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高級フレンチフルコース①
丸二日安静にしていたら熱も下がり、風邪の症状もすっかり無くなった。
完治したことを真っ先に葉山さんに伝え、それと同時に、「お礼がしたいので」という理由を添えて三回目のデートに誘う。
しかし、葉山さんも仕事をしているのだから、もちろん予定が合わないこともある。
今までは偶然休日が被っていただけ。最初に私が想像していたよりも、葉山さんはずっと忙しい人だった。
(出かけるのが一ヶ月先になるのは、別に構わないんだけど……)
改めて決まった約束の日は来月の終わり。
しかし出来ることなら、早いうちに直接顔を見てお礼を言いたい。
そこでふと、「風邪が治ったらお友達と一緒に店においで」と、葉山さんが言ってくれたことを思い出した。
もちろん、仕事の邪魔になるようなことはしない。ちゃんとしたお礼は一ヶ月後のデートの時にするつもりだ。
ただ、少しの時間でいいから、言葉を交わす時間がありそうなら直接感謝を伝えたいだけ。付け加えて言うならば、葉山さんの顔が見れたら嬉しい。
(お見舞いに来てくれた時に言っていたことが、社交辞令じゃなければいいけど)
緊張しながら文章を打ち込み、メッセージを送る。
「それなら先に葉山さんの働いてるお店にご飯を食べに行ってもいいですか?」と尋ねると、「すごく嬉しい。席の用意しておくから、都合のいい日を教えて欲しいな」というメッセージと一緒に、店名を教えてくれた。
「シャルメランジュってお店なんだ」
誰を誘うか考えながら、ネットの予約サイトで店を検索してみる。
出てきたのは青山にある人気フレンチで、三種類のコースがスマホの画面に表示された。
どれもすごく美味しそう。すごく綺麗。
しかしその下に表示されているコースの料金は、決して安いものではない。
一番上にあるスタンダードなコースでも、三万円と値段が設定されている。
出せない金額というわけではないけれど、手取り18万円の会社員が使うには、かなり贅沢な金額であることに間違いはないだろう。
「あー……どうしよう。葉山さんには行くって言っちゃったけど……」
一人で行くような店ではないのに、気軽に友達を誘えるような金額ではない。特別な日でもない食事でこの価格帯の店を提示されたら、私ならば確実に断る。
予約サイトを眺めながら一人で唸っていると、ポコンッという軽快な音と共に、メッセージの受信を知らせる通知ポップアップが画面の上部に表示される。
家族用のチャットグループに届いたのは、五つ上の兄からの浮かれたメッセージだった。
「見て! 宝くじ当たった! 二百万! すごくね?」
興奮した中で撮ったのか、少しブレたスクラッチくじの写真が添付されている。
――え、ほんとだ。すごっ
――欲しいものがあったら兄さんがなんでも買ってあげよう
――やったー! じゃあ新しいイヤホンとドライヤー買って!
――オッケー、今度電気屋行くか
――行く! 慎ちゃん愛してる♡
ポンポンとチャットグループ内でやり取りされる、兄と妹のメッセージ。
そのやり取りの中で、「真衣はどうする?」と、兄は私にも話を振ってくれた。
浮かれている兄に、心の中でお礼を言う。
ありがとう。タイミングが良くて本当に助かる。
葉山さんのことは伏せたまま、「実は行きたいお店があるんだけど」と言って、兄にお店のリンクを送った。
***
兄とメッセージのやり取りをした日から一週間。
待ち合わせ時間ちょうどとなる十九時三十分に、待っていた人物が駆け足で改札を通り抜ける。明るいオレンジ色の髪は、人込みの中でひときわ目を引いた。
「真衣、ごめん! お待たせ!」
「来たばっかりだしいいよ。慎太郎が時間守るの珍しいから、私もギリギリに来ちゃったし」
私の兄、香月慎太郎は、フリーのフォトグラファー兼、映像クリエイターとして仕事をしている。普段はTシャツやパーカーばかり着ている兄でも、今日は襟付きのシャツ姿だ。
今からドレスコード必須の場所に行くことを、嫌でも意識してしまう。
(お店の名前を聞くまでは、もっとカジュアルなところで葉山さんが働いてるって思ってたからなぁ……)
今日、私まで待ち合わせ時間ギリギリの到着となったのは、いつもより身支度に時間がかかったせいでもある。
実の兄とご飯を食べに行くのに、綺麗目なワンピースを選んで髪をセットすることになるなんて、今まで考えたこともなかった。
「予約八時だっけ? まだ早いけどもう行く?」
「うん。初めて行く店だから迷うの怖いし、遅刻するくらいなら早めに着いた方がいいよ。行こう」
駅から徒歩七分らしいが、どこまで正確な数字か分からない。
地図アプリを頼りに「こっちにあるみたい」と歩き始めると、慎太郎も私と並んで歩き始める。
「それにしても、真衣よくあの店の予約とれたよな。俺もあとからネットで見たけど、予約埋まってて全然空きなかった」
「え、そうなの? 最近仲良くなった人が働いてるお店で、私はその人経由で席の用意してもらったからなぁ……」
「へぇ、ラッキーじゃん。口コミサイトには早くても二ヶ月待ちって書いてあったけど、何とかしてもらえるもんなんだ」
「えっ……? う、嘘、ほんとに?」
思わず足を止めて聞き返す私に向かい、「ホント~」と慎太郎は軽い調子で返す。
「ま、仲良い人が相手なら融通利かせてくれるもんなんだろ。俺も友達に頼まれたら、ちょっと無理してスケジュール空けたりするし」
よくあることだと言いたげに慎太郎は話しているけれど、それを聞いたところで私はまったく安心できない。
結構無理して用意してくれたってこと? と頭の中で自問しながら、葉山さんとのやり取りを思い出す。
予約する前に確認しようと思い、「来週の金曜日に行きたいと思ってるんですけど、葉山さんは出勤日ですか?」と、私からメッセージを送った。
その返事が「うん、大丈夫。席の用意しておくね」というもので、希望の時間と人数を聞かれて答えた数分後に、「マネージャーに頼んでおいたよ。待ってるね」と返信がきたのである。
私が予約サイトで調べる前に、葉山さんのほうですべて予約してくれたのだ。
私がしたことと言えば、ただコース料理の写真を眺めて、美味しそうだし楽しみだなと呑気に考えていただけ。慎太郎に指摘されるまで、そこまで人気のお店だということを知らなかった自分が恥ずかしくなる。
もし葉山さんが、無理をしてお店の人に頼んでくれたのだとしたらどうしよう。考え出すと、店に向かう足が少しだけ重たくなった。
大きな通りから細い路地に入り、石畳の道を数分歩いて目的地に辿り着く。
アンティークショップやオシャレなカフェが並ぶ静かな通り。白い漆喰壁の建物の入り口で、アンティーク調の黒いランプが「Charmerange」という金色の文字を照らしていた。
ちょうどいい時間であることを確認し、木製のドアを押して店内に入る。
「いらっしゃいませ」と私達を迎えてくれたのは、きっちりとしたオールバックの若い男性だった。
「あ……八時に予約をお願いした香月です」
「香月様、お待ちしておりました。葉山シェフから伺っております」
葉山さんの名前を出されたことに一瞬驚き、この人がマネージャーなのかな? と胸元のネームプレートを見る。
私の視線に気づいたのか、「本日、香月様をご案内いたします。マネージャーの黒部と申します」と、深々一礼してから、黒部さんは私達を席へ案内してくれた。
店内の奥にある二人掛けのテーブルは、観葉植物でさりげなく区切られ個室のようになっていた。葉山さんが来てくれた時、この場所なら人目を気にせず話ができそうだ。来てくれる時間があるのかは、正直まだ分からないけれど。
「本日お酒はお召し上がりになりますか?」
「はい。メニュー見せてもらえますか」
「かしこまりました」
私ではなく兄が答え、黒部さんからワインリストを受け取る。
「当店ではお料理に合わせたワインのペアリングもご用意しております。お好みをお伺いできればアレンジも可能でございますので、どうぞお申しつけくださいませ」
「へぇ、せっかくだからそうしようか。真衣もそれでいい?」
「うん。お願いします」
「かしこまりました」
まだ料理が出てきたわけではないのに、すでにこのお店がとても素敵な店であることが分かる。
それは良いことのはずなのに、なぜだか少しだけ寂しく思う気持ちが湧いた。
(葉山さんは、こんなに凄いところで働いているんだ)
知らない世界にいるようで、少しだけ遠い存在に思えてしまう。
この席からキッチンは見えないし、仕事中の葉山さんの様子を窺うことはできない。顔が見れたら嬉しいと思って来たはずなのに、仕事中の彼を知ることが今は少しだけ怖かった。
完治したことを真っ先に葉山さんに伝え、それと同時に、「お礼がしたいので」という理由を添えて三回目のデートに誘う。
しかし、葉山さんも仕事をしているのだから、もちろん予定が合わないこともある。
今までは偶然休日が被っていただけ。最初に私が想像していたよりも、葉山さんはずっと忙しい人だった。
(出かけるのが一ヶ月先になるのは、別に構わないんだけど……)
改めて決まった約束の日は来月の終わり。
しかし出来ることなら、早いうちに直接顔を見てお礼を言いたい。
そこでふと、「風邪が治ったらお友達と一緒に店においで」と、葉山さんが言ってくれたことを思い出した。
もちろん、仕事の邪魔になるようなことはしない。ちゃんとしたお礼は一ヶ月後のデートの時にするつもりだ。
ただ、少しの時間でいいから、言葉を交わす時間がありそうなら直接感謝を伝えたいだけ。付け加えて言うならば、葉山さんの顔が見れたら嬉しい。
(お見舞いに来てくれた時に言っていたことが、社交辞令じゃなければいいけど)
緊張しながら文章を打ち込み、メッセージを送る。
「それなら先に葉山さんの働いてるお店にご飯を食べに行ってもいいですか?」と尋ねると、「すごく嬉しい。席の用意しておくから、都合のいい日を教えて欲しいな」というメッセージと一緒に、店名を教えてくれた。
「シャルメランジュってお店なんだ」
誰を誘うか考えながら、ネットの予約サイトで店を検索してみる。
出てきたのは青山にある人気フレンチで、三種類のコースがスマホの画面に表示された。
どれもすごく美味しそう。すごく綺麗。
しかしその下に表示されているコースの料金は、決して安いものではない。
一番上にあるスタンダードなコースでも、三万円と値段が設定されている。
出せない金額というわけではないけれど、手取り18万円の会社員が使うには、かなり贅沢な金額であることに間違いはないだろう。
「あー……どうしよう。葉山さんには行くって言っちゃったけど……」
一人で行くような店ではないのに、気軽に友達を誘えるような金額ではない。特別な日でもない食事でこの価格帯の店を提示されたら、私ならば確実に断る。
予約サイトを眺めながら一人で唸っていると、ポコンッという軽快な音と共に、メッセージの受信を知らせる通知ポップアップが画面の上部に表示される。
家族用のチャットグループに届いたのは、五つ上の兄からの浮かれたメッセージだった。
「見て! 宝くじ当たった! 二百万! すごくね?」
興奮した中で撮ったのか、少しブレたスクラッチくじの写真が添付されている。
――え、ほんとだ。すごっ
――欲しいものがあったら兄さんがなんでも買ってあげよう
――やったー! じゃあ新しいイヤホンとドライヤー買って!
――オッケー、今度電気屋行くか
――行く! 慎ちゃん愛してる♡
ポンポンとチャットグループ内でやり取りされる、兄と妹のメッセージ。
そのやり取りの中で、「真衣はどうする?」と、兄は私にも話を振ってくれた。
浮かれている兄に、心の中でお礼を言う。
ありがとう。タイミングが良くて本当に助かる。
葉山さんのことは伏せたまま、「実は行きたいお店があるんだけど」と言って、兄にお店のリンクを送った。
***
兄とメッセージのやり取りをした日から一週間。
待ち合わせ時間ちょうどとなる十九時三十分に、待っていた人物が駆け足で改札を通り抜ける。明るいオレンジ色の髪は、人込みの中でひときわ目を引いた。
「真衣、ごめん! お待たせ!」
「来たばっかりだしいいよ。慎太郎が時間守るの珍しいから、私もギリギリに来ちゃったし」
私の兄、香月慎太郎は、フリーのフォトグラファー兼、映像クリエイターとして仕事をしている。普段はTシャツやパーカーばかり着ている兄でも、今日は襟付きのシャツ姿だ。
今からドレスコード必須の場所に行くことを、嫌でも意識してしまう。
(お店の名前を聞くまでは、もっとカジュアルなところで葉山さんが働いてるって思ってたからなぁ……)
今日、私まで待ち合わせ時間ギリギリの到着となったのは、いつもより身支度に時間がかかったせいでもある。
実の兄とご飯を食べに行くのに、綺麗目なワンピースを選んで髪をセットすることになるなんて、今まで考えたこともなかった。
「予約八時だっけ? まだ早いけどもう行く?」
「うん。初めて行く店だから迷うの怖いし、遅刻するくらいなら早めに着いた方がいいよ。行こう」
駅から徒歩七分らしいが、どこまで正確な数字か分からない。
地図アプリを頼りに「こっちにあるみたい」と歩き始めると、慎太郎も私と並んで歩き始める。
「それにしても、真衣よくあの店の予約とれたよな。俺もあとからネットで見たけど、予約埋まってて全然空きなかった」
「え、そうなの? 最近仲良くなった人が働いてるお店で、私はその人経由で席の用意してもらったからなぁ……」
「へぇ、ラッキーじゃん。口コミサイトには早くても二ヶ月待ちって書いてあったけど、何とかしてもらえるもんなんだ」
「えっ……? う、嘘、ほんとに?」
思わず足を止めて聞き返す私に向かい、「ホント~」と慎太郎は軽い調子で返す。
「ま、仲良い人が相手なら融通利かせてくれるもんなんだろ。俺も友達に頼まれたら、ちょっと無理してスケジュール空けたりするし」
よくあることだと言いたげに慎太郎は話しているけれど、それを聞いたところで私はまったく安心できない。
結構無理して用意してくれたってこと? と頭の中で自問しながら、葉山さんとのやり取りを思い出す。
予約する前に確認しようと思い、「来週の金曜日に行きたいと思ってるんですけど、葉山さんは出勤日ですか?」と、私からメッセージを送った。
その返事が「うん、大丈夫。席の用意しておくね」というもので、希望の時間と人数を聞かれて答えた数分後に、「マネージャーに頼んでおいたよ。待ってるね」と返信がきたのである。
私が予約サイトで調べる前に、葉山さんのほうですべて予約してくれたのだ。
私がしたことと言えば、ただコース料理の写真を眺めて、美味しそうだし楽しみだなと呑気に考えていただけ。慎太郎に指摘されるまで、そこまで人気のお店だということを知らなかった自分が恥ずかしくなる。
もし葉山さんが、無理をしてお店の人に頼んでくれたのだとしたらどうしよう。考え出すと、店に向かう足が少しだけ重たくなった。
大きな通りから細い路地に入り、石畳の道を数分歩いて目的地に辿り着く。
アンティークショップやオシャレなカフェが並ぶ静かな通り。白い漆喰壁の建物の入り口で、アンティーク調の黒いランプが「Charmerange」という金色の文字を照らしていた。
ちょうどいい時間であることを確認し、木製のドアを押して店内に入る。
「いらっしゃいませ」と私達を迎えてくれたのは、きっちりとしたオールバックの若い男性だった。
「あ……八時に予約をお願いした香月です」
「香月様、お待ちしておりました。葉山シェフから伺っております」
葉山さんの名前を出されたことに一瞬驚き、この人がマネージャーなのかな? と胸元のネームプレートを見る。
私の視線に気づいたのか、「本日、香月様をご案内いたします。マネージャーの黒部と申します」と、深々一礼してから、黒部さんは私達を席へ案内してくれた。
店内の奥にある二人掛けのテーブルは、観葉植物でさりげなく区切られ個室のようになっていた。葉山さんが来てくれた時、この場所なら人目を気にせず話ができそうだ。来てくれる時間があるのかは、正直まだ分からないけれど。
「本日お酒はお召し上がりになりますか?」
「はい。メニュー見せてもらえますか」
「かしこまりました」
私ではなく兄が答え、黒部さんからワインリストを受け取る。
「当店ではお料理に合わせたワインのペアリングもご用意しております。お好みをお伺いできればアレンジも可能でございますので、どうぞお申しつけくださいませ」
「へぇ、せっかくだからそうしようか。真衣もそれでいい?」
「うん。お願いします」
「かしこまりました」
まだ料理が出てきたわけではないのに、すでにこのお店がとても素敵な店であることが分かる。
それは良いことのはずなのに、なぜだか少しだけ寂しく思う気持ちが湧いた。
(葉山さんは、こんなに凄いところで働いているんだ)
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