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2巻
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やあ! 俺の名前は神城タケル。
地球にある日本っていう国の横浜ってところで、普通に生活していた普通の人間だよ!
普通の人間だからこそ、それがいいんだとかなんだとか言われて、見知らぬ『青年』に軽く殺されちゃったんだ! こっわーい!
……いや、ちょっと待て落ち着こう俺。こういうテンション高いやる気に満ち溢れたキャラじゃないんだ、俺は。
休日は昼まで寝てごろごろして溜まった洗濯物を片付けよう、とか思っているうちに思っているだけになって、気がついたらネットサーフィンして夕暮れ見てるんだよ。そんな自分に駄目だぞっ☆ とか言っているくせして、来週も同じこと繰り返すんだ……はあ。
……いや、何で愚痴っているんだ俺。
違うんだ。そうじゃない。
とにもかくにも、普通の人間が適任だということで、普通の俺が異世界「マデウス」に転生させられたのです。
それで、『青年』にもらった魔法の力や不思議な鞄を使って冒険者となった俺は、素材採取家として生きていくことにしたわけ。
素材採取家っていうのは、魔法で価値あるものを採取し売る仕事。マデウスでは動物のうんこにさえ価値があったりするから、まあなんとかやっていけているよ。
そうそう、相棒に小さな黒いドラゴンのビーっていうのがいる。これまたすげぇ可愛いんだ。放置するとすぐに生臭くなるけど。古代竜のボルさんっていう、超でかいドラゴンの子供だ。こいつを預かって、一緒に旅をしているんだよ。
で、今はベルカイムっていう少し大きな町に滞在中。
ギルドの仕事をこなしつつ、日常を穏やかに過ごしていたんだ。
ところがある日、武器鍛冶職人のドワーフ・グルサス親方と弟子の猫獣人・リブさんに頼まれて旅をすることになった。ドワーフの国で採れる鉱石が欲しいんだと。ベルカイムからだいぶ離れているから、旅行のつもりで出かけた。
そうしたら、森で腹をすかせたエルフに逢ったんだよ。
小汚い恰好をした、妙に臭いにおいを放つエルフに。
1 拾ったのは、残念エルフ
ヴェルヴァレータブロライト。
エルフはそう名乗った。
無骨な甲冑の下から出てきたのはスラリとした美しい手足。腰やらなんやらの身体つきを見る限り、どうもこいつは女性らしい。妙な話し方やいかつい見た目で性別を判断しないで良かった。誰ですか女性にしては絶壁だなんて思ったのは。
ヴェルヴァレータブロライト氏、略してブロライトは、エブイラ村から真っすぐドワーフの国を目指していたそうだ。目的は白い天馬を買うこと。
だがしかし、気持ちが急ぎすぎて旅支度をまったく整えていなかった。まだあると思い込んでいた食料はなくなっており、水もなく、雨露や薬草などで飢えをしのいでいたと。
薬草はしょせん薬草。胃もたれは治すが空腹は満たさない。モンスターや動物を倒そうにもなかなか遭遇しない。
と、いうわけで三日もひもじい思いをしていたとのこと。
「せめて身体を拭くとかしてくれよ! ここまでクセェとエルフのイメージ丸つぶれだ!」
「腹が減りすぎていて体臭など気にしてられなかったんじゃ! 仕方なかろうが!」
「俺の想像する素敵なエルフのにおいは、ペパーミントの香りがする春のそよ風だったんだ! それを、この前ビーが突っ込んだ堆肥みたいなにおいさせやがって!」
「たぁっ!? た、堆肥と比べるとは無礼じゃろう!」
「うるさい黙れ清潔展開!!」
「にぎゃああああ!」
問答無用の全力で、清潔の魔法をかけてやった。
輝きを失っていたくっちゃくちゃの金髪を、元のハニーブロンドに。動物の糞のにおいがする肌は、真珠色の美しい肌に。全身真っ黒けだった甲冑と衣服には汚れ分解とにおい消滅をかけ、そりゃあもう徹底的に綺麗にしてやった。
エルフは汚れ一つ残さず綺麗になった自分自身を見て、信じられないと目を大きく見開いた。
「な、何をした!」
「何をしたじゃねぇよ。アンタが恐ろしくクセェから、綺麗にしてやっただけだろう」
容赦ない清潔は、汚れきっていた汚エルフを理想のエルフにした。
ふわりと香る花の匂いに、俺はうんうんと頷く。これこそエルフだよな。絶世の美女はイイ匂いがしてくれないと駄目なんだよ。
「これは魔術か!? なんともけったいじゃな。貴殿は力のある魔法使いなのか? 素材採取を生業としていると言っていたような気がするが」
輝きを取り戻したブロライトはとても美しかった。でもさっきの超絶クッサイエルフを見ているから、今更ときめかないのが残念でならない。
「ちょっと魔法が使える、綺麗好きの素材採取家ってことで」
「そうなのか! ……まったくわからん。しかし、貴殿の魔力がわたしたちをはるかに超えておるのはわかる」
それはブロライト個人ではなく、エルフ族よりもという意味だろう。そういえば、エルフ族は人間に比べて魔力が多いと聞いたことあるな。
それはそうと、ちょうど開けた場所に来たことだし、今夜はここで野宿をしよう。
「さて、俺はここで野宿をするが、どうする?」
「むっ? わたしも貴殿とともに過ごさせてもらっても構わないのか?」
「どうせ四半時もすれば、また怪獣みたいな腹の虫鳴らすんだろ? それに、俺もドワーフの国を目指しているからな」
「そうなのか!」
「目的地が同じことだし、しばらくアンタの腹の虫くらい黙らせてやるよ」
「まことか!! いやっ、それは嬉しいが、貴殿の食料がなくなるじゃろう? 現に今、わたしがだいぶ消費してしまった……ようじゃが……?」
ブロライトは、俺が鞄一つしか身につけていないことにようやく気づいたようだ。食料を忘れてきた彼女すら、大きなリュックサックにフライパンをぶらさげた重装備であるというのに。
「安心してくれ。俺は便利な魔道具を持っているんだ」
そう言いながら、俺は鞄から巨大な鉄鍋を取り出す。中華鍋に酷似したそれは既に愛用品。
その光景にブロライトはぎゅんと目を見開き、形の良い口をぱっかりと開けた。だからそういうマヌケな顔をするなよ美女が。
「アイテムボックスか!」
「そうそう」
空間術で鞄の中に虚無を作っている状態らしいから、本当は魔道具ではないのだけど。
間近で見たのははじめてだと、ブロライトは前のめりになって目を輝かせる。コイツ、絶対に悪人じゃないな。
鉄鍋に続いて、最大容量二リットルはある水袋、新鮮な肉の塊、数種類の香辛料と調味料、小麦粉を練って固めたものを取り出す。
次々と出てくる食材にいちいち感嘆の声を上げるブロライトに指示し、鍋を置く場所を作らせる。働かざる者、食ってはならぬ。
薪を集めてくると意気揚々と森に入ったブロライトが、数分で巨大な大木を片手に抱えて持ってきた姿には驚かされた。腕とかすげえ華奢なのに、あんな重たそうなものを軽々と持てるとは。おまけにその巨木を空中にぺっと放り投げたと思ったら、両手の短剣であっという間に細切れ。
なんということでしょう、匠の技で大量の薪が出来上がりました。
俺が野営をするときは薪に火を灯すことはない。炎が出る魔石と温度調節ができる魔石で事足りるからだ。あとは四方に結界の魔石を置けばそれで十分。
だがブロライトは、それでは駄目だと言った。
「焚き火の跡を残すことが重要なのじゃ。この場所は安心して野営を行えると他の者に知らせることができるじゃろう」
「なるほど」
「誰しも貴殿のように便利な魔石を幾つも所有してはおらん。なんじゃ、このおんど……調節とかいう石は。便利でけしからんではないか」
巨大な鉄鍋に水を入れ、加熱で沸騰。そこへ温度調節の魔石を投入すると、一定の温度を保ったまま鍋はグツグツと煮える。それが非常識なほど便利らしい。
しきりにどこで売っているのか聞かれたが、いちいち覚えていられるかと言い訳をする。
煮えたところで魚の干物を粉末にしたダシとスープの素を入れ、均等に切った肉に塩コショウと香辛料をまぶしたものを入れる。歯ごたえの楽しめる山菜と数種類のキノコを入れ、しばらく煮詰めてから練った小麦粉をちぎって投入。「なんちゃって肉すいとん」の完成だ。
醤油があればもう少し濃厚な味になるのだが、ないものを悔やんでも仕方がない。
辺りに食欲をそそる香ばしい匂いがたちこめると、ブロライトの腹の怪獣が盛大にわめきだした。素直でよろしい。
「ピュイ」
「お前、いつまでも隠れていないで出てこいよ」
背中側のローブの下に隠れていたビーがやっと腹に回り、匂いに誘われて顔を出した。
「ぬっ? ……それはドラゴンじゃな」
「ビーっていうんだ」
「ほほう」
人見知りを発揮したビーは、翼で顔を隠したまま尻尾をふりふり。コイツ、照れてやがるな。
「黒き肢体はなんとも艶やかじゃの。幼き身でありながら雄々しき竜の貫禄すらある」
「ピュゥゥィィ……」
「我らエルフ族はドラゴンを尊き神の御使いと崇めておる。貴殿が如何にしてこのドラゴンを傍らに置いておるのかはわからぬが……ドラゴンよ、そう怯えずとも良い。二人には強く固い絆があるのじゃろうな」
「ピュイッ!」
「うむうむ、見れば見るほど良き竜……ぎゅるるるるるる~~~~……で……あるな!」
ほんと、黙っていれば絶世の美女のはずなんだがなあ。
大鍋にこれでもかと作ったなんちゃって肉すいとんは、ものの数十分で片付いてしまった。
俺もそれなりに食って腹を満たしたが、それ以上に夢中になって頬張っていたのが、汚エルフ改め残念エルフ。
ほっぺたこんもりさせてしゃべろうとしたときは思わず叫んだ。「呑み込んでからしゃべれ」と。しゃべり言葉は戦国武将の奥方様ふうなのに、いろいろと残念でならない。
「このような美味い飯を野営で食べられるとは!」
「そうか。それは良かった」
「素晴らしい腕前じゃな。貴殿は料理人でもあるのか」
「違うって。素材を採取する人です」
「冒険者じゃと」
「そう。と言っても、まだ雛ッ子だけどな」
「むっ? そうなのか? 貴殿の纏う気配は高ランクのそれと変わりないと思うたが」
「ちょっとだけ魔力が多いのかもしれない」
「なるほどな。よくわからん」
俺の中の素敵なエルフのイメージをことごとく破壊してくれたブロライト嬢は、いちいちオーバーリアクションで受け答えしてくれる。これはこれで楽しいぞ。なんせ外見は美女なのだから、これでつまらんとか言ったら、男としていろいろと駄目な気がする。
会話ができないビー相手でも寂しいとか微塵も感じなかったが、騒がしいエルフのおかげで今夜は随分と賑やかになった。ブロライトの話もなかなか興味深い。
「わたしは攻撃魔法は苦手なのじゃ。回復魔法も不得手でな」
「それじゃ、物理攻撃一本? さっきの大木細切れは見事だった」
「切り刻むことは得意じゃ!」
「あっ、はい。ええと、武器は短剣?」
「ああ。我が祖国で秘宝とされる業物じゃ。名を隼丸と言う」
「二本あるな」
「二本で一つの名じゃ」
そう言うとブロライトは、俺をまったく警戒せず、黒い刀身が輝く短剣を差し出してきた。
黒刃の剣はベルカイムでも売られているが、ここまで力強い気配を感じるものはなかった。握りやすい赤い柄には滑り止めの革。宝石などの飾りは一切ついていないのに、刻まれた模様は芸術品のように美しい。
さて、コソコソと調査してみると……
【シルフジャンビーヤ ランクA】
ハイエルフ族の秘宝。古代エルフの人工遺物であり、風精霊の術を取り込む性質を持つ。
扱う者の潜在魔力によって斬れ味が変わり、その素早さを向上させる。
[備考]ハイエルフ族でも選ばれた血筋にしか扱えない。危険を察知する。
おおうランクAの武器か! なにゆえ名が和風なのかはさておき、このハイエルフっていうのが気になる。ハイエルフって……エルフの上位種? この世界でのハイエルフの扱いがわからないからなんとも言えないが、ともかくこの剣はレアらしい。
「いい剣だな」
使い心地やらはわからないが、ともかく見た目は綺麗だ。
「…………ふむ」
手渡された剣をブロライトに返すと、ブロライトは眉根を寄せて真剣な顔になった。
「どうした?」
「すまん、貴殿を試させてもらった」
「試す?」
「隼丸には不思議な力があってな。わたしに悪意がある者は触れることができないのじゃ」
あー、選ばれた者しか扱えないとかなんとか。剣が持ち主を選ぶっていう、きっとそんな魔道具の役目もあるのだろう。
「つまりがブロライトをどうにかしちゃいたいとか考えていると、剣は持てないってことか」
「何をどうしちゃいたいのじゃ」
例えばのお話です。
キョトン顔やめて。
「初対面でたらふく飯を食わせてくるようなヤツは怪しさ満点だからな。試したくなる気持ちはわかる」
「すまん」
「いいって。おかげで貴重な剣を見ることができた。ありがとう」
ちょっと集中して調査してみた結果、素材はなんとオリハルコンと、何らかの魔鉱石が使われていることがわかった。
漆黒のオリハルコンは貴重な鉱石だ。ミスリル魔鉱石のレアさに比べれば劣るが、オリハルコンは、アダマンタイト、ミスリルと並んで世界三大鉱石として知られている。貴重ゆえにお値段もそれはそれはお高い。何千万レイブもするのだろう。いや、値段なんて付けるのも失礼なくらいだ。
いくら剣が人を選ぶとはいえ、これほど貴重なもの……俺を試すためだとしても、わずかでも相手を信頼しなければ見せることもしなかったはず。その気持ちが嬉しい。
ブロライトは微笑みながら剣をしまい、焚き火の火を調節しながら聞いてきた。
「貴殿は何をしにヴォズラオを目指す」
「ぼずらお……ドワーフ王国の都市の名前だっけ。俺は依頼されたんだ。ベルカイムの鍛冶職人に」
「ほう?」
「リュハイ鉱山にあるイルドラ石を持ってきてほしいんだと」
数量は指定されなかったが、剣を一振り作るにはこぶし大の塊が五つは必要らしい。
俺には便利な鞄があるから、見つけられただけ持って帰るつもりだが。
「わたしは姉に贈る白き天馬を探しておるのじゃ」
「エブイラ村でそんなこと言ってたな。どうして天馬にこだわる」
「リュティカラ……わたしの姉が、白き翼を持つ馬を所望しおってな。それならば見つけてやろうと思うたのじゃ」
「ふうん。俺も一角馬を探しているから、イルドラ石を探すついでに見つけたい」
「一角馬ならばわたしは目利きができる! 一飯の恩だ、貴殿の馬はわたしが見立ててやるぞ」
「一飯で済むのかよ」
「……ハッ!」
ドワーフの王国までは、のんびり歩いてここから三日はかかる。
旅は道連れだ。残念エルフの飯くらい面倒見てやる。ビーも懐いているようだし、さっきの焚き火のような俺の知らないことも教えてもらえるかもしれない。それに中身はちょっとアレだが、外見は絶世の美女なのだ。美しい若草色の瞳に見つめられると、ちょっとドキドキしちゃう。
「エルフ族は恩を仇で返さぬ。わたしは貴殿に何を返せば良い。今は手持ちが心もとないが……」
「金はいらん」
「む。ならば何を欲する」
「俺はこの国に来てまだ間もない。知らないこともたくさんある。さっきの焚き火のこととかな。だからそういう基本的な、当たり前のことを教えてもらいたい」
「……それだけか?」
「それだけって、けっこう面倒くさいことだと思うんだが」
「もっとこう、エルフの秘術を教えろとか秘宝をよこせとか」
秘術って何だ? 秘密の術? だったら無理やり聞き出すことじゃない。エルフ族には門外不出とか禁忌とされている術があるのだろう。だけど、知ったところで何をすればいいかわからないし、秘宝は……見るだけなら興味あるかな。
「秘術も秘宝もモノによるが、今のところ必要ない」
「なんと!? ブロジェの弓に興味がないと申すのか!」
「なにそれ」
「ブロジェの弓を知らんのか!」
「知らん」
知らんから欲しいと思わない。弓なんて扱えないからあっても邪魔になる。
懐は潤っている、三食食うのに困らない、便利な鞄に魔法がアレコレ使えて、可愛いパートナーがいて五体満足で健康。これ以上何を望めばいいんだ? 地位も名声もいらんわ、めんどくさい。
「むううう、貴殿は変わっておるのう。エルフの秘宝は冒険者ならば命を懸けてでも手に入れようと思うものを」
「そういう誰もが知っている常識っていうのを知らないだけだ」
「なるほどな。知らないから欲しない、と」
「そうそう」
ブロライトはやっと納得できたのか、珍獣でも見るような目で俺を眺めるのをやめ、一人頷く。
「うむ。どのような縁にしろ、貴殿とここで巡り逢えたのはわたしにとって吉兆なのじゃろう。我らが尊き神、リベルアリナに感謝」
よくわからんが、ブロライトは意思の強そうな瞳で俺を見つめると、右手を差し出した。
「しばしの旅路、世話になる!」
前歯に食べ物カスを付けたまま。
女性と二人(と、一匹)で野営、ちょっとドキドキしちゃう……
……なんてことをわずかでも思っていた俺をびんたしたい。
ブロライト嬢、鎧を脱いで身一つで枯れ草の上に横になったと思ったら、即行熟睡しやがった。俺がせっかく清潔な敷布を用意してやったのにもかかわらず、だ。
少しくらい俺に、俺という男に警戒とかしないのか? するだろう普通! しかも豪快にイビキをかきやがる。寝ぼけながらケツまで掻くときたもんだ。なんて男らしい。
いや、コイツは麗しのエルフのはずだ。
なんだろう、おっさんの影が見え隠れするのは。
2 背後の悪寒、君の名は
鬱蒼とした森を抜けた先は、広大な平野。
獣道程度の歩道を進むと、キュリチ大河にぶつかる。対岸がうっすらとしか見えないその巨大な河は、遠浅で徒歩でも河の中を進めるらしい。とても綺麗な河だ。幾人かの冒険者らしき人たちや商人が、馬車や馬、徒歩などで河に架けられた橋の上を行き来している。
古ぼけたその橋は時代劇に出てくるような木造で、重量感のある馬車が通ってもびくともしない。ああ、柱は石で補強されているのか。
「河の対岸はドワーフの国、あれがリュハイ山脈じゃ。見えるじゃろ?」
「穂高連峰みたいだな」
「何処じゃそれは」
眼前に広がる立派な山脈。標高がどれくらいなのかはわからないが、山頂は雪が積もっているようだ。この世界にも雪は降るらしい。良かった、黒とか赤ではない白い雪で。
ブロライトと並んでのんびりと橋を渡る。
河の流れは穏やか。河上では釣りをする人もいた。橋の周りにはちょっとした宿場町もあり、冒険者や旅人、商人相手に商売をしている。
ところでこのブロライト嬢、どうやら育ちの良さそうなどこぞのお嬢様のような気がする。
まず貨幣価値をよくわかっていない。
明らかにぼったくりであるだろう値段のついた果物を言い値で買おうとするし、冒険者の必需品である水袋を裂いて果物入れにしようとするし、容姿を褒められればホイホイ付いていこうとするし。
これがエルフという種族の特徴なのか、個人のものなのか判断がつかない。
俺以上に世間知らずというか、ド天然通り越して温室育ちなんじゃ? と疑っているわけだ。
かといって、対モンスターとなると人が変わったような動きを見せる。
ビーと同じくらい警戒心が高く、瞬発力があり、戦闘能力が恐ろしく高い。左右の腰にぶらさげたジャンビーヤを両手に持ってくるくると風のように素早く動く様は、さすがのエルフ。
魔法は使えないと言っていたが精霊術に長け、特に風精霊と仲が良いらしく、身軽に動けるのは精霊の助けがあるからとか。思わず戦闘に見入ってしまうくらいだ。男としては、こういうアクションに興奮する。かっこいい。
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