双珠楼秘話

平坂 静音

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祝言 三

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 こうして一緒に立つと、咲き初めの桜と盛りの牡丹を並べているように客達には見えるだろう。おそらく家令の盟宝はそれを狙って、こういう衣をあつらえたに違いない。
「二人とも似合っているじゃない。金持ちのお客の目に留まって、いい縁談が入ってくるかもよ」
 そんな香玉の軽口に桂葉が一瞬顔をしかめた。
 桂葉は十七だから、結婚するならそろそろ焦らないといけない。女中の先輩のなかには、すでに結婚する気はなく生涯奉公するつもりの娘もいる。今度主殿勤めになる年長の、愛莉あいりという娘などは、もう二十をとっくに過ぎていて、今更嫁ぐ気はないと言っていた。一生、呂家に骨を埋める覚悟なのだろう。そういう娘も珍しくないのだ。
(私も、そうなるのかな……?)
 この数日で、輪花も世間の仕組みというものが、いよいよ身にしみて解ってきた。
 正式な結婚を望むのなら、十五、六、遅くとも十八までにはちゃんとした相手を見つけなければならない。十八を過ぎると、この時代ではすでにき遅れとみなされ、いい条件の結婚は難しくなる。またいったん呂家のような大家に仕えてしまうと、いくら田舎とはいっても、御殿勤めの華やぎに染まってしまうため、庶民の男と結婚して質素な生活を送ることになじめなくなってしまうという。
 実際、目の前の香玉などは、一度は八百屋の男に嫁いだものの、どうしてもそのつましい商売人の生活になじめなくて、ふたたび呂家に戻ってきたのだそうだ。   
「なんだかもう、朝から晩まで生活のすべてが違うのよね。とても、いまさら八百屋の女房なんて勤まらないわ」
 姑とも折り合いが悪いうえに、なかなか子どもが出来なかったので、いっそ貧しく苦労するよりは、と呂家に戻ることを選んだのだそうだ。
 昨夜、大部屋であけすけに自分の話を語った彼女は二十二歳。充分若々しく美しく、お仕着せの衣もなかなか似合っている。たしかに店先で泥のついた大根を売りさばくより、伽羅の香がただようお屋敷の奥で、美しい主人の側にはべって、その佳人かじんのために扇で風を作っているような仕事の方が似合いそうだ。
 もっとも、彼女もこのままずっと奉公する気はないらしく、年に二回ほど来る都からの客人の目にとまることを狙っているようだ。そんな野心を持つのも無理はないほどに美しい女だと輪花も思う。
 そういう〝大人たち〟の話を聞くにつけ、ついついよけいなことを考え込んでしまう自分を、輪花は内心で叱咤した。
(私ったら……! 働き始めたばかりでこんなこと考えてもしょうがないでしょう! 早くお出迎えに行かなきゃ)

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