2 / 3
君は猫だ
しおりを挟む
「また来たの」
あいつは今日もそこにいた。
「悪いか?」
「いや、暇なんだなと思ってね」
「こんな世界で」
僕はあいつの座る隣に座った。
「することなんてあるとでも?」
「生き残りを探して泣き走る」
地味に酷いことを言ってくれる。
それはあいつが見た僕の最初の姿。
「馬鹿じゃねぇの」
あいつは月のない夜空を見つめていた。
「今日は月はないけど」
「知ってるさ」
何もない空へと手を伸ばし、そこにあるはずの月を乞うように握り締める。
「じゃあ何を?」
「いつもそこにあるものが無くなれば悲しむ者が出るだろう」
その握りしめた手をこちらへ向けパッと開いて見せる。当然ながらそこに月なんてありはしない。
「君のように」
あいつは笑っている。からかわれている。
「一人は寂しいだろう? おいで、撫でてやろう」
そう言って腕を広げる。
「余計なお世話だ」
顔を背けると首元の銀の鈴がシャリンと遠慮がちに音を立てた。
「そういえば、君はなぜ僕の言葉がわかるのかな?」
「猫が人間の言葉がわからないなんて誰が決めたんだよ」
「さぁ、誰だろうね。誰でもいいけれど君が言葉のわかる猫でよかったと思ってるよ」
「なんだよ珍しいな。感傷的な台詞なんてらしくない」
「らしさなんてなくていい。面倒くさい」
くだらない、そう言って吐き捨てた。
雲が晴れても何も変わらない。瞬く星は辺りを照らすほどの力は備えていないようだ。
「くるよ」
沈黙を破ってあいつは言った。
「何が?」
「一番らしくないやつさ」
あいつが言い終わる前にすでにそいつは姿を表した。突然真っ黒な巨体が視界を塞ぎ、低い唸りをあげながら僕らを飛び越え屋上へと足を下ろす。
「よく来たね」
柵を下りたあいつは黒い影に笑って見せた。
あいつは今日もそこにいた。
「悪いか?」
「いや、暇なんだなと思ってね」
「こんな世界で」
僕はあいつの座る隣に座った。
「することなんてあるとでも?」
「生き残りを探して泣き走る」
地味に酷いことを言ってくれる。
それはあいつが見た僕の最初の姿。
「馬鹿じゃねぇの」
あいつは月のない夜空を見つめていた。
「今日は月はないけど」
「知ってるさ」
何もない空へと手を伸ばし、そこにあるはずの月を乞うように握り締める。
「じゃあ何を?」
「いつもそこにあるものが無くなれば悲しむ者が出るだろう」
その握りしめた手をこちらへ向けパッと開いて見せる。当然ながらそこに月なんてありはしない。
「君のように」
あいつは笑っている。からかわれている。
「一人は寂しいだろう? おいで、撫でてやろう」
そう言って腕を広げる。
「余計なお世話だ」
顔を背けると首元の銀の鈴がシャリンと遠慮がちに音を立てた。
「そういえば、君はなぜ僕の言葉がわかるのかな?」
「猫が人間の言葉がわからないなんて誰が決めたんだよ」
「さぁ、誰だろうね。誰でもいいけれど君が言葉のわかる猫でよかったと思ってるよ」
「なんだよ珍しいな。感傷的な台詞なんてらしくない」
「らしさなんてなくていい。面倒くさい」
くだらない、そう言って吐き捨てた。
雲が晴れても何も変わらない。瞬く星は辺りを照らすほどの力は備えていないようだ。
「くるよ」
沈黙を破ってあいつは言った。
「何が?」
「一番らしくないやつさ」
あいつが言い終わる前にすでにそいつは姿を表した。突然真っ黒な巨体が視界を塞ぎ、低い唸りをあげながら僕らを飛び越え屋上へと足を下ろす。
「よく来たね」
柵を下りたあいつは黒い影に笑って見せた。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
“いつまでも一緒”の鎖、貴方にお返しいたします
柊
ファンタジー
男爵令嬢エリナ・ブランシュは、幼馴染であるマルグリット・シャンテリィの引き立て役だった。
マルグリットに婚約が決まり開放されると思ったのも束の間、彼女は婚約者であるティオ・ソルベに、家へ迎え入れてくれないかというお願いをする。
それをティオに承諾されたエリナは、冷酷な手段をとることを決意し……。
※複数のサイトに投稿しております。
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる