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余興 一
しおりを挟む宴はたけなわとなった。
この日のために都から呼びよせた楽士たちが、銅鑼、鉦、琴、鈴を鳴り響かせ、さらに宴を盛りあげる。
輪花はせわしく黒檀の卓をまわって、綺羅をまとった客たちに酒を注いでいった。
広間の壁は華やかな紅地に、八宝といわれる法輪、法螺貝、宝傘、白蓋、蓮華、宝瓶、金魚、盤長の模様を青色で描いたにぎやかな柄の壁紙が張りめぐらされ、床は田舎ではめずらしい滑石が敷きつめられ光沢を放ち、まぶしいほどに贅沢だ。
正面中央のひときわ高く作られた壇には、新郎新婦がお人形のように上品にならんでいる。
輪花は、慣れない手つきで客人たちの月光杯に酒を満たしながら、それでも娘心にあおられて壇上の花嫁花婿に熱い視線をおくった。
(金媛お嬢様……お綺麗)
真紅の花嫁衣裳をまとった彼女は、それこそ生きた花嫁人形のようだ。
額には金でこしらえた蝶のかたちの額飾りを嵌め、両耳には水晶の耳飾りを垂らし、いつにもまして青いほどに白い肌をほんのり真昼の月のように輝かせ、花嫁の作法にのっとって目を伏せ、つつましやかな百合の花ように座っている。
新郎新婦の卓には当然、牛、豚、川魚をふんだんに使った豪華な料理や、金波玉液の美酒が配されているが、金媛は一口もつけていないはず。それも花嫁の作法である。冷めていく料理を、惜しんでしまうのは、輪花がまだ子ども時代を脱けきっていないせいかもしれない。
花婿の方は、客からすすめられるままに杯をかさね、さも美味しそうに料理を口にしている。それでも時折、気遣わしげに隣の花嫁を見ては、何か囁いているようだ。花嫁は初々しく頷くばかりだが、その動作を、輪花はとても好もしく思った。
(お優しそうな方で良かったわ)
そこでひときわ高く銅鑼が鳴り響くと、楽士たちと同じく都の妓楼から呼び寄せた、七色の衣をまとった妓女たちが広間の中央に進み出てきた。中でも一番美しく華やかに見える桃色の衣をまとった妓女が、凛とした声で祝いを述べた。
「花婿様、花嫁様、この度は、大変おめでとうございます。わたくしども《宝菊楼》からも、あらためてお祝いの言葉を述べさせていただきます。本日は、つたない芸でございますが、精一杯勤めさせていただきますので、ご来賓の皆様も、どうぞ心ゆくまでお楽しみくださいませ。では、まずわたくしから」
そう言うと、彼女は高らかに祝いの歌をうたいはじめた。
「あれが、今都の花柳界で一番の人気の妓女、彩菊だそうよ」
桂葉の耳打ちに、輪花はぼうっとして頷いた。
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