双珠楼秘話

平坂 静音

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隠し部屋 一

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「そうさ。私は本来ならこの呂家の当主として何不自由なく生きるはずが、名家の因習や馬鹿げた占いのために、異母妹にすべて取られてしまったのさ。それだけじゃない……生まれて初めて、いや、生涯ただひとり愛した人も奪われたのさ」
 輪花は下男におさえこまれたまま〝枇嬋びせん〟の告白を聞いていた。
「もう、あたしにはこの呂家を守りぬくということ以外他に生きる理由はないんだよ」
 かわいた目は憎しみと怒りに燃えていた。憎悪と怨嗟は、この老女に驚くほどの情熱と力をあたえてきたのだろう。とうてい火玉と同い齢とは見えない。輪花はますます怯えた。
「さぁ、お喋りはもういいだろう。気の毒だけれど、おまえには死んでもらうよ」
「い、いやぁ……」
「愛莉とおなじく首を吊って死んだということにしておくよ。さ、この紐でさっさと首を絞めておしまい」
 あらかじめ用意していたのだろう、枇嬋は懐から細紐をとりだし下男に命じた。
(いやぁ!)
 紐が輪花の首にかかった。息が出来なくなる。
(私、死ぬの? ああ、いや、助けて……緑鵬……)
 輪花は暗く沈んでいく意識の片隅で、自分の死を予想した。
(苦しい……ああ、英風さ……まぁ……)

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