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“こいびと”の条件
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「かな、…今日“いつもの”とこいこっか?」
学校が終わり、わたしがランドセルに荷物を詰めていると、頰を赤くしたありさちゃんが近づいてきた。
「……うん。…わかった。」
“いつもの”と言われただけで、わたしの頰も赤く染まり出す。
そのまましまいかけていた教科書を急いで押し込めると、静けさが残る教室を後にした。
・・・
わたしはありさちゃんのことが好きだ。
……ただ、その“好き”は友達としてではなく、恋愛的な意味でのものだが…。
この気持ちに初めて気づいたのは、この学校に入学して5年目の時だった。
普段からドジなわたしは下校中道端で転んでしまう。
その時、一緒にいたありさちゃんが手を差し伸べてくれた際に“ドキッ”としたのがきっかけだったと思う。
その日からありさちゃんのことを意識してしまい、事あるごとに頬が赤くなってしまうほどになっていた。
でも、気持ちを伝えられたのは6年生になり、半年が過ぎる頃だった。
それまでは嫌われるのが怖くて、中々気持ちを伝えられずにいたが、川辺の公園で2人っきりになった際に、勇気を出して告白をしてしまった。
「……かな、そんな風に考えてたんだ。………わかった。…いいよ。」
ありさちゃんからの答えは意外にもOKだった。
もしかしたら、一生口を聞いてもらえない可能性もあったので、心の底から安心したのを覚えている。
「でも、その代わり1つだけ条件があるの。」
「…な、なに?」
「付き合う代わりに、……週に2回、かなのお尻を“おしおき”させて?」
・
…それから、今に至る。
わたしは約束通り、週に2回、ありさちゃんにお尻を差し出し、いつも真っ赤になるまで“おしおき”された。
その代わり、ありさちゃんはわたしとデートをしてくれる。
恋人繋ぎで買い物も付き合ってくれるし、パフェを“あーん”と食べさせてもらうこともあった。
互いに満たされるこの時間は、きっと“わたし達”にとって、かけがえのないものだと思う。
・・・
夕日で茜に染まる道を歩いていると、“目的の場所”にたどり着く。
そこは最低限の防音加工を施したプレハブ小屋がいくつも立ち並ぶカラオケボックスで、夕陽に照らされる光景は、やや寂しさを引き立たせていた。
…そして、わたし達の“いつもの場所”でもある。
普通、カラオケボックスというと、学校が終わるこの時間は制服を着た人達がいっぱいいるものだ。
それに比べ、ここはそことは無縁というようで人っけはほとんどなく、ぽつぽつと制服を着た男女のカップルだろう2人組がいるだけだった。
まあ人気がない理由としては、カラオケマシンが古い機種のため、最新曲の更新が遅れているからだ。
でも、カラオケ料金の中に“お菓子のセット”も入っており、わざわざ持ち込まずに済む点。
そして何より完全個室で窓もなく、“一応防音”のため、わたし達には都合が良かった。
正面のプレハブ小屋で受付を済ませると、お菓子セットと9番の番号札をもらう。
9番の小屋は1番奥にひっそりとたたずみ、ぱっと見正面からは出入りが見えないため、少し落ち着く穴場だった。
“ガチャッ”
「…いつもの匂い。」
中に入るとテレビに映った歌手へのインタビュー映像と、タバコのこもった香りがわたし達を迎えてくれた。
部屋の中はそこそこの広さで、2人だけで使うには広過ぎるくらいだ。
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えると、“ふかふか”だが少し年季の入ったソファに座り、ランドセルを下ろした。
「はぁ…。疲れたぁ。」
ありさちゃんは隣に座ってわたしの膝を枕にして横になる。
そしてチラッとこちらを見つめてきた。
“ドキッ”
その行動にわたしの胸が熱くなり、鼓動が早くなったように感じる。
「ありさちゃん。…もう我慢できないよぉ…。」
「……じゃあ、“おしおき”が終わってからね。…立って。」
「…うん。」
ありさちゃんはわたしの膝から顔を上げ、ちょこんとソファに座る。
わたしは腰を上げ、ありさちゃんの正面に立ち、手を後ろに組んだ。
「……下ろすね。」
「っ…。……お願い。」
“ジー、スルッ”
わたしが履いているジーパンのチャックが下がり、腰に手を回される。
そこから一気に太ももまでジーパンが下され、パンツが丸見えの状態となってしまった。
「…今日は少し大人っぽいんだね。……新しく買ったの?」
「だって、…この前のやつ子供っぽいって言われたから…。」
「それは、かなが“くまさんマーク”のなんて履いてるから。」
「っ!?…言わないでっ。」
自分の下着の柄を言われ、わたしは恥ずかしさから少し汗をかいてしまう。
ありさちゃんは「ごめんごめん。」と笑顔を見せて、パンツに手をかけた。
「じゃあ、これも脱がすよ?」
「…もう、焦らさないで一気に脱がせて。」
いじわるなありさちゃんは、わたしの要望を無視して少しずつ脱がしていく。
徐々に晒されていくわたしの“恥ずかしい部分”がドキドキと熱くなっているのがわかる。
「こっちは相変わらず子供っぽいね。」
「っ!?ありさちゃんのばかっ!」
わたしはありさちゃんから目を逸らし、少し涙目になってしまう。
慣れているのか、ありさちゃんはわたしのお尻を撫でながら、膝の上へと連行させた。
「…かな。怒ってる?」
「怒ってないもん。…でも、終わったらいっぱい“ぎゅー”して?」
「わかった。ちゃんと頑張れたらしてあげるね?」
“ペンペン”
「じゃあ、…始めるよ。」
「…うん。」
パァンッ!
「んっ!」
その合図とともに、わたしのお尻に痛みが走る。
こうして今日も、この“おしおき”の時間が始まった。
・・・
本当は恥ずかしいため、この“おしおき”はお互いの家でしたかったが、それぞれの家に姉妹がいて、音ですぐにバレてしまう。
“おしおき場所”で悩んでいたわたし達が散策をした末に見つけたのがこのカラオケボックスだった。
家から少し遠いが、真っ暗になる前に帰ってしまえば問題がない。
ここには流石に鍵は付いていないが、普段“店員さん”が確認に来ないことは、何回か来てみて確認済みだ。
それからはここの“常連”になり、来るたびにわたしのお尻は赤く染められてきた。
・・・
バヂッ!バヂンッ!
「いっ!あんっ!」
お尻が真っ赤に腫れ上がる頃だが、ありさちゃんの平手は止まる気配がない。
何度も“おしおき”され、たくさんの経験をしたが、この痛みにはいまだに慣れることが出来ずにいた。
パァンッ!バヂンッ!バッヂィィンッ!!
「きゃぁぁぁっ!!」
お尻の真ん中に連打を浴びせられ、わたしの身体が仰け反った。
目からは涙が溢れ出し、革製のソファに“ポトポト”と水たまりを作っていく。
「あ、ありさちゃん…。」
「なに?」
バヂンッ!
「い゛っ!…お願い、少し…休憩させて…。」
「はぁ…仕方ないなあ…。少しだけね?」
「はぁ…はあ…、ありがと…。」
ありさちゃんの平手が止まり、その手はわたしのお尻を撫でる手に変わる。
優しく撫でられるごとにわたしのお尻は“ピクンッ”と反応し、その優しさへ素直に慣れずにいた。
・
「…かな、そろそろ続きするよ?」
「…うん。」
数分後、ありさちゃんの撫でる手が止まり、“ペンペンッ”とわたしのお尻へ合図する。
「この後は“定規”使うから、かなの筆箱から出して。」
「……今日も、使うの?」
「もちろん。…だって、今日もかなが寝坊して私と一緒に学校行けなかったじゃん。…そのおしおきだよ?」
「あ、あれはっ!目覚ましをかけ忘れて…。」
「それもかなが悪いんでしょ?…言い訳するなら太ももも“おしおき”するよ?」
「っ!?…わかったよぉ。」
“しぶしぶ”とわたしは立ち上がり、自分の筆箱からピンク色の定規を出す。
ありさちゃんへ差し出すと、ちょこんと膝に戻った。
「いい子だね。…ちゃんと自分で戻れるようになって。」
「…だって、この前言い訳したら、ほんとに太もも叩いたじゃん。…あれほんとに痛かったんだからね。」
「…おしおきだからね。……じゃあ、ペンペンするよ。」
「…グスッ……。はーい。」
ビヂンッ!
「だいっ!」
お尻の真ん中に、定規の形をした痛みが広がった。
これまでの平手よりも鋭い痛みは、ソファにこぼれた水たまりの面積を広げていく。
ビヂンッ!ビヂンッ!
「あ゛んっ!ごめんなざいっ!!」
「…かな。この手はなに?」
すぐに耐えきれず、わたしはお尻に手を回してしまう。
触れた手には熱が伝わり、特に定規の当たった部分からは、熱いと思えるほどの温度が発せられていた。
「…やっぱり太ももも“おしおき”する?」
「いやっ!?太ももはいやぁっ!!」
「はぁ…今回だけだからね。……おてて戻して?…次庇ったらほんとに“おしおき”するからね?」
「…はい。」
“恐る恐る”手を戻すと、またお尻に定規を打ち付けられる。
庇いそうになる手を必死で握り、痛みに耐えた。
…それからしばらく、お寝坊の“おしおき”は続くのだった。
・
「はい、今日はもうおしまいだよ?」
「…グスッ……。ありがとうございました…。」
「うん。お礼も言えてえらいよ、かな。」
顔が涙と汗で塗られる頃、ようやく“おしおき”が終わる。
わたしの頭を優しく撫でられ、恥ずかしさと嬉しさから“湯気”が出そうな予感がした。
お腹部分は汗で蒸れ、きっと、ありさちゃんのお膝もかなり熱くなっているだろうと思う。
「ほら、ご褒美の“ぎゅー”だよ。」
「…でも、汗が。」
「いいからっ。」
ありさちゃんはわたしの身体を抱き上げると、そのまま腰に手を回し、“ぎゅっと”抱きしめてくれる。
「ちゃんと“おしおき”受けれてえらかったね?…私、頑張り屋さんな“かなのこと”好きだよ。」
「わたしも、ありさちゃんのこと大好き…。」
耳元で囁かれる声に、わたしの胸は別の暖かさで満たされるような気がした。
「ん…。」
ありさちゃんは、そのまま自分の唇をわたしの唇に重ねる。
本当は味などしないのだろうが、わたしにはとても“甘い味”に感じられた。
…キスはしばらく続き、カラオケのコースが終わる時間まで“甘いとき”を過ごすのだった。
・
「かな。また来ようね?」
「…うん。また、いこうね。」
番号札を返し、カラオケボックスを出ると、あたりは夕暮れ時で、街頭に光が灯っていた。
少し肌寒い中だが、ありさちゃんと恋人繋ぎをすることで、“手と心”は暖かさを保っている。
『今日もいっぱい“おしおき”されちゃったなぁ…。』
初めはこの“じんじん”とする痛みが嫌いだったが、2人を繋いでくれるものとして、今ではすっかり癖になっている。
空いた手でお尻をさすりながら、わたしは“クスリッ”と笑ってしまう。
「かな、どうしたの?」
「ううん。なんでもないっ!」
「ふふっ、なにそれ変なのー。」
何気ないありさちゃんの笑顔に、わたしの心が癒されていく。
こんなかけがえのない時間を味わいながら、わたし達は帰り道を歩き続けるのだった…。
「完」
学校が終わり、わたしがランドセルに荷物を詰めていると、頰を赤くしたありさちゃんが近づいてきた。
「……うん。…わかった。」
“いつもの”と言われただけで、わたしの頰も赤く染まり出す。
そのまましまいかけていた教科書を急いで押し込めると、静けさが残る教室を後にした。
・・・
わたしはありさちゃんのことが好きだ。
……ただ、その“好き”は友達としてではなく、恋愛的な意味でのものだが…。
この気持ちに初めて気づいたのは、この学校に入学して5年目の時だった。
普段からドジなわたしは下校中道端で転んでしまう。
その時、一緒にいたありさちゃんが手を差し伸べてくれた際に“ドキッ”としたのがきっかけだったと思う。
その日からありさちゃんのことを意識してしまい、事あるごとに頬が赤くなってしまうほどになっていた。
でも、気持ちを伝えられたのは6年生になり、半年が過ぎる頃だった。
それまでは嫌われるのが怖くて、中々気持ちを伝えられずにいたが、川辺の公園で2人っきりになった際に、勇気を出して告白をしてしまった。
「……かな、そんな風に考えてたんだ。………わかった。…いいよ。」
ありさちゃんからの答えは意外にもOKだった。
もしかしたら、一生口を聞いてもらえない可能性もあったので、心の底から安心したのを覚えている。
「でも、その代わり1つだけ条件があるの。」
「…な、なに?」
「付き合う代わりに、……週に2回、かなのお尻を“おしおき”させて?」
・
…それから、今に至る。
わたしは約束通り、週に2回、ありさちゃんにお尻を差し出し、いつも真っ赤になるまで“おしおき”された。
その代わり、ありさちゃんはわたしとデートをしてくれる。
恋人繋ぎで買い物も付き合ってくれるし、パフェを“あーん”と食べさせてもらうこともあった。
互いに満たされるこの時間は、きっと“わたし達”にとって、かけがえのないものだと思う。
・・・
夕日で茜に染まる道を歩いていると、“目的の場所”にたどり着く。
そこは最低限の防音加工を施したプレハブ小屋がいくつも立ち並ぶカラオケボックスで、夕陽に照らされる光景は、やや寂しさを引き立たせていた。
…そして、わたし達の“いつもの場所”でもある。
普通、カラオケボックスというと、学校が終わるこの時間は制服を着た人達がいっぱいいるものだ。
それに比べ、ここはそことは無縁というようで人っけはほとんどなく、ぽつぽつと制服を着た男女のカップルだろう2人組がいるだけだった。
まあ人気がない理由としては、カラオケマシンが古い機種のため、最新曲の更新が遅れているからだ。
でも、カラオケ料金の中に“お菓子のセット”も入っており、わざわざ持ち込まずに済む点。
そして何より完全個室で窓もなく、“一応防音”のため、わたし達には都合が良かった。
正面のプレハブ小屋で受付を済ませると、お菓子セットと9番の番号札をもらう。
9番の小屋は1番奥にひっそりとたたずみ、ぱっと見正面からは出入りが見えないため、少し落ち着く穴場だった。
“ガチャッ”
「…いつもの匂い。」
中に入るとテレビに映った歌手へのインタビュー映像と、タバコのこもった香りがわたし達を迎えてくれた。
部屋の中はそこそこの広さで、2人だけで使うには広過ぎるくらいだ。
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えると、“ふかふか”だが少し年季の入ったソファに座り、ランドセルを下ろした。
「はぁ…。疲れたぁ。」
ありさちゃんは隣に座ってわたしの膝を枕にして横になる。
そしてチラッとこちらを見つめてきた。
“ドキッ”
その行動にわたしの胸が熱くなり、鼓動が早くなったように感じる。
「ありさちゃん。…もう我慢できないよぉ…。」
「……じゃあ、“おしおき”が終わってからね。…立って。」
「…うん。」
ありさちゃんはわたしの膝から顔を上げ、ちょこんとソファに座る。
わたしは腰を上げ、ありさちゃんの正面に立ち、手を後ろに組んだ。
「……下ろすね。」
「っ…。……お願い。」
“ジー、スルッ”
わたしが履いているジーパンのチャックが下がり、腰に手を回される。
そこから一気に太ももまでジーパンが下され、パンツが丸見えの状態となってしまった。
「…今日は少し大人っぽいんだね。……新しく買ったの?」
「だって、…この前のやつ子供っぽいって言われたから…。」
「それは、かなが“くまさんマーク”のなんて履いてるから。」
「っ!?…言わないでっ。」
自分の下着の柄を言われ、わたしは恥ずかしさから少し汗をかいてしまう。
ありさちゃんは「ごめんごめん。」と笑顔を見せて、パンツに手をかけた。
「じゃあ、これも脱がすよ?」
「…もう、焦らさないで一気に脱がせて。」
いじわるなありさちゃんは、わたしの要望を無視して少しずつ脱がしていく。
徐々に晒されていくわたしの“恥ずかしい部分”がドキドキと熱くなっているのがわかる。
「こっちは相変わらず子供っぽいね。」
「っ!?ありさちゃんのばかっ!」
わたしはありさちゃんから目を逸らし、少し涙目になってしまう。
慣れているのか、ありさちゃんはわたしのお尻を撫でながら、膝の上へと連行させた。
「…かな。怒ってる?」
「怒ってないもん。…でも、終わったらいっぱい“ぎゅー”して?」
「わかった。ちゃんと頑張れたらしてあげるね?」
“ペンペン”
「じゃあ、…始めるよ。」
「…うん。」
パァンッ!
「んっ!」
その合図とともに、わたしのお尻に痛みが走る。
こうして今日も、この“おしおき”の時間が始まった。
・・・
本当は恥ずかしいため、この“おしおき”はお互いの家でしたかったが、それぞれの家に姉妹がいて、音ですぐにバレてしまう。
“おしおき場所”で悩んでいたわたし達が散策をした末に見つけたのがこのカラオケボックスだった。
家から少し遠いが、真っ暗になる前に帰ってしまえば問題がない。
ここには流石に鍵は付いていないが、普段“店員さん”が確認に来ないことは、何回か来てみて確認済みだ。
それからはここの“常連”になり、来るたびにわたしのお尻は赤く染められてきた。
・・・
バヂッ!バヂンッ!
「いっ!あんっ!」
お尻が真っ赤に腫れ上がる頃だが、ありさちゃんの平手は止まる気配がない。
何度も“おしおき”され、たくさんの経験をしたが、この痛みにはいまだに慣れることが出来ずにいた。
パァンッ!バヂンッ!バッヂィィンッ!!
「きゃぁぁぁっ!!」
お尻の真ん中に連打を浴びせられ、わたしの身体が仰け反った。
目からは涙が溢れ出し、革製のソファに“ポトポト”と水たまりを作っていく。
「あ、ありさちゃん…。」
「なに?」
バヂンッ!
「い゛っ!…お願い、少し…休憩させて…。」
「はぁ…仕方ないなあ…。少しだけね?」
「はぁ…はあ…、ありがと…。」
ありさちゃんの平手が止まり、その手はわたしのお尻を撫でる手に変わる。
優しく撫でられるごとにわたしのお尻は“ピクンッ”と反応し、その優しさへ素直に慣れずにいた。
・
「…かな、そろそろ続きするよ?」
「…うん。」
数分後、ありさちゃんの撫でる手が止まり、“ペンペンッ”とわたしのお尻へ合図する。
「この後は“定規”使うから、かなの筆箱から出して。」
「……今日も、使うの?」
「もちろん。…だって、今日もかなが寝坊して私と一緒に学校行けなかったじゃん。…そのおしおきだよ?」
「あ、あれはっ!目覚ましをかけ忘れて…。」
「それもかなが悪いんでしょ?…言い訳するなら太ももも“おしおき”するよ?」
「っ!?…わかったよぉ。」
“しぶしぶ”とわたしは立ち上がり、自分の筆箱からピンク色の定規を出す。
ありさちゃんへ差し出すと、ちょこんと膝に戻った。
「いい子だね。…ちゃんと自分で戻れるようになって。」
「…だって、この前言い訳したら、ほんとに太もも叩いたじゃん。…あれほんとに痛かったんだからね。」
「…おしおきだからね。……じゃあ、ペンペンするよ。」
「…グスッ……。はーい。」
ビヂンッ!
「だいっ!」
お尻の真ん中に、定規の形をした痛みが広がった。
これまでの平手よりも鋭い痛みは、ソファにこぼれた水たまりの面積を広げていく。
ビヂンッ!ビヂンッ!
「あ゛んっ!ごめんなざいっ!!」
「…かな。この手はなに?」
すぐに耐えきれず、わたしはお尻に手を回してしまう。
触れた手には熱が伝わり、特に定規の当たった部分からは、熱いと思えるほどの温度が発せられていた。
「…やっぱり太ももも“おしおき”する?」
「いやっ!?太ももはいやぁっ!!」
「はぁ…今回だけだからね。……おてて戻して?…次庇ったらほんとに“おしおき”するからね?」
「…はい。」
“恐る恐る”手を戻すと、またお尻に定規を打ち付けられる。
庇いそうになる手を必死で握り、痛みに耐えた。
…それからしばらく、お寝坊の“おしおき”は続くのだった。
・
「はい、今日はもうおしまいだよ?」
「…グスッ……。ありがとうございました…。」
「うん。お礼も言えてえらいよ、かな。」
顔が涙と汗で塗られる頃、ようやく“おしおき”が終わる。
わたしの頭を優しく撫でられ、恥ずかしさと嬉しさから“湯気”が出そうな予感がした。
お腹部分は汗で蒸れ、きっと、ありさちゃんのお膝もかなり熱くなっているだろうと思う。
「ほら、ご褒美の“ぎゅー”だよ。」
「…でも、汗が。」
「いいからっ。」
ありさちゃんはわたしの身体を抱き上げると、そのまま腰に手を回し、“ぎゅっと”抱きしめてくれる。
「ちゃんと“おしおき”受けれてえらかったね?…私、頑張り屋さんな“かなのこと”好きだよ。」
「わたしも、ありさちゃんのこと大好き…。」
耳元で囁かれる声に、わたしの胸は別の暖かさで満たされるような気がした。
「ん…。」
ありさちゃんは、そのまま自分の唇をわたしの唇に重ねる。
本当は味などしないのだろうが、わたしにはとても“甘い味”に感じられた。
…キスはしばらく続き、カラオケのコースが終わる時間まで“甘いとき”を過ごすのだった。
・
「かな。また来ようね?」
「…うん。また、いこうね。」
番号札を返し、カラオケボックスを出ると、あたりは夕暮れ時で、街頭に光が灯っていた。
少し肌寒い中だが、ありさちゃんと恋人繋ぎをすることで、“手と心”は暖かさを保っている。
『今日もいっぱい“おしおき”されちゃったなぁ…。』
初めはこの“じんじん”とする痛みが嫌いだったが、2人を繋いでくれるものとして、今ではすっかり癖になっている。
空いた手でお尻をさすりながら、わたしは“クスリッ”と笑ってしまう。
「かな、どうしたの?」
「ううん。なんでもないっ!」
「ふふっ、なにそれ変なのー。」
何気ないありさちゃんの笑顔に、わたしの心が癒されていく。
こんなかけがえのない時間を味わいながら、わたし達は帰り道を歩き続けるのだった…。
「完」
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