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憂い顔の新妻 二
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「……怒ってはいないよ。この後、少し調べものをしたいのだ。……後でまた寝室に行くから」
寝室に行くから……。その言葉に輪花はつい頬を赤らめそうになったが、その言葉を聞いたとたん、彼女の顔が曇った。紅い唇をきゅっと噛んで、歯痒いような、悔しいような表情をする。今にも泣き出しそうだ。
「いったい、どうしたんだい?」
「あの、お嬢様は気分が悪いのです」
あわてて枇嬋が口をはさむと、英風は声に怒気をにじませた。
「おまえたち二人とも外に出てくれないか」
「え? ですが」
「いいから出てくれ!」
怒鳴るようにそう言う英風が輪花には頼もしく思えた。婿養子だからといって、英風がけっして必要以上にへりくだらない様子が輪花は嬉しい。
枇嬋は不快そうな顔をしたが、それでもさすがにそれ以上は何も言わず、足早に室を出ていく。輪花も後を追った。
「いったい、どうしたというのだい? ……何か怒っているのかい?」
枇嬋と輪花が出ていって今は二人きりだ。卓上の料理はどんどん冷めていくが、英風にはどうでも良かった。
頑是無い子どものように自分の袖をつかんで離そうとしない妻がひどくいじらしくなってきた。
相手は英風の問いに首を振って否定を示すが、それ以上は何も言わない。
そっとそのかぼそい身体を抱くと、まるで猫のように自分の懐に全身を預けてくる。甘い香が漂ってきて、英風は脳がしびれそうになった。
「お願いです……どこにも行かないで」
「どこにも行きはしないさ」
なだめるようとして言ったが、それは本心でもある。
呂家の婿としての立場も確かにありがたいが、何より彼女が愛しい。大事だと思う。
まだ少し理解できないところもあるが、今こうして自分の腕のなかで震えている妻は、嘘偽りなく自分を慕ってくれているようだ。どうして離れたりするものか。
(私には……、女性というものが良く解っていないからなのかもしれない)
時折り彼女に覚える違和感は、自分が女性に不慣れなせいなのだと英風は思った。
「金媛……落ち着いて。どこへも行きはしないからね。私の家はここだ。君の側にいる」
「本当に……?」
英風の胸に顔を押し付け、囁くように訊く。英風の目や顔よりも、むしろその胸にこそ答えがあると思っているかのようだ。
「勿論だよ。……君は不思議な人だね」
返事をせず、黙りこんだ。
「なんだか、君はとらえどころがない」
「私のこと、……お嫌い?」
寝室に行くから……。その言葉に輪花はつい頬を赤らめそうになったが、その言葉を聞いたとたん、彼女の顔が曇った。紅い唇をきゅっと噛んで、歯痒いような、悔しいような表情をする。今にも泣き出しそうだ。
「いったい、どうしたんだい?」
「あの、お嬢様は気分が悪いのです」
あわてて枇嬋が口をはさむと、英風は声に怒気をにじませた。
「おまえたち二人とも外に出てくれないか」
「え? ですが」
「いいから出てくれ!」
怒鳴るようにそう言う英風が輪花には頼もしく思えた。婿養子だからといって、英風がけっして必要以上にへりくだらない様子が輪花は嬉しい。
枇嬋は不快そうな顔をしたが、それでもさすがにそれ以上は何も言わず、足早に室を出ていく。輪花も後を追った。
「いったい、どうしたというのだい? ……何か怒っているのかい?」
枇嬋と輪花が出ていって今は二人きりだ。卓上の料理はどんどん冷めていくが、英風にはどうでも良かった。
頑是無い子どものように自分の袖をつかんで離そうとしない妻がひどくいじらしくなってきた。
相手は英風の問いに首を振って否定を示すが、それ以上は何も言わない。
そっとそのかぼそい身体を抱くと、まるで猫のように自分の懐に全身を預けてくる。甘い香が漂ってきて、英風は脳がしびれそうになった。
「お願いです……どこにも行かないで」
「どこにも行きはしないさ」
なだめるようとして言ったが、それは本心でもある。
呂家の婿としての立場も確かにありがたいが、何より彼女が愛しい。大事だと思う。
まだ少し理解できないところもあるが、今こうして自分の腕のなかで震えている妻は、嘘偽りなく自分を慕ってくれているようだ。どうして離れたりするものか。
(私には……、女性というものが良く解っていないからなのかもしれない)
時折り彼女に覚える違和感は、自分が女性に不慣れなせいなのだと英風は思った。
「金媛……落ち着いて。どこへも行きはしないからね。私の家はここだ。君の側にいる」
「本当に……?」
英風の胸に顔を押し付け、囁くように訊く。英風の目や顔よりも、むしろその胸にこそ答えがあると思っているかのようだ。
「勿論だよ。……君は不思議な人だね」
返事をせず、黙りこんだ。
「なんだか、君はとらえどころがない」
「私のこと、……お嫌い?」
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