双珠楼秘話

平坂 静音

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祝言 五

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「真面目そうな方ね」
 隣の桂葉のつぶやきに輪花はうなずいた。近くの誰かが、
「お兄さんの方が私の好みだわ」
 と茶化したような言葉を吐く。
「そうね、私も兄の方が……」
「あら、お婿様の方が美男よ」
 女たちがひとしきり囁いた後、門前の一行は、門内へと入ってきた。一同はあわてて背を伸ばす。
「皆、こちらが呂家の婿殿になられるお方、英風様だよ」
 火玉の言葉に使用人一同は頭を下げて礼を尽くす。
「いらせられませ、英風様」
 声を合わせて全員で合唱するような挨拶を述べる。
 これは昨夜練習させられたのだ。新入りの輪花はどことなく面映おもはゆく感じられて、いっそう深く顔前で合わせた両袖で頬をかくした。
 ちょうど側の柳の木がほどよい影を作ってくれており、その木陰に身をひそめるようにして、輪花は崔家の人々が通り過ぎて行くのを待った。
 慣れている先輩たちは、ちょうど客人たちが目の前を通っていくところでにこやかな笑顔を向けるが、輪花は気恥ずかしくて、ひたすら顔を伏せていた。
 それでも、伏せた目の端に紫苑しおん色の裾が入った瞬間、つい顔を上げてしまう。
 偶然、英風がこちらに目を向けていて、一瞬、二人の目が合ってしまった。
(あら、やだ……)
 輪花は焦ってまた顔を伏せた。
 だが、目が合った一瞬、英風が自分を見て微笑んだことに気づいた。
(あの方が、私の新しいご主人様……)
 輪花はそんなことを思いながら彼の背を見送った。

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