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女性に対する視線と意識

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「改めてそう感じただけよ。あの状況、そこらの男ならもっと気にするところや、視線を向ける部分があったのになぁってね」
「うーん……? まぁ、俺も間違いなく男だし、気にならないわけじゃないけど……」

、どうやらモニカさんが言いたいのは、俺の八人の女性達に対する姿勢の事だったらしい。
 確かにあの状況、ろくでもない男だったらよこしまな目であの女性達を見ていたんだろうな……というのはなんとなくわかる。
 モニカさんが警戒していたというのも、少しは察しているから今の言葉でそう考えられるけど。

「ただなんだろう、他に気にする事ばかりだったからね。これまでも、これからも……」
「なにそれ? リクさんが気にしている事って?」
「私も気になりますね……リク様がお気になさっている事。私で何かできる事があればと思いますが」
「ヒルダさんまで!? ま、まぁちょっとね。伝えたい事とか、これまでの自分やこれから自分がどうするかって考えちゃってね」

 八人の女性達は、野盗達がそういう女性を集めたんだろうと思うくらい、全員が美人だった。
 方向性が違っていて、可愛らしいという表現が合う人もいたけど……ともかくそれでもやっぱり、大きく心を動かしたり、変な部分に視線を向かわせなかった俺は、モニカさんの事しか頭にないんだろうなって改めて思う。
 もちろん、それ以下考えられないというわけではなく、異性として意識しているかどうかの部分だね。
 昔から……というか日本にいた時から、草食系と言われていて自分でも自覚していたくらいだし、あまり女性に対して自分から色々と積極的にならない、というのもあるんだろう。

 まぁ、それよりもモフモフに対する興味以外は、なんとなくで生きていたせいでもあるかもしれないけどね。
 あの頃は、両親はおらず、姉さんの事は記憶を封印までして自分が生きている事すら、なんだか薄いガラス一枚を隔てた先の出来事のようにすら思えていたから。
 今は違うんだけどね。

「リクさんが何を考えているのかよくわからないし、気にはなるけど……とにかく安心したわ。とにかく女と見たら目の色を変える人とか結構いるのよね……」

 モニカさんはそう言いながらも、完全にホッとしているようには見えないけど、それでも女性達に会う前よりは柔らかな雰囲気になっている。
 さっきは警戒と呟いていたように、少し緊張感のようなものを漂わせていた気がするからね。

「確かに、モニカ様の仰る方がいるのは私もよく存じております。ほぼいなくなりましたが、以前は王城に来られても、使用人の女性にお世話を言い付けて、邪な事を考える貴族などもいたくらいです。言葉は悪いですが、女性を物色しに来ているのかと一部からは反感を買っていましたが……主に陛下からですが」
「そ、そうなんですね……」

 俺達の前を案内するように使用人さんの居住区を歩いて進み、こちらに振り返らないままで言うヒルダさん。
 ただヒルダさんの背中からは、不穏な気配のようなものが漂っている気がするから、もしかするとヒルダんさんもその不届きな貴族に何か言われたり、されそうになったりした事があるのかもしれない。
 そんなヒルダさんを見た行きかう使用人さんは、一様に顔を強張らせてビクッと大きく体を震わせているから、結構な圧力を放っているんだろう……どんな事があったのか、知りたいような知りたくないような。
 ただまぁ、姉さんはその辺りのガードが堅いからね……これは日本にいた時の記憶でもそうだけど。

 そういった、女性関係がだらしない人に対してはかなり厳しいだろうし、何か変な事が起こらないよう目を光らせていたんだろうね。
 ちなみに、ヒルダさんも言っている通りほぼいなくなったと言うのは、バルテルの凶行からこっち、そういった貴族らしからぬ……ある意味貴族らしいのかもしれないけど、そういった人物達は全て排斥されていると後で聞いた。
 言葉は悪いけど、アテトリア王国内にあった膿みのようなものが取り除けたって事だろう。
 きっかけが帝国と通じたうえ、姉さんを人質に取ったバルテルというのは微妙な気がするけどね……。

「でもきっと、それがリクさんの周りに女性……だけでなく女の子も集まる要因なんでしょうね」
「リク様のお傍は、なんというか安心感がありますからね。陛下も、リク様のお傍にいる時だけは大変くつろいでいらっしゃるようですし。それは、先程の者達もそうでしょう」
「そ、そうなんですかね……?」
「変な目で見られる人の近くよりは、あまりそういった見方をされない人の方が、近くにいて安心するものよ。全てがそうだとは限らないけど、女性はそう言う人も多いんじゃないかしら? ソフィーとかもそうだろうし」

 特に意識しているわけではないんだけど、肩身が狭いとか思う事はあっても女性だから、という理由で特別な目で見る事は……俺も男だからないとは言えないけど、エルサのおかげでかなり少ないとは思う。
 モフモフに意識が行っているから。
 ってまぁ、意識していない事なんだから、特に俺自身が意識していないとかは当然の事か。
 ただ女の子って、ユノとかロジーナを含んでいるんだろうけど……確かに見た目はそうで、俺も小さな女の子のような扱いをする事はあるけど、実際は最年ちょ……おっと、何か寒気がするからこれ以上考えるのはやめておこう。

 ともかく、意識する事が少ないからこそ安心して女性が集まるって事なんだろうか? よくわからない。
 俺は男だからわからなくて当然なのかもしれないけど……。
 ソフィーとかは、以前は協力する事はあってもパーティなど誰かと組んだりするのはほとんどなかったようだけど、同じパーティに入ってくれたのは、それが理由の一つになってくれているのかもしれないね。

「……あれ、リク様にモニカさん?」
「ん?」

 そんな風に、和やかとは言い難いながらもなんとなく話しながら、そろそろ使用人さん達の居住区を抜けるだろう頃に、一つの扉を開けて部屋から出て来た人物に、聞き覚えのある声で呼ばれた。

「カーリンさん」
「はい。どうしてリク様達がこちらへ?」
「まぁ、ちょっと用事がありまして……」

 俺達を呼んだのはカーリンさん、クランの料理人として働いてもらう予定の女性だけど……今は王城の料理人さんに色々教えてもらっているらしいから、料理人見習いと言えるのかな?
 首をかしげるカーリンさんに、とりあえずそう答えておく……別に隠す事じゃないんだけどね。
 今回初めて来た区画だし、俺やモニカさんがここにいるのは確かに不思議に見えるのかもしれない。

「カーリンさんがその扉から出て来たという事は……?」

 部屋の特定をしたいわけじゃないけど、気になったのでつい聞いてしまった。
 確か、女性同士で仲良くなった王城の料理人さんにお世話になっていて、部屋に間借りさせてもらっているとか聞いていたけど。
 休憩か何かで一旦部屋に戻っていたんだろう、ちょうど出て来たタイミングで俺達とバッタリ……ってところか。
 カーリンさん一人のようだから、お世話になっている女性の料理人さんというのは今は一緒にいないか、厨房などで働いている真っ最中ってところか……そういえば、もうすぐ夕食だなぁ――。


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