双珠楼秘話

平坂 静音

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隠し部屋 三

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「この呂家は山神として仙女を信仰している。蓮華は呂家にとって意味あるものなのだ。その蓮華模様をさがせばいいのだ」
 言うや、英風は階を上がり廊下に上がると、近くの室の扉を開けた。無人であった。となりの小部屋の扉もひらく。清鳳と西破はあわててついて行った。
「最初、私の室の屏風の模様が陰陽板だったのに気づいたんだ。それから意識してさがしてみると、屋敷のあちこちに暗八仙の模様がほどこされているのがわかってきた。洒落たものだと感心していたのだが……。壁だ、二人とも壁の模様を調べてみてくれ。陳円殿が言っていた。呂家には秘密の隠し部屋があるはずだと」
「そ、そうか」
 二人はあわてて言われるままに室を空けると、壁紙の模様を調べはじめた。
「おお! ここではないか!」
 使っていない衣をしまっている物置のような小部屋で、西破が声をあげた。
「ここの模様は蓮華だぞ」
 白い壁紙一面には、薄茶で蓮華の模様が描かれている。
 壁を撫でるように触っていた西破が、ふと手の動きをとめた。
「ここだ! かすかに動く」
「叩いてみろ」
 英風に言われた西破が力をこめて叩くと、たしかに響く音がちがう。そして、何かしら手応えのある感触があったのだろう。西破がその所を押すと、壁が動いた。
「やっぱり、ここだ!」

 苦しい息のなか、輪花はだれかが自分を呼ぶ声を聞いた気がし、闇のなかに、小さな光が灯った錯覚がした。つづいて、誰かの悲鳴が聞こえる。やがて泣き声も。
 全ては闇のなかで行われた無言の芝居のようだった。
(ここ……、どこ?)
 闇のなかに、あの結婚披露宴の日に見た芝居の光景がひろがっていく。
 仮面をつけた役者、きらびやかな衣装を身にまとった美貌の妓女……。整った色白の勝気そうな顔が、輪花に笑いかけている。驚いたことに、その顔がふたつに割れた! 
 だが、顔の下には、また同じ美しい顔がある。その顔は少し寂しげに輪花に向かって微笑んでいる。輪花は夢のなかで泣いていた。

「輪花! しっかりしろ! 聞こえるか? 輪花!」
 輪花ははげしく咳き込んでいた。
 一瞬、嘔吐を感じたが、どうにかおさまった。だが今度は身体のあちこちに激しい痛みが生まれた。
「……な、なに?」
「おお、目覚めたぞ。医師だ、早く医師を呼べ!」
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