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消えた娘 二
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「……文全という人は、許婚者がいるんでしょ?」
「でも、親が勝手に決めた相手だから、どうにかするって言ってました。だから私、希望を持っていたのに、……それなのに、香玉さんともいちゃいちゃして……」
紅鶴はさも悔しそうに目に怒りをにじませる。
「いくら仕事だからって、ひどい! それに、桂葉さんとも噂があったし……あんな人だとは思わなかったわ! あーん!」
そこで紅鶴は声をあげて泣き出し、輪花はあわてた。感情の起伏が激しい娘だ。
「お、落ち着いて。そんな男を相手にしては駄目よ。ふられて良かったのよ」
「ふられたなんて、とんでもない! 私の方からふったんです!」
「そ、そうよね」
輪花はなだめるように同意したが、相手は輪花をぎょっとさせるような言葉を発した。
「まぁ、こうなったら、文全は桂葉さんと結婚するんでしょうね。桂葉さんもこのお屋敷を出たがっていましたらか」
「そうなの?」
そんな話は一度も桂葉の口から聞いたことがない。
(姉妹の誓いを交わした仲なのに……)
輪花は気落ちしているのを顔に出さないように努めて、さりげなく訊ねた。
「それは……、やっぱりお屋敷の家計が苦しいから?」
「そんなこと」
紅鶴は低い鼻を生意気そうにそらす。
「桂葉さんは知りませんよ。お屋敷の事情なんて、桂葉さんや香玉さんは知らないと思いますよ。まぁ、枇嬋さんや盟宝さんは知っているかもしれませんけれど、当然こういう話はあまりしちゃいけないことになっていますし。私だって、母さんから聞かなかったら、何も知らなかったです」
紅鶴の言っていることがどれだけ当たっているか不明だが、とりあえず輪花はうなずいてみせた。
「でも、それじゃ、桂葉は何故お屋敷を出たいのかしらね?」
「桂雲さんから離れたいんじゃないですか? あの母娘は仲が悪いから」
二人の仲の悪さはかなり知られているらしい。
「お互い、相手の悪口や愚痴を言いあっているし。桂葉さん、しょっちゅうこぼしているらしいですよ、母さんと離れたいって」
「ふうん」
母とは、それほど重いものなのだろうか。
輪花は自分がまだ幼少のころに亡くなった母を思い出すと、今でも胸が痛くなる。けれど、もし何事もなく両親が健在で平和に育っていたら、ときには親に対して反抗心を持つこともあったのだろうか。想像しても仕方ないことだが。
「でも、親が勝手に決めた相手だから、どうにかするって言ってました。だから私、希望を持っていたのに、……それなのに、香玉さんともいちゃいちゃして……」
紅鶴はさも悔しそうに目に怒りをにじませる。
「いくら仕事だからって、ひどい! それに、桂葉さんとも噂があったし……あんな人だとは思わなかったわ! あーん!」
そこで紅鶴は声をあげて泣き出し、輪花はあわてた。感情の起伏が激しい娘だ。
「お、落ち着いて。そんな男を相手にしては駄目よ。ふられて良かったのよ」
「ふられたなんて、とんでもない! 私の方からふったんです!」
「そ、そうよね」
輪花はなだめるように同意したが、相手は輪花をぎょっとさせるような言葉を発した。
「まぁ、こうなったら、文全は桂葉さんと結婚するんでしょうね。桂葉さんもこのお屋敷を出たがっていましたらか」
「そうなの?」
そんな話は一度も桂葉の口から聞いたことがない。
(姉妹の誓いを交わした仲なのに……)
輪花は気落ちしているのを顔に出さないように努めて、さりげなく訊ねた。
「それは……、やっぱりお屋敷の家計が苦しいから?」
「そんなこと」
紅鶴は低い鼻を生意気そうにそらす。
「桂葉さんは知りませんよ。お屋敷の事情なんて、桂葉さんや香玉さんは知らないと思いますよ。まぁ、枇嬋さんや盟宝さんは知っているかもしれませんけれど、当然こういう話はあまりしちゃいけないことになっていますし。私だって、母さんから聞かなかったら、何も知らなかったです」
紅鶴の言っていることがどれだけ当たっているか不明だが、とりあえず輪花はうなずいてみせた。
「でも、それじゃ、桂葉は何故お屋敷を出たいのかしらね?」
「桂雲さんから離れたいんじゃないですか? あの母娘は仲が悪いから」
二人の仲の悪さはかなり知られているらしい。
「お互い、相手の悪口や愚痴を言いあっているし。桂葉さん、しょっちゅうこぼしているらしいですよ、母さんと離れたいって」
「ふうん」
母とは、それほど重いものなのだろうか。
輪花は自分がまだ幼少のころに亡くなった母を思い出すと、今でも胸が痛くなる。けれど、もし何事もなく両親が健在で平和に育っていたら、ときには親に対して反抗心を持つこともあったのだろうか。想像しても仕方ないことだが。
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