130 / 140
隠し部屋 三
しおりを挟む
「この呂家は山神として仙女を信仰している。蓮華は呂家にとって意味あるものなのだ。その蓮華模様をさがせばいいのだ」
言うや、英風は階を上がり廊下に上がると、近くの室の扉を開けた。無人であった。となりの小部屋の扉もひらく。清鳳と西破はあわててついて行った。
「最初、私の室の屏風の模様が陰陽板だったのに気づいたんだ。それから意識してさがしてみると、屋敷のあちこちに暗八仙の模様がほどこされているのがわかってきた。洒落たものだと感心していたのだが……。壁だ、二人とも壁の模様を調べてみてくれ。陳円殿が言っていた。呂家には秘密の隠し部屋があるはずだと」
「そ、そうか」
二人はあわてて言われるままに室を空けると、壁紙の模様を調べはじめた。
「おお! ここではないか!」
使っていない衣をしまっている物置のような小部屋で、西破が声をあげた。
「ここの模様は蓮華だぞ」
白い壁紙一面には、薄茶で蓮華の模様が描かれている。
壁を撫でるように触っていた西破が、ふと手の動きをとめた。
「ここだ! かすかに動く」
「叩いてみろ」
英風に言われた西破が力をこめて叩くと、たしかに響く音がちがう。そして、何かしら手応えのある感触があったのだろう。西破がその所を押すと、壁が動いた。
「やっぱり、ここだ!」
苦しい息のなか、輪花はだれかが自分を呼ぶ声を聞いた気がし、闇のなかに、小さな光が灯った錯覚がした。つづいて、誰かの悲鳴が聞こえる。やがて泣き声も。
全ては闇のなかで行われた無言の芝居のようだった。
(ここ……、どこ?)
闇のなかに、あの結婚披露宴の日に見た芝居の光景がひろがっていく。
仮面をつけた役者、きらびやかな衣装を身にまとった美貌の妓女……。整った色白の勝気そうな顔が、輪花に笑いかけている。驚いたことに、その顔がふたつに割れた!
だが、顔の下には、また同じ美しい顔がある。その顔は少し寂しげに輪花に向かって微笑んでいる。輪花は夢のなかで泣いていた。
「輪花! しっかりしろ! 聞こえるか? 輪花!」
輪花ははげしく咳き込んでいた。
一瞬、嘔吐を感じたが、どうにかおさまった。だが今度は身体のあちこちに激しい痛みが生まれた。
「……な、なに?」
「おお、目覚めたぞ。医師だ、早く医師を呼べ!」
言うや、英風は階を上がり廊下に上がると、近くの室の扉を開けた。無人であった。となりの小部屋の扉もひらく。清鳳と西破はあわててついて行った。
「最初、私の室の屏風の模様が陰陽板だったのに気づいたんだ。それから意識してさがしてみると、屋敷のあちこちに暗八仙の模様がほどこされているのがわかってきた。洒落たものだと感心していたのだが……。壁だ、二人とも壁の模様を調べてみてくれ。陳円殿が言っていた。呂家には秘密の隠し部屋があるはずだと」
「そ、そうか」
二人はあわてて言われるままに室を空けると、壁紙の模様を調べはじめた。
「おお! ここではないか!」
使っていない衣をしまっている物置のような小部屋で、西破が声をあげた。
「ここの模様は蓮華だぞ」
白い壁紙一面には、薄茶で蓮華の模様が描かれている。
壁を撫でるように触っていた西破が、ふと手の動きをとめた。
「ここだ! かすかに動く」
「叩いてみろ」
英風に言われた西破が力をこめて叩くと、たしかに響く音がちがう。そして、何かしら手応えのある感触があったのだろう。西破がその所を押すと、壁が動いた。
「やっぱり、ここだ!」
苦しい息のなか、輪花はだれかが自分を呼ぶ声を聞いた気がし、闇のなかに、小さな光が灯った錯覚がした。つづいて、誰かの悲鳴が聞こえる。やがて泣き声も。
全ては闇のなかで行われた無言の芝居のようだった。
(ここ……、どこ?)
闇のなかに、あの結婚披露宴の日に見た芝居の光景がひろがっていく。
仮面をつけた役者、きらびやかな衣装を身にまとった美貌の妓女……。整った色白の勝気そうな顔が、輪花に笑いかけている。驚いたことに、その顔がふたつに割れた!
だが、顔の下には、また同じ美しい顔がある。その顔は少し寂しげに輪花に向かって微笑んでいる。輪花は夢のなかで泣いていた。
「輪花! しっかりしろ! 聞こえるか? 輪花!」
輪花ははげしく咳き込んでいた。
一瞬、嘔吐を感じたが、どうにかおさまった。だが今度は身体のあちこちに激しい痛みが生まれた。
「……な、なに?」
「おお、目覚めたぞ。医師だ、早く医師を呼べ!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
君の左目
便葉
ライト文芸
それは、きっと、運命の歯車が狂っただけ。
純粋な子供の頃から惹かれ合っていた二人は、残酷な運命の波にのまれて、離れ離れになってしまう。
それもまた運命の悪戯…
二十五歳の春、 平凡な日々を一生懸命過ごしている私の目の前に、彼は現れた。
私の勤める区役所の大きな古時計の前で、彼は私を見つけた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる