いが足らないため、大きさはそれなりでもあまり衝撃はなくて、むしろシュリーガーラッテの方がダメージを受けているようだった。
俺、石頭ってわけでもないんだけどなぁ。
ともあれ、地面に落ちたそいつを足で踏みつけつつ、逃げたシュリーガーラッテを追いかけ、剣魔空斬を飛ばす。
元々討伐難易度も高くない魔物だし、半分は逃げようとしているのもあって、数分程度で決着が付いた。
まぁ、剣を受け止めたりできる程のオークのような肉厚の体や、フォレストウルフの牙や爪もないからね。
襲って来るのはソフィーの剣で、逃げるのはモニカさんの魔法とフィネさんによる斧の投擲で、難なく殲滅できるだろう。
逃げる方への対処は、密集し過ぎている木々が邪魔だから、少し難易度は高いかもしれないけども。
「モニカさんはともかく、ソフィーとかフィネさんに言ったら、自分達も戦いたかったとか言いそうだなぁ。あの二人……特にソフィーがだけど、戦う事も訓練と捉えているところがあるし」
特に、センテに襲来していた魔物の騒動が落ち着いてから、まともに魔物相手に戦っていないどころか、解氷作業の手伝いやら何やらで訓練や素振りなどの自己鍛錬も、あまりできていないみたいだから。
もしかしたら、ストレス解消的に連れて来ても良かったかもしれない、まぁ今更か。
明日以降の冒険者さん達が森に入って、魔物を掃討する時に一緒に入るだろうから、今気にしなくても大丈夫そうだけどね。
ただ弱いとはいえ、魔物と戦うのがストレス解消になるかも、と考えるのはかなり失礼かもしれないけど。
「えっと、ひぃふぅみぃ……」
戦闘時間が短いのもあって、そこまで広範囲に広がっていなかったから、倒したシュリーガーラッテの残骸を適当に一か所に集めて数を数える。
剣魔空斬に斬り裂かれているのもあるので、ちょっと数が数えにくかったけど、まぁなんとかなった。
「よし、ちゃんと最初に見つけた数はいるね。逃げたのは多分いないと思う」
見ていた範囲で、逃げたシュリーガーラットは全て倒したはず。
木の陰などで俺が発見できず、逃げ出したのがいなければだけど……数は最初に見たのと同数で、増えてもいないから大丈夫だろう。
ちなみに、元々気持ち悪い部類のシュリーガーラッテが俺に斬り裂かれて、さらに気持ち悪い状況になっていて血の臭いを振りまいているけど、ちょっと顔をしかめる程度で平気だ。
気持ち悪い、生理的に受け付けないなどは、ラミアウネと戦っている時散々感じた事だからね、ちょっと麻痺しているのかもしれない。
オークやフォレストウルフを倒した時もだったけど、閲覧注意なグロ系の光景より、ラミアウネと正面から対峙する方が嫌悪感が強い。
個人差はあるだろうけど、そう思う俺はもしかしたら、軽度の集合体恐怖症なのかもしれない。
とはいえまぁ、我慢しても戦闘に集中して動けたから、気にする程でもないかな。
「それじゃあ、っと!」
適当にそこらで密集している木々のうち三本を、剣魔空斬で斬り倒しておき、後から来る兵士さん達の目印にしておく。
倒れた木は、さすがに枝打ちまではしないけど邪魔にならないよう分割。
この作業にも慣れたなぁ……最初は、自然破壊的な罪悪感が多少なりともあったけど、今ではそれもほとんど感じない。
まぁ、慣れすぎちゃいけない気がするから、木を伐り過ぎないように意識はしておくべきだと思うけど。
魔物が掃討された後などに木材や薪用の物として使うらしい、とさっきの兵士さん達に聞いた。
それもあって、特に気にしなくなったのもあるんだろうけどね。
「んー、結構な音を立てたけど、他の魔物は周囲にはいなさそうだね……」
剣を収めながら、周囲を見て回りつつ確認。
木々に遮られて視界が悪いので、遠くまでは確認できないけど、とりあえず近くに他の魔物はいないようだ。
何かいれば、それらしい足音とかもしそうだけどそれもないし。
確認を終えて、再び森の奥へと足を進める。
奥、とはいっても行先は決まっていない。
森に広く魔物が分布しているからだけど……どこどこの魔物を倒せば、森から魔物がいなくなるなんて事はないからね。
結局、くまなく森を回って遭遇した魔物を倒して行くのが近道だ。
ただ俺一人で全てをというわけにもいかず、大まかに森を回って魔物の数を減らし、明日以降の冒険者さん達が入るのに備える。
最終的には、人海戦術で山狩りならぬ森狩りをするってわけだね、標的は人じゃなくて魔物だけど。
「でも、とりあえずの目的地はなんとなく定めているんだよねぇ。何か出るかな……んっ! と……こっちか」
一人呟きながら空を仰ぎ見て、太陽の位置を確認……枝葉に邪魔されてできなかったので、高い位置にある枝に飛び乗る。
枝がミシミシと音を立てて俺そうだったので、すぐに降りた。
体重は重くないと思うけど、勢いがあったり剣などの装備もあるから、細い枝なら折れてしまうか。
ともあれ、太陽の位置と比べて自分がちゃんと一応の目的地の方角へ向かっているのを確認。
太陽は、この世界でも地球と同じで東から昇って西に降りていく……太陽の位置を見れば、なんとなくの方角はわかるってわけだね。
方位計も時計もないから、厳密な方角まで出すのは微妙だけど、目的地もなんとなくだからちょうどいい。
昼過ぎで少し傾き始めているけど、まだ高い位置にあるから目指している東側へは、太陽を右手側に位置するように進めばいい。
影を見てもいいんだけど、密集している木々が光を遮っているし、確認するならそんなに手間のかからない直接見る方がやりやすいからね――。
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