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小さな脱走犯

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バヂンッ!

「いだいっ!」

バヂンッ!

「ああ゛っ!」

学校終わりの夕方。
リビングでは、丸出しになったわたしのお尻が、ママから平手打ちを受けていた。

ぶたれる音はすでに100回を超えており、半熟トマトの色になったお尻は、窓から差し込む夕陽に照らされ、更に赤く染まっている。

何度もお尻を庇う両手は、背中でがっちりとロックされ、床に広がるしょっぱい水溜り。

こんな痛々しい様子でも、お仕置きはまだまだ終わる気配がなかった。

…こうなった原因は、テーブルの上に置かれた“通知表”だ。

恐る恐る手渡した後、中身を見たママの顔はどんどん険しくなり「お仕置き」を命じられた。

ジーンズと下着を足首まで無理矢理下され、気をつけの姿勢になった状態でのお説教。

「宿題忘れが多いって書いてあるわよっ!帰ったらすぐにやりなさいっていつも言ってるのにっ!」

「また“がんばろう”の数が増えてるじゃないっ!こんな悪い子には、今月からお小遣いを減らしますからねっ!」

30分にも及ぶ、キンキンとした怒鳴り声がようやく収まる頃、視界はぼやけ、頬を伝う涙で服が濡れている。
そのまま腕を引かれ、膝の上に連行された。



そして、今に至る。

バヂンッ!

「い゛っ!?ママァ…もうお尻限界っ!」

「何言ってるのっ!まだまだ終わら…」

プルルッ プルルッ

「あら…電話ね、誰からかしら」

その音が聞こえた瞬間、お尻を叩く手がピタッと止まり、わたしは膝の上から下ろされた。

「ちょっと電話してくるけど、そのままじっとしてなさい。終わったらお仕置き再開するからね」

うちには廊下に電話が備えられている。
怖い顔で忠告すると、ママはそのままリビングを出て行った。

『た、たすかった…』

わたしはよろよろと立ち上がると、汗で濡れた下着とジーンズをぎこちなく履き直した。

「っ…たぁ」

下着が擦れるたびに、腫れたお尻から伝わるヒリヒリとした痛みが全身に伝わる。

…もちろん、勝手に履き直したところを見つかれば、タダでは済まない。

「こんな痛いのに、まだまだ終わんないなんて、受けてらんないよ…」

涙目になりながら窓に目を向けると、そこからの行動は早かった。

窓を開け、お庭用のサンダルに足を通すと、こっそりと家から抜け出した。

ママ用のサンダルのため、歩くたびに脱げそうになるが、何とか近くの公園まで来ることが出来た。

公園では年下の子達が複数人で遊んでいるが、幸いにもわたしの友達は居なかった。

…こんな現場を見られてしまえば、からかわれるのがオチだ。

わたしは手前にあるベンチにゆっくりと座ると、「はぁーっ」とため息が漏れる。

きっともう電話は終わってるだろうし、わたしが逃げたことはすでにバレているはずだ。

これまで何回もお仕置きを受けてきたが、逃げ出したのは、今回が初めてだ。

帰ったら“どんな罰”が待っているかと思うと、逃げたことを後悔する気持ちが、今更になって湧いてくる。

お仕置き最初からやり直し?
お道具も使われる?
数は?姿勢は?
浣腸やお灸、…最悪お線香も当てられるかもしれない。

これまで受けた厳しいお仕置きの光景がフラッシュバックし、自然と涙が溢れ出してきた。

周りで遊んでいる子の何人かが、チラッチラッとこちらを見てくるが、話しかけてくる様子はない。

そのまま自分がお仕置きを受ける様子を想像していると、あたりは薄暗くなり、子供たちは帰って行った。

家の門限は18時。
公園の時計を見ると、そろそろ帰らないと間に合わない時間だ。

『わたしも帰らなきゃ…』

お仕置きは怖いが、この門限まで破った時には、どんな目に遭うか想像すると、自然とわたしの足は動き出した。

とぼとぼとした足取りで家に着くと、そのままお庭に行く。
先ほど飛び出してきた窓は閉められており、鍵がかかっている。

カーテンが閉められ、部屋の明かりが煌々と照らしていた。

「マ、ママっ!ごめんなさいっ!ここ開けてっ!」

たまらず窓へ声をかけるも、中から返事はない。

「…ママッ、…ママァッ!!」

「うるさいわよっ!」

先ほどはやかましいと思ったキンキンとする声が中から聞こえ、そのことに安堵する。

カーテンには、ママの影の形が濃く写っていた。

「待ってなさいって言ったのに…、お仕置きから逃げ出した子なんて知りませんっ!そのまま出て行きなさいっ!!」

その言葉が聞こえた瞬間から、わたしの顔はサァーッと青くなっていく。

きついお仕置きを受ける想像はしていたが、まさか追い出されるなんて、夢にも思っていなかった。

「ママ、ごめんなさいっ!」

「お仕置きちゃんと受けるっ!受けるからっ!!だから入れてっ!!」

必死に謝るが、中から返事はなくなり、影はすーっと遠ざかって行った。

もうお家に入れない。
その事を理解した瞬間、弾かれたように涙が溢れ出てきた。

「うわぁぁんっ!ごめんなさいっ!!ママごめんなざいぃ!!」

「おじおぎなんでもうげるっ!おどうぐつかっでいいし、おぜんごうもあでていいがらっ!!だからおうぢいれでくだざいぃっ!!」

「あぁぁぁんっ!!」



…どのくらいの時間が経っただろう。

しばらく大声で泣き、疲れて嗚咽を漏らしていると、そっと窓が開けられた。

「お仕置きから逃げたこと、ちゃんと反省したの?」

「あ゛ぃ、じました」

「なら、来なさい」

ママに手を引かれ、よろよろとした動作で、リビングに入る。
家に入れた安心感から、また涙が溢れ出す。

「逃げた罰として、厳しいお仕置きをします。下に着てる服を、靴下以外、全部脱ぎなさい」

「グスッ…はい…」

ぼうっとする頭で言われた通りに服を脱ぎ、そのまま床に置く。
脱いだ瞬間から、ムワッと自分の汗の臭いが漂った。

「ソファの上でレッグアップの姿勢になりなさい。その悪い下半身をケインで懲らしめてあげます」

ケインに対する恐怖感からすくむ身体。
ガクガクと震えながらも、言われた姿勢になる。

仰向けで両足を抱え、その足を肩幅に開いた姿勢。
わたしの恥ずかしい所が空気に触れ、忘れかけていた羞恥心が思い出される。

ケインを片手に持ったママが横に立つと、腕を大きく振り上げた。

バッヂィィンッ!!

「いぎゃぁぁぁっ!!」

覚悟していたよりも数段強い痛みが、太もも裏に与えられる。
紫色に近い一本線がくっきりと浮かび、身体からは汗が滝のように流れた。

バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!

「だぁぁぁいっ!!ごめんなざぁぁいっ!!」

次はお尻に2本、痛々しい線が浮かび上がった。
もともと真っ赤に腫れていたお尻に与えられた痛みは、太ももと大差無いものになっている。

ビュッ… ビッヂィィン!!

「かはっ…んぎゃぁぁぁぁっ!?」

一瞬呼吸が出来なくなり、すぐに激しい痛みが襲いかかる。
1番敏感なお股を容赦なく打たれ、身体がビクッビクッと震えていた。

ビュッ… ビッヂィィン!! ビッヂィィン!!

「げほっ、げほっ!あ゛ぁぁぁっ!!」

執拗にお股に鞭が与えられ、呼吸をするのが難しくなっていた。

やっと呼吸ができる頃には、ジグジグとする痛みからすぐに悲鳴に変わり、また呼吸ができなくなるのループ。

ママはその様子を見てもなお、ケインを高々と振り上げ続けた。



下半身が紫色のみみず腫れで覆われ、所々から血が滲む頃、ようやくテーブルの上にケインが置かれた。

ソファの上は、わたしの身体から流れた汗や涙、鼻水に涎が撒き散らされており、酷く酸っぱい臭いを放っている。

『…おわった』

意識が薄れそうになりながら、ママを見つめると、まっすぐに戸棚の方に向かっていく。

そこにはわたしにお仕置きを与えるための道具が、所狭しと入っている。

その中から“お線香”とライターを取り出すと、わたしの近くに戻ってきた。

「ケインのお仕置きは、このくらいにしてあげます。…次は悪いお尻の穴に、お線香を当ててあげます。四つん這いになって、お尻を高く突き上げなさい」

「…」

もはや、ママが言っていることを理解するのを脳が拒絶していた。

え…まだ、お仕置き終わりじゃ無い?

「…もう1回、初めからケインを受けたいの?」

「ひっ、ご、ごめんなさいっ!?」

「なら早く姿勢を取りなさい」

「は、はいぃっ!?」

…拒絶なんてしてる暇はなかった。

少し動くだけで激痛がする下半身を動かし、何とか言われた姿勢になる。

この後待ち受ける痛みから、身体は相変わらずガクガクと震えていた。

「いつもの場所に当ててあげます」

お尻の穴の少し下の方が、ツンツンとつつかれる。
お線香の罰では、毎回そこに火を当てられていた。

カチッ

ライターでお線香に火を付けられると、和の香りがリビングに広がる。
火が当てられる前に漂うこの香りが、わたしは大嫌いだった。

ジュッ

「んぎぃっ」

言われた通りの場所に火が当てられ、皮膚が焼ける音がこだまする。
あまりの熱さから、呼吸が出来なくなっていた。

次第に肌の焼ける臭いがかすかに香るころ、ようやくお線香が離される。

「あ…あ゛ぁぁ」

ズキズキとする痛みが残り続け、身体からは脂汗が流れ出ていく。

カチッ

すぐさま、2本目のお線香が点けられる音が鳴った。



あれから20本ほどのお線香が与えられ、ようやくライターがテーブルの上に置かれた。

もはや動く気力もない身体は、恥ずかしい姿勢のまま、焼かれた痛々しい部分を晒し続けている。

「お仕置きから逃げたらどうなるか、わかった?」

「あ゛ぃ、もうぜったいにげません…」

「…いいわ。お仕置きから逃げた罰は、これで終わりにします」

「おじおぎ、ありがとうござ…」

「じゃあ次は、通知表の評価が悪かったお仕置きに戻ります。お尻を“パドル”で百叩きするから、膝の上に来なさい?」

「あ、あぁぁ…」

……わたしのお仕置きは、まだまだ終わりそうになかった。


「完」
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