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第一村人ならぬ第一冒険者さん発見
しおりを挟む「そっち、行ったぞ!」
「任せろ! ここは通さん……ぬぅん!」
「ちょこまかと動いて、狙いがつけにくいな。だが……そこだ、ウォーターランス!!」
「GYAHU!?」
こっそりと、木の陰に隠れて音のした方を観察。
男性三人組の冒険者パーティのようで、フォレストウルフ数体と戦っていた。
一体のフォレストウルフが、木の幹を足場にして一番後ろにいるローブの男性に飛び掛かるのを、真ん中にいた男性が盾で弾く。
先頭にいて、注意を促していた男性が剣でそのフォレストウルフを突き刺し、ローブの男性は狙いを定めて水の槍を出す魔法で別のフォレストウルフを貫いていた。
「成る程、盾を持った人が真ん中でどちらにも動けるようにして、バランス良く連携を取っているみたいだね」
「一番前に出ている、剣を持った人も周囲をよく観察しているみたいね。身軽なのもあって、後ろにも前にも出られるようにしているみたい」
「……もう少々、魔法での狙いを定める速度を早くすれば、と私は思ってしまいますが」
等々、木の陰から観察しつつそれぞれに感想を漏らす。
戦っていたフォレストウルフは三体で、俺達が見始めた瞬間に二体を倒し、残った一体は三人で危なげなく追い詰めて倒していた。
冒険者の三人は、日頃から一緒に活動しているんだろう、慣れた連携のようだった。
「エルフのカイツさんからすれば、人間の使う魔法は言いたい事も多いんでしょうけど……あれくらいできれば、十分ですよ。もちろん、もっと上を目指すなら話は別ですけど」
「ふむ、そうなのですか」
一番フォレストウルフから距離を取っていた、ローブの男性。
その男性が使った魔法に対して何やら話しているカイツさんとモニカさん。
まぁ、日常に魔法があって魔力だけでなく扱いも、人間以上に長けているカイツさんからすると、未熟に見える部分も多いんだろう。
俺からすると、ちゃんと狙いを定めて仕留められる威力で魔法を使っている時点で、優秀だと思えるんだけど。
……俺の場合、細かく狙うより広い範囲で巻き込む使い方が多いからなぁ。
今は使えないけど。
「よし、作業に取り掛かるぞ」
「えぇ~、少し休もうよ~」
「怠けるな。ここで力を示しておかないと、リク様のクランに推薦されないかもしれないぞ?」
「うぅ、仕方ないかぁ」
「リク様のクランに入れれば、ご一緒できる可能性も上がるのだから、是非とも入らねばな」
等々、フォレストウルフを倒した冒険者の三人は、話しながらも討伐証明部位を切り取りつつ、残った部分は穴を掘って埋める作業をしていた。
というか、俺が作る予定のクランに入るのって、やる気に繋がっているのか……冒険者ギルド側からすると、俺に推薦する人を選ぶ査定みたいな部分もあるみたいだけど。
少しくらい休憩しても、大丈夫だと思うんだけどなぁ
「ね? リクさんが嫌われているって事はないでしょ?」
「むしろ、好かれているという方が正しいだでしょう。リク様は、人間にもエルフにも大人気です」
「いやぁ……えっと……あはははは……」
なんて、三人の様子を見ていたモニカさんやカイツさんから言われる。
確かに嫌われていないのは、会話の内容からはっきりわかるけど……人気って言われてもなぁ。
男性に好かれても、なんて返したらいいのかわからないし。
いや、女性だったらいいというわけでもないんだけどね。
「……とにかく、ここは大丈夫そうだね」
「そうね。力を見せるとは言っていたけど、無茶をするようでもなく見えるわ。堅実にやっているのでしょうね」
三人の冒険者さんは、森の中を魔物と何度も戦ったんだろう、服や鎧などは汚れているし頭に葉っぱが絡まってもいるけど、俺達から見ている限り怪我をしている様子もない。
もしかしたら擦り傷くらいは負っている可能性はあるけど、大きな怪我はないだろう。
我慢できるくらいだとしても、それなりの怪我をしていたら動きにも不自然な部分が出て来るからね。
それがない三人は、森の深い場所まで来ている事や、フォレストウルフも危なげなく倒しているわけで、実力者であるのは間違いない。
よくよく見てみれば、センテで見かけた事がある気がするし……多分、直接話したことはないと思うけど。
ともあれ、ヒュドラー戦も含めてあの大きな戦いを経験したのもあってか、心配する必要はなさそうだ。
これなら会って話したりする事もなさそうだしと、穴を掘りながら何やら話している三人をその場に残し、俺達は別の冒険者を探すために移動した――。
「皆、結構頑張っているんだなぁ」
「そうね。離脱した人達もいるみたいだけど、多くの冒険者が魔物と戦えているわ。まぁそもそも、一人前の冒険者やセンテでの戦いを経験した人達だから、この森に元からいる魔物ならなんとでもなるでしょうけど」
「心配したり、念のため安全にするって必要はなかったかな?」
「ですが、モニカ殿の言ったように離脱しているのもいるわけですし、怪我をしているのもいましたから。リク様の気遣いが不要だったわけではないでしょう」
あれから、いくつかの冒険者パーティを見て回った。
木を斬り倒すのを辞めた事で、俺達から離れる人がいなくなったおかげだろう。
多くの冒険者が、魔物を倒しながら森の奥へ入り込めていて、安全策の必要があったのかという疑問すら湧いてくる。
とはいえ、モニカさんやカイツさんも言っているように、ワイバーンに助けを求めて離脱した人もいる事は間違いないので、絶対必要なかったわけではないんだろう。
動きが鈍ってしまうくらいの怪我をしただけで、危険度は跳ね上がるからね。
魔物からの襲撃、というのもあるわけだし。
ちなみに、ワイバーンで離脱した人もいるとわかったのは、俺達が様子を見ているのを発見した冒険者さんのパーティもあって、その時聞いた話だ。
あれだよね、昨日一人で森に入った時もやっちゃったけど、森の中で落ちている枝とかを踏んで音を立てちゃうのは仕方ないと思うんだ。
そこら中に枝が落ちているし、隠密行動とかの訓練を受けているわけでもないんだし。
という、自分が音を立てて警戒され、誤解を解くために姿を現した事が複数回あった事の言い訳を、内心で勝手に考えていたりする。
「お、あれは……女性だけのパーティみたいだね」
「ルギネさん達、ではないみたいね」
「ふむ」
そんなこんなで、次に発見した冒険者パーティは女性五人のパーティ。
過酷な依頼も多いためか、七割くらいが男性と言われている冒険者の中で、女性だけのパーティを発見。
まぁ、男女混合のパーティ……特に女性が少ない方が珍しくはあるんだけど。
混合の場合、男女間での問題が発生する恐れがあるため、多くは女性の方が多いか同比率か、が多数らしい。
俺達のパーティも、男は俺一人で女性比率が激高のパーティだからね。
そんな、女性五人のパーティの様子を、モニカさん達と一緒に木の陰に隠れながらこれまでと同じように、様子を窺った。
というかこれ、もしかすると傍から見たら女性グループをストーキングしている不審者に見えないだろうか……?。
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