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他の冒険者さん達も見て回る
しおりを挟む「はっ! そ、そうね……ごめんなさい」
ようやく手を放してくれたモニカさん。
そうなって、なんとなく残念な気がしてしまったけど……俺は痛みを感じたい趣味は持っていない。
ただ、モニカさんが俺に触れていた事に、もう少しあのままでも良かったと思っただけだ。
それもそれで、よく考えるとどうかと思うけどね。
「とりあえず、大丈夫そうだから行こうか」
「え、えぇ。わかったわ」
まだ姦しく色々と話している女性達は大丈夫だろうと、この場を離れる事にする。
魔物を倒す事よりも、話す事に夢中になっているようだけど……まぁ、近くにはめぼしい魔物がいないようなので大丈夫だろう。
武器を収めて無警戒にくつろいでいる、というわけでもないみたいだし。
「……リク様、さらに北東に別の人間がいるようです」
女性たちの話に興味がなかったのか、既に木々から情報を得ていたカイツさんの言葉に従い、きゃいきゃいと話す女性五人組のパーティに背を向けて、再び移動を開始した。
離れる前に、ユノやロジーナに関して俺にあらぬ疑いがかかっていたり、一人を除いて俺がハーレムを築いたらその中に……なんて話が聞こえてきたような気はするけど、きっと気のせいだ。
ハーレムなんて築くつもりは一切ないし、ユノやロジーナに対して変な感情を持っていたりはしない、とだけは心の中で呟いておく――。
――それからしばらく、見上げた空の太陽が傾いてそろそろ暗くなり始めるかな? というくらいまで、森の中を練り歩いて冒険者さんの様子を見て回った。
もちろん、通りがかりに魔物を見つければ討伐したし、ちょっと危険そうだった冒険者さんのグループを見つけたら、助けたりもしたけど。
俺が見た冒険者さんは、大体二十組くらいで五、六十人といったところだね。
まぁ、既に離脱した人や、早いうちに切り上げた冒険者もいるみたいだし、フィリーナ達の方も見て回っているから、全ての冒険者を見る必要はないか。
向こうも動き回っているし、広い森で全てを発見するのは一日では無理だし。
あと、フィリーナ達と会った冒険者さんと話をしたけど、向こうはちょっとやりすぎなくらい暴れていたとの事。
おそらくアマリーラさん辺りだろうと思うけど、もしかすると森に入ってテンションが上がったのかもしれない。
その他、三分の二くらいの冒険者グループには二、三人の兵士さんが付いていて、魔物との戦いに協力……ではなく、森での魔物との戦い方等々を学んでいる様子も見られた。
全ての冒険者さんに付いてるわけではないみたいだけど……女性五人組とか、バランスよく連携していた男性三人組とかね。
元々、王軍が進まない森の魔物掃討を訓練代わりとしていたヴェンツェルさんに、一部の兵士さんを帯同させて学ばせようという説得材料もあったから、それだろう。
大人数ではなく、少人数で制限されている場所での戦いや連携を、参考にして頑張って欲しいところだ。
なんて考えている俺自身も、この森に入ってからモニカさんやカイツさんといった人達と協力し、連携して戦う大切さ……というか楽さみたいなのを、実感しているんだけどね。
これまで、近くに皆がいても一人で色々やる事が多かったから。
大体は、魔法を使っていたせいや、巻き込まないようにしていたからなんだけどね。
「魔物の数が増えているような気がしますね……」
「それなんですけど、おそらくなくなった森にいた魔物達が……」
冒険者さん達を探してしばらく、今はトレジウスさんのパーティと遭遇し、リーダーのトレジウスさんと話している。
トレジウスさんのパーティは四人で、両手に盾を持った人、皮鎧でナイフを身に着けているけど魔法を使うらしい人、モニカさんみたいに短い槍を二本持っている人。
そこにトレジウスさんを合わせて四人の、男性ばかりのパーティだ。
そんなトレジウスさん達だけど、俺が発見した時何やら難しい表情で話し合っていたから、何事かとこちらから接触した。
知らない中じゃない、というか知り合いだからね。
何を深刻そうに話していたのか、というのも気になったから。
そんなトレジウスさん達の話の内容は、森にいる魔物が多いかもしれない、という事。
センテやヘルサルを拠点にしていたため、何度も個々の森には入った事があるみたいだけど、それでも魔物同士の距離が近く、群れている場合の数も多いと感じたらしい。
まぁ、多くの冒険者が一斉に森に入って、それぞれが一度も魔物に遭遇しないなんて事はなかったようだし、魔物を倒してまた別の魔物を……となった時に距離が近いみたいで、疑問に思うのも当然かもしれない。
特に、これまでの森を知っていればね。
ただ、それに関する答えは簡単……あらかじめエルサやレッタさんを含めた皆と話していたんだけど、隔離結界を俺が張る直前、センテ近くの森に潜ませていた魔物達によって、ヘルサル側に元々の魔物を追いやっていたからだろうって事。
レムレースもいたうえ、強力な魔物いたみたいだから、ただ魔物を潜ませるだけでも弱い魔物は逃げ出して今残っている森のある方へ来たってわけだね。
半分程度になった森に、以前の森の魔物が集まっているんだから、逃げ出して森から出た魔物がいるとはいっても、密集度が高く群れの数が増えるのも当然って事らしい。
人口、じゃないな……魔物密度が上がっているだけで、総数が増えたわけじゃないとエルサやロジーナが予想していたから、多分その通りなんだろう。
ちなみに、密度が上がれば繁殖力や発生速度も上がるみたいなので、放っておけば放っておくほど、総数はどんどん加速度的に増えていっただろうとも。
その辺りは、進まなくても兵士さん達が魔物討伐をしてくれていたから、差し引きで総数は依然とあまり変わらないくらいだろうって事らしいけどね。
「成る程、そういう事なのですね……」
「今回のように、一気に魔物を倒して行けばいずれ掃討できるだろうって事みたいです」
「ならば、俺達ももっと魔物を倒さないといけませんね。他の冒険者に遅れを取るつもりはありません!」
十分過ぎるくらいのやる気に溢れたトレジウスさんの言葉。
他のパーティの面々も、同じように頷いている。
でも、もうすぐ日が暮れそうなんだけど……本当に大丈夫だろうか?
まさか野宿してまでって事はないだろうし、暗くなったら引き上げるかな? ワイバーン達に見てもらっていれば、なんとかなるか。
「あまり無理はしないようにして下さいね? ちょっとした怪我ならともかく、ワイバーン達がいてくれても、命の危険がないわけではないですから。暗い森の中は危険ですし、空から見ているワイバーンが助けられない場合もありますから」
「えぇ、肝に銘じておきます。完全に暗くなるまでには、森を出るように動きます。では……行くぞお前ら!」
そう言って、俺達に手を振りながら意気揚々と木々の合間に消えていく、トレジウスさん達のパーティ。
疑問が解消され、森の異変ではない事に安心したんだろう。
ワイバーンは人間よりよっぽど夜目が聞くけど、さすがに夜の森にいる人を空からばっちり見守るのは難しいだろうからね。
完全に暗くなる前に離脱するのであれば、安心かな……魔物を探すのに躍起になって、忘れなければいいけど――。
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