27 / 51
母の“取説”をわたしにください
しおりを挟む
雪が“チラチラ”と降り始め、辺りの景色に白がプラスされる頃、わたしは、学校の帰り道を歩いていた。
「はぁ…。」
…だが、その足取りは重く、中々家にたどり着くことが出来ずにいた。
気分が落ち込む理由としては、わたしの“母”が、大きな原因となっている。
というのも、母はとても“ヒステリック”なのだ。
わたしの家では、さまざまルールがあり、それを破ると、お尻が真っ赤になるまでお仕置きされてしまう。
しかも、ルールは初めから教えられるわけではなく、違反した後、“お仕置き”されながら、厳しく注意をされるのだ。
これまで、“なぜ、そこで怒るのか”わからないところで怒られ続け、わたしの精神は、限界を迎えつつあった。
……今日こそは、お仕置きを受けずに済むといいのだが…。
・
“ガチャッ”
「ただいまぁ…。」
ようやくたどり着いた我が家のドアを開け、“気分の乗らない”挨拶を玄関へ響かせる。
…だが、母からの返答はない。
これも、日常の光景だ。
そして、わたしはドアの鍵をかけ、“いつもの”行動を行った。
・門限の17時までに帰宅すること
・「ただいま。」の挨拶は、必ず、何よりも始めに行うこと
・帰ってきたら靴を揃えること
・靴下は帰宅してすぐに脱ぎ、洗濯かごへ入れること
・手洗い/うがいは、それぞれ“60秒以上”は行うこと
これは、帰宅時のわたしが行ったことだ。
ただ“帰宅するだけ”でも、このように、さまざまなルールがある。
普通は当たり前のように思えることでも、こうして“ルール”にされてしまうと、なかなかうんざりするものだ。
ようやく、全ての行動を終えたわたしは、母に報告をするため、キッチンへと向かった。
・
「…お母さん、ただいま。」
「おかえりなさい。今日もちゃんと時間通りに帰って来れたわね。……“いつもの”はしたんでしょ?」
「うん。したよ。」
「わかったわ。…あと、今日テストは帰ってきた?」
「帰ってきたよ。…はい、ちゃんと“95点以上”だから、安心して。」
この質問がくることがわかっていたわたしは、手に持っていたテスト用紙を母に手渡す。
母は、それを右手で受け取り、点数と、“不正がないか”を確認していた。
もちろん、学校でのテストの点数にも、母のルールが存在する。
『全てのテストで“95点以上”の点数を取ること。』
それが、母が許容できるギリギリの点数らしい。
わたしが一度、“93点”のテスト用紙を渡した時、母は劣化の如く怒りだし、1週間、毎日“お尻100叩き”をされたほどだ。
その日のことがトラウマとなり、必死で勉強し、なんとかこの点数を維持している。
「…いいわ。じゃあ、ママはご飯の準備をするから、それまでに宿題を終わしておきなさい。」
「わかった。」
…もちろん、この“宿題を夕食前に終わらせる”のも、ルールの1つである。
現在は白さを保ち、無事に通過することができたお尻のためにも、わたしは、急いで部屋に戻るのだった。
・
「ゆきえー。ご飯できたわよーっ!」
「はーいっ!」
なんとか、宿題が終わる頃、ちょうど母からご飯の合図が出る。
無事に宿題が終わったことに、ひとまず安堵の色を浮かべると、その“証拠”を持って、キッチンへと向かった。
・
「宿題も問題ないわね。…じゃあ、ご飯にしましょう。」
「…うん。」
少し“ドキドキ”しながら、母のチェックが終わる。
もし、“不備”があった場合は、そのままお仕置きに繋がるから、この瞬間まで、気が抜けないでいた。
どうやら、無事に宿題はクリアできたらしい。
額から流れる一筋の汗を拭うと、わたしは食器棚からお皿を出し、テーブルへと並べた。
そこに盛り付けられる料理は、育ち盛りのお腹に刺激を与えるものばかりだ。
……この“性格”でなければ、料理上手の自慢できるお母さんなのに…。
そんなことを頭の片隅に置きながら、わたしはキッチンの隅で、母が座るのを待っていた。
・ご飯の席は、必ず“母が座った後”に、座ること
このルールがある以上、わたしが先に座ることは許されない。
“グー”っとお腹が催促をする中、漂う料理の香りが、酷く煽るようにわたしを撫でてきた。
・
「いただきます。」
「…いただきます。」
その後、母が席に座り、ようやくわたしも座る許可が出た。
目の前にある“色とりどり”の料理に、『ゴクリッ』と唾を飲む。
“左手”に箸を持つと、母が食べ始めるのを、静かに待った。
・箸は左手で持つこと
・食べる時も同様に、“母が食べた後”に、食べ始めること
随分前に注意されたルールが、わたしの箸の進行を邪魔する。
そもそも、わたしは“右利き”なのに、なぜ、箸を左手で持たなければいけないのか、今でもよくわかっていない。
…予想としては、母は“左利き”のため、右利きのわたしに嫉妬心を抱いているのかもしれないが。
「うん。今日も美味しくできたわね。」
母の自画自賛の評価が聞こえ、わたしも箸を動かし始める。
箸で掴んだのは、ずっとお腹を匂いで誘惑する唐揚げだ。
少し、小ぶりに切られた一切れを頬張ると、口の中に“ジュワッと”肉汁が広がり、旨味が押し寄せてきた。
期待していた以上の味に、つい、わたしの顔は笑顔になる。
……だが、その幸せな時間は、長く続かなかった。
「ゆきえっ!ほっぺたっ!!」
「ごくんっ。えっ!?…なんでぇっ!?」
「いいからっ!早くっ!」
「は、はいぃっ!?」
母は椅子から立ち上がり、わたしを睨みつけた。
この宣言は、わたしが“ルール違反”をしたことを示す。
……でも、ルールはきちんと守っていたはずなのにどうして…。
訳がわからないまま、わたしは母に頬を差し出した。
バヂンッ!!
「んっ!」
「なんでサラダから先に食べないのっ!…唐揚げはサラダの後でしょっ!!」
…どうやら、わたしの食べる順番が気に食わなかったらしい。
左頰から押し寄せる“ジグジグ”として痛みから、とっさに両手を当ててしまう。
だが、わたしはここで疑問に思う。
今日までの食べる順番は、「おかず→サラダ」と、以前に母から注意をされており、今もその通りの順番だったためだ。
「お、お母さん。この前、サラダの順番は後って言ってたよねっ!?」
「この前はこの前よっ!今日はお野菜にこだわったから、順番が違うのっ!」
「そ、そんなぁ…。」
あまりに理不尽な理由に、流石のわたしも、動揺の色を隠すことができなかった。
「さあ、ルールを守れなかった罰として、“お尻100叩き”のお仕置きをするわっ!…ゆきえっ!お尻を出しなさいっ!!」
「…嫌だっ!今日のはいくらなんでも納得できないよっ!」
「ママに逆らうのねっ!もう一回ほっぺた叩かないとわからないのかしらっ!?」
「嫌ったら嫌なのっ!お尻もほっぺたも出さないっ!!」
わたしは椅子に座ったまま、ほっぺたを庇い、きつく母を睨め付ける。
…だが、この時間は長く続くことはなかった。
「……いい度胸ね。なら、代わりのお仕置きとして、今後一切、お小遣いは抜きよっ!」
「はぁっ!?…そんなの嫌に決まってるじゃんっ!!」
「なら、早くお尻出しなさいっ!!」
「お、…お母さんのいじわるっ!!」
わたしは涙目で抗議をするが、母の意見は変わることがない。
そして、厄介なことに、こうなってしまった母は“本気”なのだ。
…恐らく、いまお尻を出さないと、本当にお小遣いが貰えなくなるだろう。
「……もう一回だけ言うわよ。ゆきえ、お尻を出しなさいっ!」
「……グスッ。…わかったよぉっ!もうっ!…出せばいいんでしょっ!!」
…こうして、生まれて初めての母への反抗は、呆気なく終わりを迎える。
“しぶしぶ”椅子から立ち上がり、ズボンとパンツを足首まで一気に下ろした。
うっすらと産毛の生え始めた“大切なところ”が、母の前に晒される。
恥ずかしさもあったが、“怒りの感情”が勝り、涙目で変わらず母を睨みつけた。
そんな、気をつけの姿勢をとっているわたしへ与えられたのは、左右の頰への平手打ちだった。
・
「後ろ向きで、椅子の上へ膝立ちになって、手を背もたれの上に置きなさいっ!」
10発ほど、左右の頰をぶたれると、今度は姿勢の指示を与えられる。
“ズキズキ”と痛む頰をさすりながら、言われた姿勢になると、“ギュッ”とお尻を抓られる。
「い゛っ!」
「覚悟しなさいっ!散々、生意気言った罰として、この真っ白なお尻を真っ赤にしてあげるから。
…それに、今日から3か月間、毎日“お尻100叩き”をしてあげますっ!」
「さっ、3か月っ!?…いくらなんでも厳しすぎでしょっ!?…い゛ぃっ!」
ギュゥゥッ
お尻を更に強く抓られ、わたしはそれ以上の言葉を続けることが出来なかった。
「ママに逆らった罰はそれだけ重いのよっ!…ほら、まずは今日の分のお仕置きよっ!もっとお尻突き出しなさいっ!!」
ギュッ!
「あ゛んっ!」
手前に寄せられるように、抓られながら、お尻を強く引っ張られた。
その痛みに逆らうことが出来ず、お尻を突き出され、更に恥ずかしい姿勢にされる。
羞恥心が疼き、すでに真っ赤に晴れた頰に、熱が追加される感覚を覚えた。
「まったく、ママに逆らうなんて、100年早いことを教えてあげるわ。」
パッ
ようやく、お尻を離され、“ズキズキ”とする痛みが残される。
母は、“はぁーっと”手に息をかけると、その腕を高く振り上げた。
・
バッヂィンッ!
「い゛っ!…お仕置き、ありがとうございますっ!」
100叩きが始まり、しばらく時間が経つ。
すでにお尻は、全体的に真っ赤な赤へと染め上げられ、痛々しい叩かれる音を部屋中に響かせていた。
バッヂィィンッ!!パァァンッ!!
「いっだぁぁいっ!!だいぃっ!…お、お仕置き、ありがとうございますぅぅっ!!」
この叩かれることへの“お礼”も、もちろん、ルールで決まっていることだ。
本当は、叩かれるのにお礼なんて言いたくないが、これを言わないといつまでも続けられるので、“しぶしぶ”口に出している。
バッヂィィィン!!!
「ひゃうぅっっ!!」
下からすくい上げるように尻たぶを叩かれ、お尻全体へ、鈍い痛みが広がる。
「……お礼はっ!?」
バッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!…おじおぎ、ありがとうございまずぅぅっ!!」
あまりの痛みから、咄嗟にお礼を言うことができなかった。
そのお尻へ、再度同じ痛みを与えられ、悲鳴を上げるようにお礼を口にする。
お仕置きが始まる前の“余裕”はとっくに無くなり、今は、全身から汗を流し、震えながら次の痛みを待っていた。
「お礼を忘れるなんて…。このお尻は反省してないのかしらっ!?」
パァァンッ!!パァァンッ!!バッヂィィンッ!!
「ああ゛ぁっ!!…おっ、おじおぎ、ありがとうございまずぅぅっ!!もうゆるじてくださいぃぃっ!!」
何十と、母の手形がびっしりとついたお尻を、更に突き出しながら、必死に赦しをこう。
…だが、母の平手が収まることはない。
その後もしばらく、わたしの悲鳴とお尻をぶたれる音が、夕暮れのキッチンにこだましていた。
・
「今日のお仕置きはここまでだけど、明日からはもっと厳しくするからねっ!それに、今日の晩ご飯は抜きですっ!
…わかったら、そこでしばらく、“お立たせの姿勢”になりなさいっ。」
「あ゛い…。おじおぎ、ありがどぉございました。」
キッチンの隅を指差され、わたしは素直に従い、言われた通りの姿勢となる。
真っ赤に腫れ上がった上に、母の手形の痣が浮かび始めたところで、ようやくお仕置きが終わった。
すでに声は枯れ果て、明日の“お礼”も大変になるだろうということが予想できるのだった。
・
…今回も、結局お仕置きを免れることはできなかった。
母のあの性格は、いまに始まったことではないが、いまだに慣れることができない自分がいる。
そろそろ、わたしの身体も成長し始め、“大事なところ”を見られる恥ずかしさが、更に強くなっていた。
……そんなわたしは、何年も前から願っていることがある。
『サンタさん。お願いします。……今年こそ、母の“取説”をわたしにください。』
「完」
「はぁ…。」
…だが、その足取りは重く、中々家にたどり着くことが出来ずにいた。
気分が落ち込む理由としては、わたしの“母”が、大きな原因となっている。
というのも、母はとても“ヒステリック”なのだ。
わたしの家では、さまざまルールがあり、それを破ると、お尻が真っ赤になるまでお仕置きされてしまう。
しかも、ルールは初めから教えられるわけではなく、違反した後、“お仕置き”されながら、厳しく注意をされるのだ。
これまで、“なぜ、そこで怒るのか”わからないところで怒られ続け、わたしの精神は、限界を迎えつつあった。
……今日こそは、お仕置きを受けずに済むといいのだが…。
・
“ガチャッ”
「ただいまぁ…。」
ようやくたどり着いた我が家のドアを開け、“気分の乗らない”挨拶を玄関へ響かせる。
…だが、母からの返答はない。
これも、日常の光景だ。
そして、わたしはドアの鍵をかけ、“いつもの”行動を行った。
・門限の17時までに帰宅すること
・「ただいま。」の挨拶は、必ず、何よりも始めに行うこと
・帰ってきたら靴を揃えること
・靴下は帰宅してすぐに脱ぎ、洗濯かごへ入れること
・手洗い/うがいは、それぞれ“60秒以上”は行うこと
これは、帰宅時のわたしが行ったことだ。
ただ“帰宅するだけ”でも、このように、さまざまなルールがある。
普通は当たり前のように思えることでも、こうして“ルール”にされてしまうと、なかなかうんざりするものだ。
ようやく、全ての行動を終えたわたしは、母に報告をするため、キッチンへと向かった。
・
「…お母さん、ただいま。」
「おかえりなさい。今日もちゃんと時間通りに帰って来れたわね。……“いつもの”はしたんでしょ?」
「うん。したよ。」
「わかったわ。…あと、今日テストは帰ってきた?」
「帰ってきたよ。…はい、ちゃんと“95点以上”だから、安心して。」
この質問がくることがわかっていたわたしは、手に持っていたテスト用紙を母に手渡す。
母は、それを右手で受け取り、点数と、“不正がないか”を確認していた。
もちろん、学校でのテストの点数にも、母のルールが存在する。
『全てのテストで“95点以上”の点数を取ること。』
それが、母が許容できるギリギリの点数らしい。
わたしが一度、“93点”のテスト用紙を渡した時、母は劣化の如く怒りだし、1週間、毎日“お尻100叩き”をされたほどだ。
その日のことがトラウマとなり、必死で勉強し、なんとかこの点数を維持している。
「…いいわ。じゃあ、ママはご飯の準備をするから、それまでに宿題を終わしておきなさい。」
「わかった。」
…もちろん、この“宿題を夕食前に終わらせる”のも、ルールの1つである。
現在は白さを保ち、無事に通過することができたお尻のためにも、わたしは、急いで部屋に戻るのだった。
・
「ゆきえー。ご飯できたわよーっ!」
「はーいっ!」
なんとか、宿題が終わる頃、ちょうど母からご飯の合図が出る。
無事に宿題が終わったことに、ひとまず安堵の色を浮かべると、その“証拠”を持って、キッチンへと向かった。
・
「宿題も問題ないわね。…じゃあ、ご飯にしましょう。」
「…うん。」
少し“ドキドキ”しながら、母のチェックが終わる。
もし、“不備”があった場合は、そのままお仕置きに繋がるから、この瞬間まで、気が抜けないでいた。
どうやら、無事に宿題はクリアできたらしい。
額から流れる一筋の汗を拭うと、わたしは食器棚からお皿を出し、テーブルへと並べた。
そこに盛り付けられる料理は、育ち盛りのお腹に刺激を与えるものばかりだ。
……この“性格”でなければ、料理上手の自慢できるお母さんなのに…。
そんなことを頭の片隅に置きながら、わたしはキッチンの隅で、母が座るのを待っていた。
・ご飯の席は、必ず“母が座った後”に、座ること
このルールがある以上、わたしが先に座ることは許されない。
“グー”っとお腹が催促をする中、漂う料理の香りが、酷く煽るようにわたしを撫でてきた。
・
「いただきます。」
「…いただきます。」
その後、母が席に座り、ようやくわたしも座る許可が出た。
目の前にある“色とりどり”の料理に、『ゴクリッ』と唾を飲む。
“左手”に箸を持つと、母が食べ始めるのを、静かに待った。
・箸は左手で持つこと
・食べる時も同様に、“母が食べた後”に、食べ始めること
随分前に注意されたルールが、わたしの箸の進行を邪魔する。
そもそも、わたしは“右利き”なのに、なぜ、箸を左手で持たなければいけないのか、今でもよくわかっていない。
…予想としては、母は“左利き”のため、右利きのわたしに嫉妬心を抱いているのかもしれないが。
「うん。今日も美味しくできたわね。」
母の自画自賛の評価が聞こえ、わたしも箸を動かし始める。
箸で掴んだのは、ずっとお腹を匂いで誘惑する唐揚げだ。
少し、小ぶりに切られた一切れを頬張ると、口の中に“ジュワッと”肉汁が広がり、旨味が押し寄せてきた。
期待していた以上の味に、つい、わたしの顔は笑顔になる。
……だが、その幸せな時間は、長く続かなかった。
「ゆきえっ!ほっぺたっ!!」
「ごくんっ。えっ!?…なんでぇっ!?」
「いいからっ!早くっ!」
「は、はいぃっ!?」
母は椅子から立ち上がり、わたしを睨みつけた。
この宣言は、わたしが“ルール違反”をしたことを示す。
……でも、ルールはきちんと守っていたはずなのにどうして…。
訳がわからないまま、わたしは母に頬を差し出した。
バヂンッ!!
「んっ!」
「なんでサラダから先に食べないのっ!…唐揚げはサラダの後でしょっ!!」
…どうやら、わたしの食べる順番が気に食わなかったらしい。
左頰から押し寄せる“ジグジグ”として痛みから、とっさに両手を当ててしまう。
だが、わたしはここで疑問に思う。
今日までの食べる順番は、「おかず→サラダ」と、以前に母から注意をされており、今もその通りの順番だったためだ。
「お、お母さん。この前、サラダの順番は後って言ってたよねっ!?」
「この前はこの前よっ!今日はお野菜にこだわったから、順番が違うのっ!」
「そ、そんなぁ…。」
あまりに理不尽な理由に、流石のわたしも、動揺の色を隠すことができなかった。
「さあ、ルールを守れなかった罰として、“お尻100叩き”のお仕置きをするわっ!…ゆきえっ!お尻を出しなさいっ!!」
「…嫌だっ!今日のはいくらなんでも納得できないよっ!」
「ママに逆らうのねっ!もう一回ほっぺた叩かないとわからないのかしらっ!?」
「嫌ったら嫌なのっ!お尻もほっぺたも出さないっ!!」
わたしは椅子に座ったまま、ほっぺたを庇い、きつく母を睨め付ける。
…だが、この時間は長く続くことはなかった。
「……いい度胸ね。なら、代わりのお仕置きとして、今後一切、お小遣いは抜きよっ!」
「はぁっ!?…そんなの嫌に決まってるじゃんっ!!」
「なら、早くお尻出しなさいっ!!」
「お、…お母さんのいじわるっ!!」
わたしは涙目で抗議をするが、母の意見は変わることがない。
そして、厄介なことに、こうなってしまった母は“本気”なのだ。
…恐らく、いまお尻を出さないと、本当にお小遣いが貰えなくなるだろう。
「……もう一回だけ言うわよ。ゆきえ、お尻を出しなさいっ!」
「……グスッ。…わかったよぉっ!もうっ!…出せばいいんでしょっ!!」
…こうして、生まれて初めての母への反抗は、呆気なく終わりを迎える。
“しぶしぶ”椅子から立ち上がり、ズボンとパンツを足首まで一気に下ろした。
うっすらと産毛の生え始めた“大切なところ”が、母の前に晒される。
恥ずかしさもあったが、“怒りの感情”が勝り、涙目で変わらず母を睨みつけた。
そんな、気をつけの姿勢をとっているわたしへ与えられたのは、左右の頰への平手打ちだった。
・
「後ろ向きで、椅子の上へ膝立ちになって、手を背もたれの上に置きなさいっ!」
10発ほど、左右の頰をぶたれると、今度は姿勢の指示を与えられる。
“ズキズキ”と痛む頰をさすりながら、言われた姿勢になると、“ギュッ”とお尻を抓られる。
「い゛っ!」
「覚悟しなさいっ!散々、生意気言った罰として、この真っ白なお尻を真っ赤にしてあげるから。
…それに、今日から3か月間、毎日“お尻100叩き”をしてあげますっ!」
「さっ、3か月っ!?…いくらなんでも厳しすぎでしょっ!?…い゛ぃっ!」
ギュゥゥッ
お尻を更に強く抓られ、わたしはそれ以上の言葉を続けることが出来なかった。
「ママに逆らった罰はそれだけ重いのよっ!…ほら、まずは今日の分のお仕置きよっ!もっとお尻突き出しなさいっ!!」
ギュッ!
「あ゛んっ!」
手前に寄せられるように、抓られながら、お尻を強く引っ張られた。
その痛みに逆らうことが出来ず、お尻を突き出され、更に恥ずかしい姿勢にされる。
羞恥心が疼き、すでに真っ赤に晴れた頰に、熱が追加される感覚を覚えた。
「まったく、ママに逆らうなんて、100年早いことを教えてあげるわ。」
パッ
ようやく、お尻を離され、“ズキズキ”とする痛みが残される。
母は、“はぁーっと”手に息をかけると、その腕を高く振り上げた。
・
バッヂィンッ!
「い゛っ!…お仕置き、ありがとうございますっ!」
100叩きが始まり、しばらく時間が経つ。
すでにお尻は、全体的に真っ赤な赤へと染め上げられ、痛々しい叩かれる音を部屋中に響かせていた。
バッヂィィンッ!!パァァンッ!!
「いっだぁぁいっ!!だいぃっ!…お、お仕置き、ありがとうございますぅぅっ!!」
この叩かれることへの“お礼”も、もちろん、ルールで決まっていることだ。
本当は、叩かれるのにお礼なんて言いたくないが、これを言わないといつまでも続けられるので、“しぶしぶ”口に出している。
バッヂィィィン!!!
「ひゃうぅっっ!!」
下からすくい上げるように尻たぶを叩かれ、お尻全体へ、鈍い痛みが広がる。
「……お礼はっ!?」
バッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!…おじおぎ、ありがとうございまずぅぅっ!!」
あまりの痛みから、咄嗟にお礼を言うことができなかった。
そのお尻へ、再度同じ痛みを与えられ、悲鳴を上げるようにお礼を口にする。
お仕置きが始まる前の“余裕”はとっくに無くなり、今は、全身から汗を流し、震えながら次の痛みを待っていた。
「お礼を忘れるなんて…。このお尻は反省してないのかしらっ!?」
パァァンッ!!パァァンッ!!バッヂィィンッ!!
「ああ゛ぁっ!!…おっ、おじおぎ、ありがとうございまずぅぅっ!!もうゆるじてくださいぃぃっ!!」
何十と、母の手形がびっしりとついたお尻を、更に突き出しながら、必死に赦しをこう。
…だが、母の平手が収まることはない。
その後もしばらく、わたしの悲鳴とお尻をぶたれる音が、夕暮れのキッチンにこだましていた。
・
「今日のお仕置きはここまでだけど、明日からはもっと厳しくするからねっ!それに、今日の晩ご飯は抜きですっ!
…わかったら、そこでしばらく、“お立たせの姿勢”になりなさいっ。」
「あ゛い…。おじおぎ、ありがどぉございました。」
キッチンの隅を指差され、わたしは素直に従い、言われた通りの姿勢となる。
真っ赤に腫れ上がった上に、母の手形の痣が浮かび始めたところで、ようやくお仕置きが終わった。
すでに声は枯れ果て、明日の“お礼”も大変になるだろうということが予想できるのだった。
・
…今回も、結局お仕置きを免れることはできなかった。
母のあの性格は、いまに始まったことではないが、いまだに慣れることができない自分がいる。
そろそろ、わたしの身体も成長し始め、“大事なところ”を見られる恥ずかしさが、更に強くなっていた。
……そんなわたしは、何年も前から願っていることがある。
『サンタさん。お願いします。……今年こそ、母の“取説”をわたしにください。』
「完」
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる