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美味しい焼き菓子詰め合わせ※
――私の実家に挨拶へ行く日。
葉山さんが用意してくれた手土産は、シャルメランジュで出している焼き菓子の詰め合わせだった。
綺麗な焼き色のついたフィナンシェとマドレーヌ、サブレ。ひとつひとつが丁寧にラッピングされ、白い平箱に詰められている。
私の家族に渡すため、葉山さんが特別に用意してくれたギフトボックスだ。
私の家族に会うまでは、「すごく緊張する……」と葉山さんは言っていたけれど、そんな弱音を吐いている姿など今は微塵も感じさせない。
とても頼りがいのある大人の男性という言葉がぴったりで、私の両親も葉山さんとの結婚を歓迎してくれた。
つつがなく挨拶も終わり、ほっと一息をついたところで、ダイニングテーブルの中央には葉山さんの焼き菓子が並べられる。
マドレーヌを一口食べたお母さんが、その瞬間に分かりやすく目を輝かせた。
「あら、本当に美味しい」
「ありがとうございます。店では食後にお出ししているものでして、そう言っていただけると嬉しいです」
「慎太郎に感想を聞いて、デザートだけでも食べてみたいと思っていたから嬉しいわ。ねぇ、お父さん」
「ああ。いやぁでも、まさか真衣がこんなに立派な人を連れてくるとは思ってなかったなぁ」
二口でフィナンシェを食べきったお父さんが、葉山さんを見ながら今度はサブレに手を伸ばす。
雑誌やネットニュースに出ている人を私が連れてくるとは、数日前までは思ってもいなかったのだろう。
リビングの棚の上には、東京のレストラン特集が組まれた情報誌が置いてあった。実家にそんな雑誌が置いてあるのを初めて見たから、おそらく葉山さんが載っていると知って慎太郎が買ってきたものだ。
その雑誌に載っている写真とはまた違う柔らかい顔で、葉山さんがふわりと笑う。
「いえ、そんな……。そう思っていただけるのはありがたいですが、真衣さんとお付き合いできて、幸せをもらっているのは僕のほうなので」
絶対に私のほうがたくさん幸せをもらっているのに、葉山さんはこういうことを惜しみなく言ってくれる。
両親の前で口にするのは恥ずかしいけれど、「どう考えても私のほうが幸せもらってるのにね」と思わず言ってしまっていた。
夕食を食べてしばらく団欒したあと、そろそろいい時間だから――と、葉山さんと一緒に家を出る。
最後にまた葉山さんは、深々と私の両親に向かって頭を下げた。
「では、今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、今日は来てくださってありがとう。またいつでも遊びに来てちょうだい」
嬉しそうにそう言ったお母さんが今度は私のほうを向き、「少し重いけど持っていきなさい」と梨の入った紙袋を手渡してくれた。
「ありがとう。それじゃあまた、葉山さんのお家にご挨拶が終わってから、両家の顔合わせの日程は相談するね」
「分かった。迷惑かけないようにしっかりやりなさいよ」
「はーい。それじゃあ帰るね、おやすみ」
会釈する葉山さんの隣で両親に手を振り、駅までの道を並んで歩く。
実家からの距離を考え、葉山さんには今夜、私のマンションに泊まってもらう予定となっていた。
帰る回数が少なくなったとはいえ、まだ引っ越したわけではない。家具も荷物もそのまま置いてあるため、葉山さんを呼んでも一泊くらいなら不便はさせないだろう。
引っ越し前に私の荷物の量を見てもらうため、という目的もある。
「おじゃまします」
「はい。葉山さんのお部屋みたいに広くはないんですけど、ゆっくりしていってください。今日は疲れたでしょうし」
私の家に葉山さんを呼ぶのは本当に久しぶりのことだ。久しぶりというか、ちゃんと招待したのは今回が初めてになる。
前回来てもらったのは、付き合う前――私が風邪をひいて、お見舞いに来てもらった時だ。
あの時はまさか、葉山さんとこんな関係になれるとはまったく思っていなかった。
「お風呂沸かしますね。先に入ってください」
「うん、ありがとう」
夕食は食べてきたから、今日やることはお風呂に入って寝るくらいだ。
ゆっくりとくつろいでもらいたかったから先にお風呂を使ってもらい、私が上がったあとは、普段の就寝時間よりも少しだけ早い時間にベッドで横になる。
シングルサイズの木製ベッド。
いつもより小さいサイズのベッドで寝ることになるため、必然的に葉山さんとの距離が近くなる。
「あの……今日、やっぱり疲れてますか?」
「ううん。もちろん緊張したけど、疲れたってわけじゃないよ。真衣のご両親もすごく優しく話を聞いてくれたし、祝福してもらえて安心した」
「会ってくれて、すごく嬉しかったです。私も葉山さんのご両親に挨拶する時、失敗しないように頑張りますね」
「大丈夫? 僕の家族、みんな葉山さんだよ」
「え……?」
「家族に会う前に、僕のことを名前で呼ぶの、慣れておいた方がいいんじゃないかな」
そうじゃなくとも、あと数ヶ月しないうちに同じ苗字になるのだ。
呼び方を変えるタイミングとして、今が一番合っている気がする。
「……理さん?」
「うん。これからちゃんとそう呼んで」
幸せそうに蕩けた瞳で見つめられ、やっぱり触りたくなってしまう。
ぎゅっと理さんの服を握り、ベッドに横になった時から言いたかったことを口にする。
「……理さん、疲れてないって言ってましたよね?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、あの……今日はしないんですか……」
そこまで言って、ようやく私が誘っていたことに気付いてくれたのだろう。
先ほどまで優しかった瞳が、今度は少しだけ意地悪く微笑む。
「……したいの?」
問われて、素直に頷く。
しかし理さんは、あまり乗り気ではないのだろうか。困ったように眉を下げながら笑うだけで、「いいよ」とは言ってくれない。
「あ、でも本当に、疲れてるなら無理してほしくはないんですけど……」
「そういうわけじゃないよ。ただ、ここだと本当に真衣の匂いしかしないから、いつもより我慢できなくなりそうで怖いんだよね。いつもよりしつこくなっちゃうかもしれないけど、それでも大丈夫?」
いつもより、という言葉に期待して、身体の中心がわずかに疼いた。
そんな聞き方をされたら、絶対にして欲しくなるに決まっている。
引っ越しが終わったら、もうこのベッドを使うこともなくなるのだ。この場所で理さんと寝る機会は、今夜が最後になるかもしれない。
「……うん。それでもいいから、理さんに触って欲しい」
「よかった。僕もしたかった」
「んっ……」
キスをされ、理さんが体勢を変える。私の上に理さんが乗り上げ、押し倒されているような形になった。
シングルサイズのベッドは理さんには窮屈だろう。狭い場所でくっついているから、わざとじゃないのに当たってしまう。まだキスしかしていないのに、腰の辺りに感じる熱がもうこんなにも硬くなっていた。
「脱いで」
耳元で落とされる声が、いつもより近くで響いている気がした。びくりと大袈裟に反応をしてしまい、誤魔化すように着ているシャツに手をかける。
もぞもぞと服を脱いで下着だけになると、理さんが私の首筋に顔を埋め、小さく息を吐く。
「はっ……。いつもと同じことしてるのに、真衣が可愛くて理性飛びそう……」
「わ、私もなんか……熱いかも、っん、あ……」
首筋から胸にかけて、理さんがゆっくりと口付けていく。下着のホックを外されるが腕から抜かれることはなく、ただ上にずらされるだけで、二つの膨らみが晒された。
「もう立ってるね。可愛いなぁ」
「ひぅっん……!」
胸の先を舌でなぞられ、ぴくりと背中が跳ねる。
動けないように腕を押さえられると、葉山さんの舌がそこをゆっくりと舐め、口に含んで軽く吸った。
これだけでも気持ち良いけれど、もっと気持ちの良い行為を私の身体は知っている。
熱を逃がそうと腰を揺らしていると、「エッチ」と言いながら胸から口が離された。
「真衣はこっちを触られる方が好きだもんね」
「んぁ、っふ……」
ショーツの上から陰核を引っ掻かれ、理さんの肩に顔を埋めて声を抑える。恥ずかしいのに気持ち良くて、自分から当てにいくようにゆるゆると腰を動かしてしまう。
「あっ、ん……。理さんにそこ触ってもらうの、好き……」
「うん。ここ触るといっぱい濡れちゃうね。もう脱ぎたい?」
「んっ……うん、脱ぐ……。直接がいい……」
理さんの右手が、器用に私のショーツを抜き取る。今度は直に指が触れ、理さんの長い中指を、私のナカは簡単に奥まで受け入れてしまった。
ショーツの上から弄られていた陰核も親指で触ってもらい、喘ぐことしかできない口は理さんにキスをされて塞がれる。
「っふぁ、あっ……あぁっ」
「はは、とろとろ。エッチな音するね」
「やっ……も、わざとするのやだ……っん、ああっ」
ゆっくりと指を抜き差しされると、いやらしい粘着質な音が響く。耳に息を吹きかけられるとさらに濡らしてしまって、指が二本に増やされても痛みなんて感じない。
私のベッドに二人分の負荷がかかり、ギシギシと軋んだ音を立てる。いつもならこんな音は聞こえないのに、全部の音がいやらしいもののように思えた。
「あ、あっ……ああっ、やっ……」
「真衣。声、少しだけ抑えられる? こんなに可愛い声、隣に聞こえてたら僕が嫌だ」
「んっ……あ、がんばるっ……けど、気持ち良すぎると、っうぁ、我慢できないから……」
「本当、可愛いなぁ。頑張れて良い子だね」
わざと耳元で囁かれて、それだけでイキそうになってしまう。
もう何回も重ねてきた行為だ。どんな場所で抱かれることになっても、私が感じる場所は変わらない。
「うっ、ふぁ……あ、葉山さん……」
「こら。名前、駄目だよ」
「んぁっ、あ、理さ……あっ、ああっ……!」
「いっぱい鳴いちゃって、全然我慢できてないね」
「んっ、ごめんなさい。あっ、だめ……声出ちゃう、もっ、それ気持ちぃ……」
胸の先を舌でつつかれ、葉山さんの長い指がナカから私の弱いところを押す。びくびくと腰が跳ねて、イキそうになるたびにエッチな声を出してしまう。
(隣、聞こえるのかな……。分かんない……)
葉山さんほどの立派な部屋に住んでいるわけではないけれど、今まで騒音でトラブルになったことはない。
テレビの音とか話し声が聞こえたことはあっただろうか。こんなことをしている最中では、もう何も思い出せない。
「あっ、あっ、ん……あ、理さっ、それイッちゃ――っあ」
達する直前で指が引き抜かれ、寂しくなった中心がいやらしく疼く。
ひくひくと震えて続きを待っているようで、理さんが服を脱ぐ姿を泣きそうな気持ちで見つめた。
硬くなった性器が私の濡れたそこに宛てがわれ、入口をなぞるようにゆるゆると浅いところで動かされる。
「あっ、あ、や……葉山さ、」
「真衣。ちゃんと呼んで」
「あ、理さんの……早く……!」
「うん。挿れてもいい?」
そう言いながら、その先端が私のナカに沈んでいる。
でも、私が言わないと、きっと奥までは入れてくれない。
「もっ、挿れてください。早く一緒にイキたいです……」
「ほんっと、可愛い……」
「あっ! きゃ……っん、ああぁん――!」
一気に奥まで押し込まれ、待ち望んだ刺激に頭の中が真っ白に染まる。
触れているところ全部が気持ち良くて、いつも以上に理さんの動き方が激しい。一番深いところを何度も突かれて、絶え間なく押し寄せる波に抗うことができない。
声を抑えることも忘れて、思いっきり嬌声を上げてしまう。そんな私の口を塞ぐように理さんの唇が重ねられるが、それをされると脳が蕩けて、もっと気持ち良くなってしまう。
「真衣、舌出して」
「はぁっ、ん……ふぁ、あ」
「は……気持ち良い。真衣、っあ……んっ、は……駄目だ、もう出そう……」
低く色気のある声が至近距離で落とされ、それだけでまたお腹の中がきゅうっと狭くなる。私が達したタイミングで理さんも声を出し、一番奥で精を放たれたことが分かった。
お腹の中に熱いものが広がっていき、それだけで気持ち良い。
「うぁ……んっ、理さん……」
「っはぁ……真衣、やだ。逃げないで」
「んっ……ん、っ……」
深いところに沈められたまま、びゅくびゅくと注がれるのを感じて身体が震える。
頭の中がふわふわしていて思考が定まらない。ずっとイッているような感覚が続いていて、お腹の奥が甘く疼く。
力の入れ方を忘れてしまったみたいに、脚を閉じることもできなかった。
「んっ、はぁ……あっ、」
「すごいね。全部ナカで出しちゃった」
入っていたものが一度引き抜かれ、同時に入りきらなかった精液がとろりと垂れる。
耳元で囁かれるとまたゾクゾクと身体が疼き、お腹の奥が熱くなる。
「気持ち良かった、です……」
「うん、僕もだよ」
そう言って細められた瞳が、欲を映してどろりと溶ける。
「まだできる?」と息を吹き込むように問われ、いくらでも応えるつもりでキスをした。
***
カーテンの隙間から陽光が差しこみ、眩しくて目が覚める。
アラームのセットを忘れていて、予定していた時間には起きられなかった。それでも幸い、理さんはまだ眠っている。
(昨日、いっぱいしたからなぁ……)
信じられないことに、休憩を挟みつつ一晩で三回もしてしまった。
それだけではなく、私の家に挨拶に来てくれた時の緊張や、そのための手土産を用意したことによる疲労。いろんなものが重なって、理さんはいつもより長い睡眠時間が必要なのだろう。
(できれば、理さんのことを起こさないように抜け出したいんだけどな)
静かに離れようと試みるが、この狭いベッドを二人で使っている時点でそれは不可能に近い。
私が動いたことで理さんも目を覚ましてしまい、眠そうな声で私を呼ぶ。
「ん……真衣? もう起きるの?」
「あ、いえ、すぐ戻ります。お水を飲みに行くだけなので、理さんはまだ寝ていてください」
咄嗟に嘘をついて離れようとしたが、理さんはゆっくりと上体を起こす。
ぽんぽんと私の頭を撫でると、そのままベッドから足を下ろした。
「持ってくるから、真衣はゆっくりしてて」
「え……?」
引き止める前に行ってしまい、ミネラルウォーターのペットボトルを持って理さんが戻ってくる。
手渡されたら断るわけにもいかず、お礼を言って受け取り、一度喉を潤した。
もうこうなったら、変に誤魔化さずに素直に言ってしまったほうがいい。
「っあの、理さんがいつもしてくれているみたいに、今日は私が朝ご飯を作りたくて……」
「……え、そうなの?」
「本当は理さんが寝てるうちにやりたかったんですけど、起こさないでベッドから下りるのは無理でしたね……」
そもそも私の部屋は、リビングと寝室がきっちり隔たれている理さんのマンションとは違う。ワンルームのキッチンでご飯を作るのに、気付かれないでいようとするのは無理があった。
「一応下準備はしてあって、すぐに終わるので待っててもらえますか?」
「でも、昨日あれだけ付き合わせちゃったし……身体は大丈夫? 痛むところがあるなら代わりにするよ?」
「痛むところはなんて無いです。それに、いつもしてもらってばっかりだから今日は絶対に私が作りたくて。だからこのまま、理さんはベッドでゆっくりしててください」
強引に押し切り、ベッドから足を下ろしてキッチンに向かう。
作ると宣言はしたけれど、今から私が用意するのは、理さんの料理のように手の込んだものではない。
冷蔵庫から取り出した鮭の切り身を焼き、豆腐とわかめで味噌汁を作り、卵焼き機でだし巻き卵を作る。
朝に炊き上がるようセットしておいたご飯を茶碗によそい、昨日もらった梨を剥いて、お盆の上に器を並べた。
待たせた時間は十五分ほどだろうか。基本の和朝食を作り終え、二人分のお盆を部屋のテーブルに運ぶ。
大したものではないけれど、時間をかけずにできる今の私の精一杯だ。
和食を選んでみたけれど、それでも理さんのほうが美味しいものを作ってくれる気がする。
「あの……作りたいって気持ちだけで作っちゃったんですけど、理さんはお腹空いてますか……?」
「うん。早く食べたい。すごくいい匂いがするね」
即答してくれたことに安心して、テーブルの前に並んで座り手を合わせた。
理さんが最初に手を伸ばしたのは味噌汁で、一口目の反応を緊張しながら待ってしまう。
「はぁ……。美味しい」
幸せそうに溢された声に、少しだけ泣きそうになった。
そこからも手を止めることなく、理さんは最後までじっくり味わうように完食してくれた。
緊張でいっぱいだった胸が、嬉しいという感情で埋め尽くされていく。
「ごちそうさまでした。ありがとう、美味しかった」
「ふふっ、よかった。こちらこそありがとう」
そう返したあと、少しだけ理さんの気持ちが理解できた気がした。
私の食事を用意してくれたことが、本当に苦ではなかったのだろうなぁと思う。この時間が幸せで、自分でも驚くほどに心が満たされている。
「片付けは僕がやるからね」と念を押すように言われ、いつもと立場が逆転しているようでなんだかおかしくなった。
「はい。それじゃあよろしくお願いします」
笑いながら頭を下げると、不意に距離を詰められて触れるだけのキスをされた。
離れたあとに私からもやり返すと、理さんが幸せを嚙みしめるように表情を緩める。
「今日、このあと何しようか? 行きたいところはある?」
「えっと、そうだなぁ……」
私の家族への挨拶が終わっただけで、これからやることはまだまだたくさんある。
理さんのご家族に挨拶に行くのは緊張するし、引っ越しの準備も大変だろう。
両家の顔合わせや、各種事務手続き。職場に報告して式のことを考えて、自分の生活も今までとは違うものになっていく。
それでも葉山さんが横にいてくれるのだと考えると、全部が嬉しくて楽しみになる。大変なことがあったとしても、不思議と幸せな気持ちで臨むことができる気がした。
「今日は……理さんの行きたいところを教えて欲しいです。なんでも大丈夫なので」
なんだか初対面の時と似たようなことを言ってしまったと、最後まで言ってから気付く。それでもあの時とは、理さんの受け取り方も全然違っているだろう。
いきなり差し出された一枚の紙を断るところから始まった関係は、紙を一枚役所に提出して夫婦になろうと話をするまでに発展した。
一時期は不安で、理さんの人生に私が交わるなんて間違いなのではないかと思ってしまったこともあったのに、今はこんなに自然と馴染む。
胸がいっぱいで、息ができなくなる時がある。
愛しさで心臓がぎゅうっと苦しくなって、潰されそうだと思う時がある。
――幸せで死にそうって、きっと、こういう時に使う言葉だ。
それに気付いて、なんだか一人で笑ってしまった。
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葉山さんが用意してくれた手土産は、シャルメランジュで出している焼き菓子の詰め合わせだった。
綺麗な焼き色のついたフィナンシェとマドレーヌ、サブレ。ひとつひとつが丁寧にラッピングされ、白い平箱に詰められている。
私の家族に渡すため、葉山さんが特別に用意してくれたギフトボックスだ。
私の家族に会うまでは、「すごく緊張する……」と葉山さんは言っていたけれど、そんな弱音を吐いている姿など今は微塵も感じさせない。
とても頼りがいのある大人の男性という言葉がぴったりで、私の両親も葉山さんとの結婚を歓迎してくれた。
つつがなく挨拶も終わり、ほっと一息をついたところで、ダイニングテーブルの中央には葉山さんの焼き菓子が並べられる。
マドレーヌを一口食べたお母さんが、その瞬間に分かりやすく目を輝かせた。
「あら、本当に美味しい」
「ありがとうございます。店では食後にお出ししているものでして、そう言っていただけると嬉しいです」
「慎太郎に感想を聞いて、デザートだけでも食べてみたいと思っていたから嬉しいわ。ねぇ、お父さん」
「ああ。いやぁでも、まさか真衣がこんなに立派な人を連れてくるとは思ってなかったなぁ」
二口でフィナンシェを食べきったお父さんが、葉山さんを見ながら今度はサブレに手を伸ばす。
雑誌やネットニュースに出ている人を私が連れてくるとは、数日前までは思ってもいなかったのだろう。
リビングの棚の上には、東京のレストラン特集が組まれた情報誌が置いてあった。実家にそんな雑誌が置いてあるのを初めて見たから、おそらく葉山さんが載っていると知って慎太郎が買ってきたものだ。
その雑誌に載っている写真とはまた違う柔らかい顔で、葉山さんがふわりと笑う。
「いえ、そんな……。そう思っていただけるのはありがたいですが、真衣さんとお付き合いできて、幸せをもらっているのは僕のほうなので」
絶対に私のほうがたくさん幸せをもらっているのに、葉山さんはこういうことを惜しみなく言ってくれる。
両親の前で口にするのは恥ずかしいけれど、「どう考えても私のほうが幸せもらってるのにね」と思わず言ってしまっていた。
夕食を食べてしばらく団欒したあと、そろそろいい時間だから――と、葉山さんと一緒に家を出る。
最後にまた葉山さんは、深々と私の両親に向かって頭を下げた。
「では、今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、今日は来てくださってありがとう。またいつでも遊びに来てちょうだい」
嬉しそうにそう言ったお母さんが今度は私のほうを向き、「少し重いけど持っていきなさい」と梨の入った紙袋を手渡してくれた。
「ありがとう。それじゃあまた、葉山さんのお家にご挨拶が終わってから、両家の顔合わせの日程は相談するね」
「分かった。迷惑かけないようにしっかりやりなさいよ」
「はーい。それじゃあ帰るね、おやすみ」
会釈する葉山さんの隣で両親に手を振り、駅までの道を並んで歩く。
実家からの距離を考え、葉山さんには今夜、私のマンションに泊まってもらう予定となっていた。
帰る回数が少なくなったとはいえ、まだ引っ越したわけではない。家具も荷物もそのまま置いてあるため、葉山さんを呼んでも一泊くらいなら不便はさせないだろう。
引っ越し前に私の荷物の量を見てもらうため、という目的もある。
「おじゃまします」
「はい。葉山さんのお部屋みたいに広くはないんですけど、ゆっくりしていってください。今日は疲れたでしょうし」
私の家に葉山さんを呼ぶのは本当に久しぶりのことだ。久しぶりというか、ちゃんと招待したのは今回が初めてになる。
前回来てもらったのは、付き合う前――私が風邪をひいて、お見舞いに来てもらった時だ。
あの時はまさか、葉山さんとこんな関係になれるとはまったく思っていなかった。
「お風呂沸かしますね。先に入ってください」
「うん、ありがとう」
夕食は食べてきたから、今日やることはお風呂に入って寝るくらいだ。
ゆっくりとくつろいでもらいたかったから先にお風呂を使ってもらい、私が上がったあとは、普段の就寝時間よりも少しだけ早い時間にベッドで横になる。
シングルサイズの木製ベッド。
いつもより小さいサイズのベッドで寝ることになるため、必然的に葉山さんとの距離が近くなる。
「あの……今日、やっぱり疲れてますか?」
「ううん。もちろん緊張したけど、疲れたってわけじゃないよ。真衣のご両親もすごく優しく話を聞いてくれたし、祝福してもらえて安心した」
「会ってくれて、すごく嬉しかったです。私も葉山さんのご両親に挨拶する時、失敗しないように頑張りますね」
「大丈夫? 僕の家族、みんな葉山さんだよ」
「え……?」
「家族に会う前に、僕のことを名前で呼ぶの、慣れておいた方がいいんじゃないかな」
そうじゃなくとも、あと数ヶ月しないうちに同じ苗字になるのだ。
呼び方を変えるタイミングとして、今が一番合っている気がする。
「……理さん?」
「うん。これからちゃんとそう呼んで」
幸せそうに蕩けた瞳で見つめられ、やっぱり触りたくなってしまう。
ぎゅっと理さんの服を握り、ベッドに横になった時から言いたかったことを口にする。
「……理さん、疲れてないって言ってましたよね?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、あの……今日はしないんですか……」
そこまで言って、ようやく私が誘っていたことに気付いてくれたのだろう。
先ほどまで優しかった瞳が、今度は少しだけ意地悪く微笑む。
「……したいの?」
問われて、素直に頷く。
しかし理さんは、あまり乗り気ではないのだろうか。困ったように眉を下げながら笑うだけで、「いいよ」とは言ってくれない。
「あ、でも本当に、疲れてるなら無理してほしくはないんですけど……」
「そういうわけじゃないよ。ただ、ここだと本当に真衣の匂いしかしないから、いつもより我慢できなくなりそうで怖いんだよね。いつもよりしつこくなっちゃうかもしれないけど、それでも大丈夫?」
いつもより、という言葉に期待して、身体の中心がわずかに疼いた。
そんな聞き方をされたら、絶対にして欲しくなるに決まっている。
引っ越しが終わったら、もうこのベッドを使うこともなくなるのだ。この場所で理さんと寝る機会は、今夜が最後になるかもしれない。
「……うん。それでもいいから、理さんに触って欲しい」
「よかった。僕もしたかった」
「んっ……」
キスをされ、理さんが体勢を変える。私の上に理さんが乗り上げ、押し倒されているような形になった。
シングルサイズのベッドは理さんには窮屈だろう。狭い場所でくっついているから、わざとじゃないのに当たってしまう。まだキスしかしていないのに、腰の辺りに感じる熱がもうこんなにも硬くなっていた。
「脱いで」
耳元で落とされる声が、いつもより近くで響いている気がした。びくりと大袈裟に反応をしてしまい、誤魔化すように着ているシャツに手をかける。
もぞもぞと服を脱いで下着だけになると、理さんが私の首筋に顔を埋め、小さく息を吐く。
「はっ……。いつもと同じことしてるのに、真衣が可愛くて理性飛びそう……」
「わ、私もなんか……熱いかも、っん、あ……」
首筋から胸にかけて、理さんがゆっくりと口付けていく。下着のホックを外されるが腕から抜かれることはなく、ただ上にずらされるだけで、二つの膨らみが晒された。
「もう立ってるね。可愛いなぁ」
「ひぅっん……!」
胸の先を舌でなぞられ、ぴくりと背中が跳ねる。
動けないように腕を押さえられると、葉山さんの舌がそこをゆっくりと舐め、口に含んで軽く吸った。
これだけでも気持ち良いけれど、もっと気持ちの良い行為を私の身体は知っている。
熱を逃がそうと腰を揺らしていると、「エッチ」と言いながら胸から口が離された。
「真衣はこっちを触られる方が好きだもんね」
「んぁ、っふ……」
ショーツの上から陰核を引っ掻かれ、理さんの肩に顔を埋めて声を抑える。恥ずかしいのに気持ち良くて、自分から当てにいくようにゆるゆると腰を動かしてしまう。
「あっ、ん……。理さんにそこ触ってもらうの、好き……」
「うん。ここ触るといっぱい濡れちゃうね。もう脱ぎたい?」
「んっ……うん、脱ぐ……。直接がいい……」
理さんの右手が、器用に私のショーツを抜き取る。今度は直に指が触れ、理さんの長い中指を、私のナカは簡単に奥まで受け入れてしまった。
ショーツの上から弄られていた陰核も親指で触ってもらい、喘ぐことしかできない口は理さんにキスをされて塞がれる。
「っふぁ、あっ……あぁっ」
「はは、とろとろ。エッチな音するね」
「やっ……も、わざとするのやだ……っん、ああっ」
ゆっくりと指を抜き差しされると、いやらしい粘着質な音が響く。耳に息を吹きかけられるとさらに濡らしてしまって、指が二本に増やされても痛みなんて感じない。
私のベッドに二人分の負荷がかかり、ギシギシと軋んだ音を立てる。いつもならこんな音は聞こえないのに、全部の音がいやらしいもののように思えた。
「あ、あっ……ああっ、やっ……」
「真衣。声、少しだけ抑えられる? こんなに可愛い声、隣に聞こえてたら僕が嫌だ」
「んっ……あ、がんばるっ……けど、気持ち良すぎると、っうぁ、我慢できないから……」
「本当、可愛いなぁ。頑張れて良い子だね」
わざと耳元で囁かれて、それだけでイキそうになってしまう。
もう何回も重ねてきた行為だ。どんな場所で抱かれることになっても、私が感じる場所は変わらない。
「うっ、ふぁ……あ、葉山さん……」
「こら。名前、駄目だよ」
「んぁっ、あ、理さ……あっ、ああっ……!」
「いっぱい鳴いちゃって、全然我慢できてないね」
「んっ、ごめんなさい。あっ、だめ……声出ちゃう、もっ、それ気持ちぃ……」
胸の先を舌でつつかれ、葉山さんの長い指がナカから私の弱いところを押す。びくびくと腰が跳ねて、イキそうになるたびにエッチな声を出してしまう。
(隣、聞こえるのかな……。分かんない……)
葉山さんほどの立派な部屋に住んでいるわけではないけれど、今まで騒音でトラブルになったことはない。
テレビの音とか話し声が聞こえたことはあっただろうか。こんなことをしている最中では、もう何も思い出せない。
「あっ、あっ、ん……あ、理さっ、それイッちゃ――っあ」
達する直前で指が引き抜かれ、寂しくなった中心がいやらしく疼く。
ひくひくと震えて続きを待っているようで、理さんが服を脱ぐ姿を泣きそうな気持ちで見つめた。
硬くなった性器が私の濡れたそこに宛てがわれ、入口をなぞるようにゆるゆると浅いところで動かされる。
「あっ、あ、や……葉山さ、」
「真衣。ちゃんと呼んで」
「あ、理さんの……早く……!」
「うん。挿れてもいい?」
そう言いながら、その先端が私のナカに沈んでいる。
でも、私が言わないと、きっと奥までは入れてくれない。
「もっ、挿れてください。早く一緒にイキたいです……」
「ほんっと、可愛い……」
「あっ! きゃ……っん、ああぁん――!」
一気に奥まで押し込まれ、待ち望んだ刺激に頭の中が真っ白に染まる。
触れているところ全部が気持ち良くて、いつも以上に理さんの動き方が激しい。一番深いところを何度も突かれて、絶え間なく押し寄せる波に抗うことができない。
声を抑えることも忘れて、思いっきり嬌声を上げてしまう。そんな私の口を塞ぐように理さんの唇が重ねられるが、それをされると脳が蕩けて、もっと気持ち良くなってしまう。
「真衣、舌出して」
「はぁっ、ん……ふぁ、あ」
「は……気持ち良い。真衣、っあ……んっ、は……駄目だ、もう出そう……」
低く色気のある声が至近距離で落とされ、それだけでまたお腹の中がきゅうっと狭くなる。私が達したタイミングで理さんも声を出し、一番奥で精を放たれたことが分かった。
お腹の中に熱いものが広がっていき、それだけで気持ち良い。
「うぁ……んっ、理さん……」
「っはぁ……真衣、やだ。逃げないで」
「んっ……ん、っ……」
深いところに沈められたまま、びゅくびゅくと注がれるのを感じて身体が震える。
頭の中がふわふわしていて思考が定まらない。ずっとイッているような感覚が続いていて、お腹の奥が甘く疼く。
力の入れ方を忘れてしまったみたいに、脚を閉じることもできなかった。
「んっ、はぁ……あっ、」
「すごいね。全部ナカで出しちゃった」
入っていたものが一度引き抜かれ、同時に入りきらなかった精液がとろりと垂れる。
耳元で囁かれるとまたゾクゾクと身体が疼き、お腹の奥が熱くなる。
「気持ち良かった、です……」
「うん、僕もだよ」
そう言って細められた瞳が、欲を映してどろりと溶ける。
「まだできる?」と息を吹き込むように問われ、いくらでも応えるつもりでキスをした。
***
カーテンの隙間から陽光が差しこみ、眩しくて目が覚める。
アラームのセットを忘れていて、予定していた時間には起きられなかった。それでも幸い、理さんはまだ眠っている。
(昨日、いっぱいしたからなぁ……)
信じられないことに、休憩を挟みつつ一晩で三回もしてしまった。
それだけではなく、私の家に挨拶に来てくれた時の緊張や、そのための手土産を用意したことによる疲労。いろんなものが重なって、理さんはいつもより長い睡眠時間が必要なのだろう。
(できれば、理さんのことを起こさないように抜け出したいんだけどな)
静かに離れようと試みるが、この狭いベッドを二人で使っている時点でそれは不可能に近い。
私が動いたことで理さんも目を覚ましてしまい、眠そうな声で私を呼ぶ。
「ん……真衣? もう起きるの?」
「あ、いえ、すぐ戻ります。お水を飲みに行くだけなので、理さんはまだ寝ていてください」
咄嗟に嘘をついて離れようとしたが、理さんはゆっくりと上体を起こす。
ぽんぽんと私の頭を撫でると、そのままベッドから足を下ろした。
「持ってくるから、真衣はゆっくりしてて」
「え……?」
引き止める前に行ってしまい、ミネラルウォーターのペットボトルを持って理さんが戻ってくる。
手渡されたら断るわけにもいかず、お礼を言って受け取り、一度喉を潤した。
もうこうなったら、変に誤魔化さずに素直に言ってしまったほうがいい。
「っあの、理さんがいつもしてくれているみたいに、今日は私が朝ご飯を作りたくて……」
「……え、そうなの?」
「本当は理さんが寝てるうちにやりたかったんですけど、起こさないでベッドから下りるのは無理でしたね……」
そもそも私の部屋は、リビングと寝室がきっちり隔たれている理さんのマンションとは違う。ワンルームのキッチンでご飯を作るのに、気付かれないでいようとするのは無理があった。
「一応下準備はしてあって、すぐに終わるので待っててもらえますか?」
「でも、昨日あれだけ付き合わせちゃったし……身体は大丈夫? 痛むところがあるなら代わりにするよ?」
「痛むところはなんて無いです。それに、いつもしてもらってばっかりだから今日は絶対に私が作りたくて。だからこのまま、理さんはベッドでゆっくりしててください」
強引に押し切り、ベッドから足を下ろしてキッチンに向かう。
作ると宣言はしたけれど、今から私が用意するのは、理さんの料理のように手の込んだものではない。
冷蔵庫から取り出した鮭の切り身を焼き、豆腐とわかめで味噌汁を作り、卵焼き機でだし巻き卵を作る。
朝に炊き上がるようセットしておいたご飯を茶碗によそい、昨日もらった梨を剥いて、お盆の上に器を並べた。
待たせた時間は十五分ほどだろうか。基本の和朝食を作り終え、二人分のお盆を部屋のテーブルに運ぶ。
大したものではないけれど、時間をかけずにできる今の私の精一杯だ。
和食を選んでみたけれど、それでも理さんのほうが美味しいものを作ってくれる気がする。
「あの……作りたいって気持ちだけで作っちゃったんですけど、理さんはお腹空いてますか……?」
「うん。早く食べたい。すごくいい匂いがするね」
即答してくれたことに安心して、テーブルの前に並んで座り手を合わせた。
理さんが最初に手を伸ばしたのは味噌汁で、一口目の反応を緊張しながら待ってしまう。
「はぁ……。美味しい」
幸せそうに溢された声に、少しだけ泣きそうになった。
そこからも手を止めることなく、理さんは最後までじっくり味わうように完食してくれた。
緊張でいっぱいだった胸が、嬉しいという感情で埋め尽くされていく。
「ごちそうさまでした。ありがとう、美味しかった」
「ふふっ、よかった。こちらこそありがとう」
そう返したあと、少しだけ理さんの気持ちが理解できた気がした。
私の食事を用意してくれたことが、本当に苦ではなかったのだろうなぁと思う。この時間が幸せで、自分でも驚くほどに心が満たされている。
「片付けは僕がやるからね」と念を押すように言われ、いつもと立場が逆転しているようでなんだかおかしくなった。
「はい。それじゃあよろしくお願いします」
笑いながら頭を下げると、不意に距離を詰められて触れるだけのキスをされた。
離れたあとに私からもやり返すと、理さんが幸せを嚙みしめるように表情を緩める。
「今日、このあと何しようか? 行きたいところはある?」
「えっと、そうだなぁ……」
私の家族への挨拶が終わっただけで、これからやることはまだまだたくさんある。
理さんのご家族に挨拶に行くのは緊張するし、引っ越しの準備も大変だろう。
両家の顔合わせや、各種事務手続き。職場に報告して式のことを考えて、自分の生活も今までとは違うものになっていく。
それでも葉山さんが横にいてくれるのだと考えると、全部が嬉しくて楽しみになる。大変なことがあったとしても、不思議と幸せな気持ちで臨むことができる気がした。
「今日は……理さんの行きたいところを教えて欲しいです。なんでも大丈夫なので」
なんだか初対面の時と似たようなことを言ってしまったと、最後まで言ってから気付く。それでもあの時とは、理さんの受け取り方も全然違っているだろう。
いきなり差し出された一枚の紙を断るところから始まった関係は、紙を一枚役所に提出して夫婦になろうと話をするまでに発展した。
一時期は不安で、理さんの人生に私が交わるなんて間違いなのではないかと思ってしまったこともあったのに、今はこんなに自然と馴染む。
胸がいっぱいで、息ができなくなる時がある。
愛しさで心臓がぎゅうっと苦しくなって、潰されそうだと思う時がある。
――幸せで死にそうって、きっと、こういう時に使う言葉だ。
それに気付いて、なんだか一人で笑ってしまった。
Fin
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