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女性冒険者さん達の会話
しおりを挟む「それ可愛いねぇ。どこで買ったの?」
「あーしと一緒に行った店だよねー?」
「そうそう。そこで見つけたのよぉ、掘り出し物でしょー」
「いいなぁ。はぁ、勇んで森に入ったけどさぁ? やっぱり汚れるっていうかぁ」
「当然の事だから、仕方ないでしょ? あたいだって、今すぐ裸になって体を拭きたいわよ」
等々、俺達が不審者っぽくなっているのを他所に、女性の冒険者パーティはそれぞれ、身に着けている物などの事を始めに、姦しく話していた。
女子会かな? まぁ女性だけだから間違ってはいないか。
ただ、俺達が発見する直前に倒したばかりなんだろう、話しながらも地面に倒れているオークを切り分け、討伐証明部位や食料としての肉を採取していた。
穴を掘っている人もいるね。
内容とやっちる事が違い過ぎて、女性だけのパーティという部分によからぬ想像をしている人は、頭の中が混乱しそうでもある。
「え、いいじゃんいいじゃん。裸になっちゃいなよ」
「嫌よ、誰が見ているかわかったもんじゃないわ」
まぁ、今まさに俺達が木の陰に隠れて見守っているわけなんだけど。
あ、モニカさん……別に覗き見したいとか、期待しているわけじゃないから俺の目を塞がなくていいよ?
ちょっと、瞼に指が食い込んで痛いです。
「ねぇねぇ、そんな貧相な体を晒すよりもさ……」
「ひ、貧相……うぅ……あたいだって、好きで成長が止めたわけじゃないのに……」
モニカさんに目を塞がれているけど、さっき見た限りでは確かに貧相と言われたあたいさんは、ちゃんと食べているのか心配になる程細かった気がする。
本当に貧相かどうかまではさすがにわからないし、だからどうというつもりは全くないうえ、興味がないのでそろそろ開放して欲しいですモニカさん。
指がさっきよりも食い込んでいて、結構痛いんですけど……。
「そんな事より、リク様よリク様」
「そんな事って……あたいには重要なんだけど」
「あんたの事はいいのよ。それよりもリク様の事!」
「だからリク様がどうしたってのよ?」
「ほら、リク様のクランって話があるでしょ? それで、もし入れたらあたしにもチャンスがあるんじゃないかってね? 最年少で最速のAランク。センテでの事を考えれば、いずれSランクになってもおかしくないわ。しかも、独自のクランを作る……有望すぎるくらいに有望よね」
「チャンスって……でも、リク様の近くには複数の女がいるでしょ? 既に囲んでいるようだし……」
俺の話になったからどんな内容だろうと思ったら、雲行きが怪しくなってきたような……?
特に、長めのダガーを二つ持っている女性が、話を主導しているようだ。
って、さっきよりさらに俺の目を塞ぐモニカさんが俺の手に、力が入ってる! 目の周りを覆うようにしているんだけど、こめかみ辺りから特にギリギリとした痛みがぁ!
「だからよ。複数の女をって事なら、あたしだっていけるんじゃない? 侯爵様や、王軍の偉い人とも親しいようだし」
「まぁ、取り入る事ができれば、安泰でしょうね。こんな森の中で、魔物討伐に勤しむ必要はなくなるのは間違いないわ」
「リク様がそれをよしとするかしら? 一緒にいる女達だって、悠々自適じゃなくて魔物と戦っているみたいだし……」
「変に刺激すると、怖いかも……」
「確かに、リク様の意にそぐわないとどうなるか……どんな冒険者が束になってかかっても、止められそうにないし」
「あ、あたし、やられちゃう?」
「もしもの場合を考えられないのなら、頭がお花畑だと思う。色々凄そうだから」
凄そうって、何がだろう? という疑問はともかく、別に意にそぐわない……要は俺を怒らせたら怖いという話なんだろうけど、変な事をするつもりはないよ?
よっぽどの事というか、悪い事とかでなければ別に。
意見が食い違っても、無理やり従えるなんてしたくないしするつもりもないし……。
「さっき、後ろと前から大きく響いてたドーン! って音……片方はあれよね、獣人達の……」
「あの人達ならやりかねないわね」
「そうね。でも前から聞こえていた音って、あれリク様だと思うのよね。ほら、見たじゃない? 綺麗な断面で斬り倒されていた木」
「……見た時も話しましたし、音が聞こえていた時も話していたけど、リク様以外にできると思えないわよね」
「この森に、あんなことができる魔物がいるとは思えないからね……いえこの森以外にもいるとは思えないんだけど」
この人達にも、俺が木を斬り倒していた音は聞こえていたのか……なんとなく申し訳ない気持ち。
後ろからっていうのは多分、後を追うように森に入ったフィリーナ達かな? アマリーラさんとか、木を斬り倒すくらいしそうだし。
東に進んでいれば、後ろの西はアマリーラさん、前の東は俺ってわけか。
なんて考えているうちに、俺が怖いという話はいつの間にか終わり、再び女性達の話す内容は俺に取り入る……主に、男女の関係を持ちかける的な話になっていた。
「でも、いい考えかも。リク様、ちょっと可愛いし」
「あ、それあーしもわかるわぁ。年下っていいわよねぇ」
「私は、年上の方がいいわ。こう、おじ様が醸し出す色気みたいな?」
「あんたはいっつもそれね。確かにリク様は可愛いと思うけど……私達に見向きしてくれるかしら? 一緒にいるのは大体同じくらいの女に見えるし……小さい子もいるみたいだけど」
小さい子っていうのは、ユノやロジーナの事だろうか?
というか、モニカさんが目を塞いでいるから、それぞれ言葉は誰が言っているのかわからないな……まぁ、見かけた事があるかも? くらいの女性達だし、皆剣を持っていたようだから、見えていてもあまり見分けが付かなかったかもしれないけども。
……距離を取っているから、はっきり顔も見えないからね。
「リク様って、年上に興味がないのかな?」
「それはわからないけど……」
「と、とにかく、リク様に認められれば……」
「認められるって言っても、冒険者としてじゃなく、女としてって事でしょ? それでいいの?」
「いいのよ。冒険者である事にこだわりを持っているわけでもないわ」
「じゃあ、あちしも……」
「あーしも、狙ってみようかなぁ?」
うん、これ以上盗み聞きしてちゃいけない気がする。
なんというか、モニカさんやソフィー達のように女性が多い場面にいる事が多かったけど、これは完全に女性だけのガールズトークというやつだ。
まぁ、ここまで聞いていて今更ではあるけど……なんというか、自分が話題になっているのを盗み聞いている状況に、罪悪感が湧いてしまう。
いろいろな意味で狙われている、というのはまぁ覚えておかないといけない気はするけど、とりあえず聞かなかった事にしておこうかな。
「モニカさんモニカさん、ここを離れるから手を放して欲しいなぁ。脱ぐような事もないみたいだし……」
トントンと、痛みを感じるくらい俺の目の周りを覆っているモニカさんの手を指先で叩いて、放してもらえるようお願いする。
さすがに、こんな森の中で……しかも魔物がいる場所で、体や服が汚れたからって本当に脱ぐわけないし、冗談だったんだろう。
も、もちろん俺だって男だし、そういう事に興味がないと言えば嘘になるけど。
でも、近くにモニカさんもいるわけで、そんな状況で女性の裸を盗み見たいなんて思うわけがない……いなくても駄目な事だけども――。
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