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“身代わり”折檻(後編)
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ビッヂィィンッ!!
「ごめんなざぁいっ!!」
ビッヂィンッ!
「いだいっ!」
次のお仕置きが始まり、しばらく時間が経つ。
現在は、夕日が部屋全体を照らし出し、お仕置きされている“大切なところ”が、更に赤く腫れているような感覚を得る。
ビッヂィィンッ!!
「んん゛っ!!」
ビヂンッ!
「い゛っ!」
相変わらず、わたし達のお仕置きは続いており、まだまだ終わる気配はない。
また、しばらくしてから気づいたが、わたしよりも、妹の方が強く叩かれている気がする。
その明らかに厳しい音は、わたしの身体を震え上がらせると同時に、ある“感情”が芽生えてくるのがわかった。
「…お、お母さん…。」
「なに?……まさか、“やめたい”なんていうんじゃないでしょうね?」
その考えに至った母が、きつくわたしを睨みつけてくる。
恐ろしさから、わたしは“ごくりっ”と唾を飲み、手汗の滲んだ妹の手を、再び、強く握った。
「違うのっ!…ただ、わたしよりも、りなの方が強く叩かれてる気がして…。」
「……お、お姉ちゃん?」
隣では、わたしが、“やめたい”と言い出すと思っていたであろう妹が、予想外の言葉に困惑している。
「なんだ、そんなこと?……当たり前でしょ?悪いのはりななんだから。…で、それがどうしたの?」
…“予想通り”の反応に、わたしの意思は決まる。
「なら、わたしの方を強く叩いてっ。…そして、もっとりなの方を弱くして欲しいのっ!」
「お、お姉ちゃんっ!?」
「……別にいいけど、…なんでそこまでするの?……お姉ちゃんが痛いだけでしょ?」
「それは、…ただ、りなが辛い顔を見たくないだけなのっ!……わたしはどれだけ痛くてもいいからっ!だから、お願いっ!!」
“理解できない”
そんな感じの反応をした母は、「はぁ…。」とため息をつく。
「わかった。じゃあ、お姉ちゃんのほうを強く叩いてあげる。……もっと脚を広げなさい。その分、りなの方を軽くしてあげるから。」
「……わかった。」
わたしは、“くいっと”さらに脚を広げる。
恥ずかしいという感情も湧き上がるが、それ以上に、厳しいお仕置きに対する“恐怖感”が、溢れ出しそうだった。
ビヂンッ!
「ん゛っ!」
先に、りなの方へ、定規が当たる。
これまでで、1番軽めの音が響き、“少し安心した”自分がいた気がした。
ビッヂィィンッ!!
「あ゛あんっ!!」
…代わりに、宣告通り、厳しい衝撃が、わたしに打ち付けられる。
当たった部分を確認すると、そこは青痣が浮かび上がっており、見ただけで痛々しさが伝わってくるものだった。
ビヂンッ!
「いだいっ!」
ビッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!!」
先程よりも、厳しい音が、部屋の中に鳴り響く。
さらに、濃い痣が浮かび上がったそこは、“ジグジグ”と痛み、わたしへ悲鳴を上げているようだった。
「…グスッ……。いだいよぉ…。」
再度、わたしの目からは、涙が決壊する。
「うぇぇーんっ!…お姉ちゃん、ごめんなざいぃっ!!」
その様子を見ていた妹は、大泣きで、“懺悔”するように、わたしの手を握りしめた。
「…グスッ…、大丈夫だよ。……“りなは悪くない”んだから、安心して。」
「お、お姉ちゃん……。」
少しでも妹を落ち着かせようと、必死に言葉を絞り出す。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛あぁぁぁぁっ!!」
「おねえちゃんっ!?」
「………それ、どういうこと?」
わたしの“大切なところ”が再度、悲鳴を上げる。
いきなりのことで、状況がわからない妹は、“あわあわ”と、わたしの様子を伺いながら、心配してくれているようだった。
「“りなが悪くない”って、どういうことかって聞いてるのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
……余程、気に召さなかったのだろうか。
冷たい顔をした母は、これまでよりもきつく、わたしを睨みつけた。
「…だ、だってっ!…おトイレに行かせなかったのは、お母さんでしょっ!?……だから、りなは悪くないのっ!!」
「お仕置き中にトイレに行きたがる、りなが悪いんでしょっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「い゛いぃっ!!……それでもっ!!…ちょ、長時間お仕置きしてたのは、お母さんでしょっ!?」
「ママが悪いって言いたいのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「だいぃぃっ!!」
…恐らく、初めてであろう。
自分のお仕置きでも、一度も反抗したことのないわたしが、りなへのお仕置きに対して、反抗してしまった。
『ここで“折れてはいけない”』
という謎の“意思”が働き、負けじと母を睨みつける。
「…なに、その目は?……はぁ…。
……わかったわ。りなは悪くないんでしょ?…なら、残りのお仕置きは、お姉ちゃん、あんたが全部受けなさい?」
「っ!?………わかった。じゃあ、もうりなは許して?」
「お姉ちゃんが“ちゃんと”受けられたら許すって最初に言ったでしょ?……りな、あんたはそのままの姿勢で反省してなさい。」
「は、はいぃっ!?」
母に睨まれ、“びくっと”なった妹が、姿勢を戻す。
そして母は、すぐにわたしの方へ向き直る。
「…そのまま待ってなさい。」
そういうと、母はキッチンへ行き、コップ一杯に“並々とついだ水”を持ってくる。
“バシャッ”
「…つめたぃっ!?」
「……知ってる?濡れた肌へのお仕置きは、さらに痛みを強く感じるのよ?…“ママへ反抗した罰”には、ちょうどいいでしょ?」
腫れた肌にかけられた水が、熱を少しずつ覚ましていく。
むしろ、『少し気持ちいい』と思ってしまったくらいだ。
「さあ、お姉ちゃん、覚悟しなさい?…あと100回くらい、どれだけ泣き叫んでも、ちゃんと受け終わるまではやめないからね。」
「……はい。」
ビッヂィィィン!!!
「いぎゃぁぁぁっ!!」
……嘘でしょ?
それまでのお仕置きとは、比べ物にならないほどの痛みだった。
濡れた肌に当たる衝撃は、痛みを吸収し、鋭いもので刺されたような感覚が響き渡る。
「お姉ちゃん、まだ1回目よ?…誰が脚を閉じていいって言ったの?」
「…グスッ……。」
気がつくと、わたしは脚を閉じ、空いている左手で、叩かれた部分を必死にさすってしまっていた。
「いますぐ、脚を広げてその手をどけなさい。……じゃないと、この罰をりなに与えるわよ?」
「…っ!?」
“りな”の名前を出され、わたしは恐る恐る脚を広げる。
そして、手を離すと、そこは青紫色の痣となり、目を背けたいほどの有様になっていた。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛ぁぁぁぁっ!!」
「ん゛っ!!」
再度、振り下ろされる鋭い痛みに、わたしは妹と繋いだ腕に力が入ってしまう。
…だが、そんなことを気にする余裕がないほどに、わたしは痛みにのたうち回っていた。
「お姉ちゃん、いい加減にしなさいっ!ちゃんとお仕置きを受けられないのっ!?」
「ママァッ!ごめんなざいっ!!りなが悪いんですっ!!りなに……、りなにお仕置きをしてぐださいっ!!」
「りなっ!黙ってなさいっ!!いまはお姉ちゃんにお仕置きしてるのっ!!……あんたには後で“仕上げ”してあげるから、そのまま待ってなさいっ!」
妹が大泣きしながら母へ訴えるが、当然の如く、その意見が通ることはない。
無力な妹のせめてもの“償い”か、強く手を握ってきてくれるのがわかった。
そんな、心が完全に折れてしまったわたしに向けられたのは、“妹の心配する瞳”と、怒りが治らない母の、高々と振り上げられた“定規”だった…。
・
「……グス…。いだいぃ…。……いだいよぉ…。」
それから、何度かやり直しをされ、結局終わったのは、日が完全に沈み、月の光が辺りを照らすころだった。
“パチッ”
電気をつけられて、目が眩む。
少しずつ慣れていた視界で“その場所”を見ると、初めからその色だったかのように変色していた。
「お、おねえちゃん…。」
妹はまた泣きそうな目で“まじまじ”と、わたしのお仕置き跡を見つめる。
だが、“触れる”だけでも激痛が走りそうなそこを見てためらっているのか、ぎこちなく手を伸ばしは閉じを繰り返していた。
「りな。“お漏らしの罰”は、お姉ちゃんが代わりに受けてくれたから、許してあげるわ。……でも、あんたにはまだ罰が残ってるわよ?」
「……はい。」
そんな母の手には、お仕置きの際に使われる“洗濯バサミ”が握られていた。
妹は“お仕置きの内容”を察したのか、涙目になりながら、震えている。
…だが、これ以上はわたしに頼れないと思っているのか、わたしに助けは求めず、必死に母と向き合っていた。
「これからりなへ“仕上げのお仕置き”をするけど、……お姉ちゃんも受けるの?」
「……う、うげますっ!」
…もはや、“条件反射”というべきか、何かを考える前に言葉が出ていた。
そのわたしの言葉に、妹は驚いたような表情で振り返る。
「お、おねえちゃんっ!?もういいよぉっ!!りなが全部受けるからっ!…だから、もう休んでてっ!!………お願いだからぁ…。」
優しい妹は、わたしの心配をしてくれているのか、涙を流しながら、怒鳴るようにお願いをする。
…だが、“皮肉にも”その様子を見て、わたしの意思はさらに強いものとなる。
そして、自分の体に鞭打つように、必死にテーブルから降りると、お立たせの姿勢となった。
「…お姉ちゃんは、大丈夫だから。……だから、この罰も、“半分こ”にしよ?」
「……グスッ…ごめんなさい。」
妹からの返答は“謝罪”だった。
…きっと、妹も怖かったのだろう。
ぎこちなかった手は、わたしのことを抱きしめる手に変わっていた。
「その様子だと、どんな罰を受けるのか、わかってるみたいね。…じゃあ、りなもお姉ちゃんと同じ姿勢になりなさい。」
「……はい。」
妹は、わたしから離れると、震えながら言われた姿勢となる。
母は、その様子を確認すると、わたし達の“大切なところ”を開き、敏感な部分を洗濯バサミで挟んだ。
「ひぃっ!?」
「い゛っだぁぁいぃっ!?」
すでに限界を迎えている“そこ”へ加えられる痛みは、わたし達の悲鳴を上げさせるには十分なものだった。
特に、変色しているわたしの方では、常に“ズキッ”とした、突き刺すような痛みが与えられ続ける。
「さあ、仕上げとして、この“洗濯バサミの部分”をそれぞれ5回ずつ、定規で叩いてあげます。……かなり辛いだろうけど、我慢しなさい。」
そういうと、母はまず、妹の洗濯バサミへ、“パチッ”と軽く定規を当てた。
バッヂン!
「きゃぁぁぁっ!!」
思いっきり定規が振り下ろされ、洗濯バサミに命中する。
痛々しいその光景は、当たった後の洗濯バサミの衝撃が“振動となり”揺れ続けることで、より長く痛みを与え続けているようだった。
バッヂン!
「だいぃぃっ!!」
今度はわたしに罰が与えられる。
挟まれるだけでも痛む“そこ”は、衝撃を加えられることで、より強い痛みへと変わっていく…。
「次は連続よ。…まずはりなから。」
“パチッ”
「ひっ!?」
“連続”の宣言を受け、妹の表情が強張る。
…だが、母は“そんなこと”などお構いなしに、定規を振り上げた。
バッヂン!バッヂン!バッヂィン!
「い゛っ!ああっ!あ゛んっ!!」
容赦なく振り下ろされる一撃に、妹の姿勢は崩れかける。
なんとか、そのまま姿勢を保つと、目からは大粒の涙が溢れ出していた。
『つ、次はわたしだ…。』
恐怖で怯えるわたし方へ、母は向き直ると、その口元が“にやり”と釣り上がった感じがした。
バッヂン!バッヂン!バッヂィィンッ!!
「あ゛あぁぁっ!ちぎれるぅっ!!」
妹よりも大きな音が、静まり返った部屋中へと響き渡った。
こんな衝撃を加えられても、洗濯バサミはしつこく粘り、振動によってさらに痛みを増幅させる。
引きちぎられるような痛みは、気が狂いそうになるほどに、わたしへと襲いかかってきた。
「ほら、あとは1発ずつよ。」
妹の方へ向き直った母は、洗濯バサミを“ペンッペンッ”と当てる。
「んっ!いっ!」
…もはや、“それだけ”でも痛むのであろう。
妹は、フルフルと震えながら、必死に次の衝撃に備えていた。
バッヂィンッ!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
これまでよりも強い音が、妹の下半身から鳴り響く。
「……うぇぇーんっ!!…いだいぃっ!」
ついに堪えきれなくなってしまったのか、妹の涙が決壊する。
唯一の救いは、姿勢が保たれていることだろうか。
……きっと、これが崩れていたら、“初めからやり直し”だったであろうから。
“ペンッペンッ”
「ひいっ!?」
そんな妹に構うことなく、母はわたしの洗濯バサミへ定規を当てる。
“ズキッ…ズキィッ”
たったそれだけで、わたしの“大切なところ”は悲鳴を上げるように、痛みで警告を送ってくるのだった。
バッヂィィィンッ!!!
“バヂッ”
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
衝撃に耐えきれなかった洗濯バサミが、床に虚しく“ボトッ”と落ちた。
ついに“ちぎれてしまったのではないか”、という痛みが下半身を駆け巡る感覚を得る。
姿勢を保っているのが“奇跡”なほどの衝撃だったが、“血は流れていない”という事実が、わたしの中の最悪を免れていた。
「よく頑張ったわね。…もう許してあげるわ。お仕置きはこれで終了よ。」
「ん゛っ!」
妹の下半身にまだ残る“洗濯バサミ”を取ると、母はリビングを出て行った。
「洗面器と薬はここに置いておくから、後は、自分達でやりなさい。」
戻ってきた母がそういうと、今度はキッチンへと向かって行った。
…恐らく、夕飯の準備を始めるのだろう。
・
「りな…こっちおいで。」
わたしは手招きでりなを呼ぶと、“トコトコ”とりながやってくる。
「ソファに座っておまた開いて、まずは冷やすから。」
「っ!?…う、うん。わかった。」
この“姿勢”に恐怖感を持っているのか、一瞬顔が強張り、すぐに元に戻った。
『言い方も気をつけなきゃ…。』
“優しい言葉”にしようと意識すると、真っ赤に腫れ上がった“大切なところ”に、ゆっくりと、絞ったタオルをのせた。
「ひゃあっ!!」
「ごめん、りな…。少し我慢してね。」
「…うん。我慢する。」
素直な妹を抱き寄せながら、頭を撫でてあげる。
少し冷えてきた身体へ熱を与え合うと、妹も背中へ手を回してきた。
「……ごめんなさい。お姉ちゃん。……りなのせいで、お姉ちゃんも痛くなって…。」
耳元でささやかれる妹の声に、わたしはそっと周りを見回し、“誰もいない”ことを確認する。
「大丈夫だよ。“りなは悪くない”から。……だから、またいつでもお姉ちゃんを頼ってね。」
「……グスッ…。……お姉ちゃん、だいすき。」
「わたしも、りなが大好きだよ。」
わたしの胸のあたりに寄せられた妹の顔が、また熱くなるのがわかった。
そして、このまましばらく過ごし、“料理が自慢”の母から、夕飯の合図が出されるのだった…。
「完」
「ごめんなざぁいっ!!」
ビッヂィンッ!
「いだいっ!」
次のお仕置きが始まり、しばらく時間が経つ。
現在は、夕日が部屋全体を照らし出し、お仕置きされている“大切なところ”が、更に赤く腫れているような感覚を得る。
ビッヂィィンッ!!
「んん゛っ!!」
ビヂンッ!
「い゛っ!」
相変わらず、わたし達のお仕置きは続いており、まだまだ終わる気配はない。
また、しばらくしてから気づいたが、わたしよりも、妹の方が強く叩かれている気がする。
その明らかに厳しい音は、わたしの身体を震え上がらせると同時に、ある“感情”が芽生えてくるのがわかった。
「…お、お母さん…。」
「なに?……まさか、“やめたい”なんていうんじゃないでしょうね?」
その考えに至った母が、きつくわたしを睨みつけてくる。
恐ろしさから、わたしは“ごくりっ”と唾を飲み、手汗の滲んだ妹の手を、再び、強く握った。
「違うのっ!…ただ、わたしよりも、りなの方が強く叩かれてる気がして…。」
「……お、お姉ちゃん?」
隣では、わたしが、“やめたい”と言い出すと思っていたであろう妹が、予想外の言葉に困惑している。
「なんだ、そんなこと?……当たり前でしょ?悪いのはりななんだから。…で、それがどうしたの?」
…“予想通り”の反応に、わたしの意思は決まる。
「なら、わたしの方を強く叩いてっ。…そして、もっとりなの方を弱くして欲しいのっ!」
「お、お姉ちゃんっ!?」
「……別にいいけど、…なんでそこまでするの?……お姉ちゃんが痛いだけでしょ?」
「それは、…ただ、りなが辛い顔を見たくないだけなのっ!……わたしはどれだけ痛くてもいいからっ!だから、お願いっ!!」
“理解できない”
そんな感じの反応をした母は、「はぁ…。」とため息をつく。
「わかった。じゃあ、お姉ちゃんのほうを強く叩いてあげる。……もっと脚を広げなさい。その分、りなの方を軽くしてあげるから。」
「……わかった。」
わたしは、“くいっと”さらに脚を広げる。
恥ずかしいという感情も湧き上がるが、それ以上に、厳しいお仕置きに対する“恐怖感”が、溢れ出しそうだった。
ビヂンッ!
「ん゛っ!」
先に、りなの方へ、定規が当たる。
これまでで、1番軽めの音が響き、“少し安心した”自分がいた気がした。
ビッヂィィンッ!!
「あ゛あんっ!!」
…代わりに、宣告通り、厳しい衝撃が、わたしに打ち付けられる。
当たった部分を確認すると、そこは青痣が浮かび上がっており、見ただけで痛々しさが伝わってくるものだった。
ビヂンッ!
「いだいっ!」
ビッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!!」
先程よりも、厳しい音が、部屋の中に鳴り響く。
さらに、濃い痣が浮かび上がったそこは、“ジグジグ”と痛み、わたしへ悲鳴を上げているようだった。
「…グスッ……。いだいよぉ…。」
再度、わたしの目からは、涙が決壊する。
「うぇぇーんっ!…お姉ちゃん、ごめんなざいぃっ!!」
その様子を見ていた妹は、大泣きで、“懺悔”するように、わたしの手を握りしめた。
「…グスッ…、大丈夫だよ。……“りなは悪くない”んだから、安心して。」
「お、お姉ちゃん……。」
少しでも妹を落ち着かせようと、必死に言葉を絞り出す。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛あぁぁぁぁっ!!」
「おねえちゃんっ!?」
「………それ、どういうこと?」
わたしの“大切なところ”が再度、悲鳴を上げる。
いきなりのことで、状況がわからない妹は、“あわあわ”と、わたしの様子を伺いながら、心配してくれているようだった。
「“りなが悪くない”って、どういうことかって聞いてるのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
……余程、気に召さなかったのだろうか。
冷たい顔をした母は、これまでよりもきつく、わたしを睨みつけた。
「…だ、だってっ!…おトイレに行かせなかったのは、お母さんでしょっ!?……だから、りなは悪くないのっ!!」
「お仕置き中にトイレに行きたがる、りなが悪いんでしょっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「い゛いぃっ!!……それでもっ!!…ちょ、長時間お仕置きしてたのは、お母さんでしょっ!?」
「ママが悪いって言いたいのっ!?」
ビッヂィィィン!!!
「だいぃぃっ!!」
…恐らく、初めてであろう。
自分のお仕置きでも、一度も反抗したことのないわたしが、りなへのお仕置きに対して、反抗してしまった。
『ここで“折れてはいけない”』
という謎の“意思”が働き、負けじと母を睨みつける。
「…なに、その目は?……はぁ…。
……わかったわ。りなは悪くないんでしょ?…なら、残りのお仕置きは、お姉ちゃん、あんたが全部受けなさい?」
「っ!?………わかった。じゃあ、もうりなは許して?」
「お姉ちゃんが“ちゃんと”受けられたら許すって最初に言ったでしょ?……りな、あんたはそのままの姿勢で反省してなさい。」
「は、はいぃっ!?」
母に睨まれ、“びくっと”なった妹が、姿勢を戻す。
そして母は、すぐにわたしの方へ向き直る。
「…そのまま待ってなさい。」
そういうと、母はキッチンへ行き、コップ一杯に“並々とついだ水”を持ってくる。
“バシャッ”
「…つめたぃっ!?」
「……知ってる?濡れた肌へのお仕置きは、さらに痛みを強く感じるのよ?…“ママへ反抗した罰”には、ちょうどいいでしょ?」
腫れた肌にかけられた水が、熱を少しずつ覚ましていく。
むしろ、『少し気持ちいい』と思ってしまったくらいだ。
「さあ、お姉ちゃん、覚悟しなさい?…あと100回くらい、どれだけ泣き叫んでも、ちゃんと受け終わるまではやめないからね。」
「……はい。」
ビッヂィィィン!!!
「いぎゃぁぁぁっ!!」
……嘘でしょ?
それまでのお仕置きとは、比べ物にならないほどの痛みだった。
濡れた肌に当たる衝撃は、痛みを吸収し、鋭いもので刺されたような感覚が響き渡る。
「お姉ちゃん、まだ1回目よ?…誰が脚を閉じていいって言ったの?」
「…グスッ……。」
気がつくと、わたしは脚を閉じ、空いている左手で、叩かれた部分を必死にさすってしまっていた。
「いますぐ、脚を広げてその手をどけなさい。……じゃないと、この罰をりなに与えるわよ?」
「…っ!?」
“りな”の名前を出され、わたしは恐る恐る脚を広げる。
そして、手を離すと、そこは青紫色の痣となり、目を背けたいほどの有様になっていた。
ビッヂィィィン!!!
「あ゛ぁぁぁぁっ!!」
「ん゛っ!!」
再度、振り下ろされる鋭い痛みに、わたしは妹と繋いだ腕に力が入ってしまう。
…だが、そんなことを気にする余裕がないほどに、わたしは痛みにのたうち回っていた。
「お姉ちゃん、いい加減にしなさいっ!ちゃんとお仕置きを受けられないのっ!?」
「ママァッ!ごめんなざいっ!!りなが悪いんですっ!!りなに……、りなにお仕置きをしてぐださいっ!!」
「りなっ!黙ってなさいっ!!いまはお姉ちゃんにお仕置きしてるのっ!!……あんたには後で“仕上げ”してあげるから、そのまま待ってなさいっ!」
妹が大泣きしながら母へ訴えるが、当然の如く、その意見が通ることはない。
無力な妹のせめてもの“償い”か、強く手を握ってきてくれるのがわかった。
そんな、心が完全に折れてしまったわたしに向けられたのは、“妹の心配する瞳”と、怒りが治らない母の、高々と振り上げられた“定規”だった…。
・
「……グス…。いだいぃ…。……いだいよぉ…。」
それから、何度かやり直しをされ、結局終わったのは、日が完全に沈み、月の光が辺りを照らすころだった。
“パチッ”
電気をつけられて、目が眩む。
少しずつ慣れていた視界で“その場所”を見ると、初めからその色だったかのように変色していた。
「お、おねえちゃん…。」
妹はまた泣きそうな目で“まじまじ”と、わたしのお仕置き跡を見つめる。
だが、“触れる”だけでも激痛が走りそうなそこを見てためらっているのか、ぎこちなく手を伸ばしは閉じを繰り返していた。
「りな。“お漏らしの罰”は、お姉ちゃんが代わりに受けてくれたから、許してあげるわ。……でも、あんたにはまだ罰が残ってるわよ?」
「……はい。」
そんな母の手には、お仕置きの際に使われる“洗濯バサミ”が握られていた。
妹は“お仕置きの内容”を察したのか、涙目になりながら、震えている。
…だが、これ以上はわたしに頼れないと思っているのか、わたしに助けは求めず、必死に母と向き合っていた。
「これからりなへ“仕上げのお仕置き”をするけど、……お姉ちゃんも受けるの?」
「……う、うげますっ!」
…もはや、“条件反射”というべきか、何かを考える前に言葉が出ていた。
そのわたしの言葉に、妹は驚いたような表情で振り返る。
「お、おねえちゃんっ!?もういいよぉっ!!りなが全部受けるからっ!…だから、もう休んでてっ!!………お願いだからぁ…。」
優しい妹は、わたしの心配をしてくれているのか、涙を流しながら、怒鳴るようにお願いをする。
…だが、“皮肉にも”その様子を見て、わたしの意思はさらに強いものとなる。
そして、自分の体に鞭打つように、必死にテーブルから降りると、お立たせの姿勢となった。
「…お姉ちゃんは、大丈夫だから。……だから、この罰も、“半分こ”にしよ?」
「……グスッ…ごめんなさい。」
妹からの返答は“謝罪”だった。
…きっと、妹も怖かったのだろう。
ぎこちなかった手は、わたしのことを抱きしめる手に変わっていた。
「その様子だと、どんな罰を受けるのか、わかってるみたいね。…じゃあ、りなもお姉ちゃんと同じ姿勢になりなさい。」
「……はい。」
妹は、わたしから離れると、震えながら言われた姿勢となる。
母は、その様子を確認すると、わたし達の“大切なところ”を開き、敏感な部分を洗濯バサミで挟んだ。
「ひぃっ!?」
「い゛っだぁぁいぃっ!?」
すでに限界を迎えている“そこ”へ加えられる痛みは、わたし達の悲鳴を上げさせるには十分なものだった。
特に、変色しているわたしの方では、常に“ズキッ”とした、突き刺すような痛みが与えられ続ける。
「さあ、仕上げとして、この“洗濯バサミの部分”をそれぞれ5回ずつ、定規で叩いてあげます。……かなり辛いだろうけど、我慢しなさい。」
そういうと、母はまず、妹の洗濯バサミへ、“パチッ”と軽く定規を当てた。
バッヂン!
「きゃぁぁぁっ!!」
思いっきり定規が振り下ろされ、洗濯バサミに命中する。
痛々しいその光景は、当たった後の洗濯バサミの衝撃が“振動となり”揺れ続けることで、より長く痛みを与え続けているようだった。
バッヂン!
「だいぃぃっ!!」
今度はわたしに罰が与えられる。
挟まれるだけでも痛む“そこ”は、衝撃を加えられることで、より強い痛みへと変わっていく…。
「次は連続よ。…まずはりなから。」
“パチッ”
「ひっ!?」
“連続”の宣言を受け、妹の表情が強張る。
…だが、母は“そんなこと”などお構いなしに、定規を振り上げた。
バッヂン!バッヂン!バッヂィン!
「い゛っ!ああっ!あ゛んっ!!」
容赦なく振り下ろされる一撃に、妹の姿勢は崩れかける。
なんとか、そのまま姿勢を保つと、目からは大粒の涙が溢れ出していた。
『つ、次はわたしだ…。』
恐怖で怯えるわたし方へ、母は向き直ると、その口元が“にやり”と釣り上がった感じがした。
バッヂン!バッヂン!バッヂィィンッ!!
「あ゛あぁぁっ!ちぎれるぅっ!!」
妹よりも大きな音が、静まり返った部屋中へと響き渡った。
こんな衝撃を加えられても、洗濯バサミはしつこく粘り、振動によってさらに痛みを増幅させる。
引きちぎられるような痛みは、気が狂いそうになるほどに、わたしへと襲いかかってきた。
「ほら、あとは1発ずつよ。」
妹の方へ向き直った母は、洗濯バサミを“ペンッペンッ”と当てる。
「んっ!いっ!」
…もはや、“それだけ”でも痛むのであろう。
妹は、フルフルと震えながら、必死に次の衝撃に備えていた。
バッヂィンッ!!
「いっだぁぁぁいぃっ!!」
これまでよりも強い音が、妹の下半身から鳴り響く。
「……うぇぇーんっ!!…いだいぃっ!」
ついに堪えきれなくなってしまったのか、妹の涙が決壊する。
唯一の救いは、姿勢が保たれていることだろうか。
……きっと、これが崩れていたら、“初めからやり直し”だったであろうから。
“ペンッペンッ”
「ひいっ!?」
そんな妹に構うことなく、母はわたしの洗濯バサミへ定規を当てる。
“ズキッ…ズキィッ”
たったそれだけで、わたしの“大切なところ”は悲鳴を上げるように、痛みで警告を送ってくるのだった。
バッヂィィィンッ!!!
“バヂッ”
「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
衝撃に耐えきれなかった洗濯バサミが、床に虚しく“ボトッ”と落ちた。
ついに“ちぎれてしまったのではないか”、という痛みが下半身を駆け巡る感覚を得る。
姿勢を保っているのが“奇跡”なほどの衝撃だったが、“血は流れていない”という事実が、わたしの中の最悪を免れていた。
「よく頑張ったわね。…もう許してあげるわ。お仕置きはこれで終了よ。」
「ん゛っ!」
妹の下半身にまだ残る“洗濯バサミ”を取ると、母はリビングを出て行った。
「洗面器と薬はここに置いておくから、後は、自分達でやりなさい。」
戻ってきた母がそういうと、今度はキッチンへと向かって行った。
…恐らく、夕飯の準備を始めるのだろう。
・
「りな…こっちおいで。」
わたしは手招きでりなを呼ぶと、“トコトコ”とりながやってくる。
「ソファに座っておまた開いて、まずは冷やすから。」
「っ!?…う、うん。わかった。」
この“姿勢”に恐怖感を持っているのか、一瞬顔が強張り、すぐに元に戻った。
『言い方も気をつけなきゃ…。』
“優しい言葉”にしようと意識すると、真っ赤に腫れ上がった“大切なところ”に、ゆっくりと、絞ったタオルをのせた。
「ひゃあっ!!」
「ごめん、りな…。少し我慢してね。」
「…うん。我慢する。」
素直な妹を抱き寄せながら、頭を撫でてあげる。
少し冷えてきた身体へ熱を与え合うと、妹も背中へ手を回してきた。
「……ごめんなさい。お姉ちゃん。……りなのせいで、お姉ちゃんも痛くなって…。」
耳元でささやかれる妹の声に、わたしはそっと周りを見回し、“誰もいない”ことを確認する。
「大丈夫だよ。“りなは悪くない”から。……だから、またいつでもお姉ちゃんを頼ってね。」
「……グスッ…。……お姉ちゃん、だいすき。」
「わたしも、りなが大好きだよ。」
わたしの胸のあたりに寄せられた妹の顔が、また熱くなるのがわかった。
そして、このまましばらく過ごし、“料理が自慢”の母から、夕飯の合図が出されるのだった…。
「完」
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