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リクに感謝を伝える女性達

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「……と、とりあえず、皆さん元気そうで何よりです……でいいのかな?」

 緊張を解すためというわけでもないけど、なんとなく俺から話し始めないといけないと思い、そう声をかける。
 こういった場は慣れないので、自信のないい方になってしまったのは許して欲しい。
 ……誰に許してもらうのかはわからないけど。

「今私達がこうしていられるのは、全てリク様のおかげです! あの時、私達を助け出して下さった事、絶対に忘れません!」
「はい! 私もそうですが……あの野盗達に捕まっていた皆が、絶望していました。これから自分達はどうなるのだろうと。ですが、そこに光を差し込ませて下さったのはリク様なのです!」
「えーっと……」

 俺が気にしないから話して、と言ったからだろうか? 緊張もあるだろうけど顔を紅潮させて興奮気味に言い募る。
 声を出していない人も、うんうんと激しく頷いていた。
 助けたのは偶然だけど……まぁ気持ちは受け取っておこうと思う。
 最近わかったけど、こういうのはある程度素直に受け取っておいた方がお互い気持ち良く話ができるみたいだし。

「光を差し込ませたっていうのはまぁ……夜だったし月明かりって事で。ともあれ、こうして元気な姿を見るだけで、助けられて良かったと思いますよ」

 野盗のアジトでは、窓も明りもない真っ暗な場所に入れられていたからね。
 そんな場所にしばらくいたら、月明かりですら明るく感じてもおかしくない。

「はい! 私達皆、リク様のおかげで命が救われたと考えております! ありがとうございます!!」
「「「「「ありがとうございます!!」」」」」

 これは示し合わせたいたのだろうか、一人の女性が感謝の言葉を口にして俺が部屋に入って来た時と同じように、深く頭を下げるのに合わせて、他の人達も全員が声を揃え、頭を下げた。
 命が救われた、というのは本人達は多分俺と認識のズレがあるというか詳細は知らないだろうけど、大袈裟じゃないと思っている。
 多分、ここにいる人達は攫われて野盗達に売られて、それこそ言葉は悪いが奴隷みたいな扱いを受ける……とかくらいは考えていたかもしれない。
 けど実際は、帝国に売られての実験台になっていた可能性が高い。

 冒険者ギルドの建物など、現在この国に対して行われている文字通り人間を使った破壊工作、そのまま人間爆弾のようにされていたかもしれないんだから。
 当然、爆発した人間がどうなるかは……あまり考えたくはないけど、エクスブロジオンオーガと同じ結末だろう。
 まぁ、レッタさんの話にあったような、クズ皇帝のおもちゃとにされているなんて事も考えられるけど。
 その場合はその場合で、飽きたら捨てられるんだろうし、結末としては大きく変わらない。

「はい。人が、女性が攫われているという事は知らず、本当に偶然ではありましたけど……野盗のアジトを潰しに行って正解でした」

 本当に、そう思う。
 もし俺があの時、ロータ君を村に送り届ける事しか考えず、襲ってきた野盗を追い払う程度で済ませていたら、今この人達はここにいないだろうからね。
 まぁユノにはバレていたけど、一緒にいた他の皆には内緒での単独行動だったから、後でモニカさん達に怒られたりはしたいけども。

「本当に、本当にありがとうございます!」

 俺が謙遜気味に偶然と口にしても、頭を上げた女性達は何度も感謝を伝えて来て、一部は涙ぐんでまでいる。
 それだけ、攫われてからは絶望感に包まれていたって事なんだろう。
 ただ理由はどうあれ、目の前で女性に泣かれているという状況に、おろおろとどうすればいいのか戸惑ってしまう。
 ……こういうのは苦手というか、慣れていないからなぁ……女性が泣く事に慣れているのもどうかと思うけど。

「はい、落ち着いて。皆の気持ちは、リクさんに伝わっているようだから、ね?」
「あ、はい……」

 そんな俺を見かねたのか、というかモニカさんにどうしたらいいかと視線を向けたせいもあるだろうけど、女性達の方へ歩み寄ったモニカさんが、背中を撫でたり声を掛けたりとしつつ、落ち着かせていく。
 やっぱりこういう時は、女性同士の方がいいよなぁ。
 男でも、人によってはできる人もいるのかもしれないけど。

「申し訳ありませんリク様、取り乱してしまいました」

 少しして、モニカさんのおかげで落ち着いた女性達に謝られる。
 涙ぐんでいた人は、まだ少し目が潤んでいる気はするけど……最初の緊張とかもついでに解れたようだ。

「いえ、気にしていませんから。――ありがとう、モニカさん」
「えぇ、あのままだと話が進まなかったからね。まぁ話自体はもう済んだようなものな気がするけど……」

 感謝を伝えたという事だから、女性達の要はもう終わったようなものか、確かに。
 とはいえ泣いている女性達に対して、それじゃもう用が終わったので――なんて言って部屋を出て行くわけにもいかなかったからね。
 そう考えていると、モニカさんが俺から顔を背けて何やら小さく溜め息……。

「はぁ……警戒していたのに、そんな必要はなかったかしら。付いてきて正解だったとは思うけど」

 全部は聞こえなかったけど、最初の方で警戒と言っていたのは聞こえた。
 モニカさんが警戒する必要ってあったのかな?

「モニカさん?」
「ん、なんでもないわ。ちょっと、自分の気持ちを持てあまりしていただけだから。ここにいるのも含めてね」
「んー?」

 この部屋に来る前と同じように、モニカさんは首を振って誤魔化す。
 モニカさんが言っている意味は、よくわからない部分もあったけど……自分の気持ちかぁ。
 もしかしてモニカさんは、俺が女性達と会うという話を聞いて何か思うところがあったのかもしれない。

 警戒とも言っていたし。
 なんとなく程度で、まだちゃんと伝えていない俺が悪いんだけど……俺の気持ちはずっと一方向にしか向いていないんだけどなぁ。

「あのー、リク様……?」
「あ、すみません。なんですか?」

 モニカさんの方ばかり見ていたら、対面しているはずの女性達からはこちらを窺うような視線と声。
 ないがしろにするつもりはないけど、ちょっと話が逸れてしまっていたね……今は、俺達の前にいる女性達との話だ。
 大方の要は済んだはずだけど、何やら言いたげな様子が見て取れて、こちらから聞いてみる事にした。

「その……リク様だけでなく、モニカ様方もこの王城に滞在されていて、お世話する人手が足りないと聞き及んでおります」

 おずおず、といった感じで話す女性。
 いの一番に声を出して、他の人達をリードするようにしていた女性ではなく、少し気弱そうな印象を受ける女性からだ。
 ただ他の女性達も、気弱そうな女性の話に頷いているので、意見としては同じなんだろう。

「えーっと……そうなんですか、ヒルダさん? いえ、モニカさん達もいるので人手が必要なのは当然だとは思いますけど」

 人手が足りない、とまでは聞いていないけど……とりあえずどうなのか確かめるために、ヒルダさんへと顔を向けて聞く。
 俺だけでなく、皆何から何までお世話されたいという人達じゃないから、人手が足りないなら足りないで、こちらでやれる事はやろうと思うんだけど、ヒルダさんが悲しそうにするから中々できなかったりもする――。


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