双珠楼秘話

平坂 静音

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目覚め 一

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 視界が明るくなったと思ったら、心配そうに自分を見下ろしている英風の顔が見えた。そして、清鳳、色黒の四角ばった顔の男。たしか、英風をむかえに来た男だ。
 そして、ゆっくりと身を起こすと、あたりには大勢の人がいた。
 風と陽の光を感じて、そこが庭に面する廊下で、その床に自分は寝かされていたのだと輪花はやっと気づいた。
「輪花、良かった、無事で」
 英風は涙ぐまんばかりに喜んでくれている。
 すこし距離を置いた所で、紅鶴が心配そうにこっちを見ていた。その向こうには、見知らぬ黒い衣を着た男たちが見えるが、皆いそがしそうに動いている。壁を調べたり、室を開けたり閉めたりして、何かをさがしているようだ。
「隣町から来た役人たちだ。……魔香をさがしているのだ」
 英風の言葉を輪花はぼんやりと聞いていた。それでは呂家の悪事が露見したということか。
 喜んでいいのだろう。だが……。
「き、金媛お嬢様は?」
 それに玉蓮や枇嬋、火玉はどうなったのだ。それと……、銀媛。輪花のもの問いたげな視線を理解したのだろう、英風が囁いた。
「玉蓮たちは一室に集められている。むろん、使用人たちもだ。それに、銀媛という娘も」
 その名を口にしたとき、かすかに英風の瞳に影が走った。
「それと……、輪花さん、大奥様は先ほどお亡くなりになられました」
 清鳳の言葉に輪花は目を見張った。
「最後に、輪花さんの居場所をさがすのに大奥様は協力してくださいました。悲しまないで……」
 輪花は自分が涙ぐんでいることに気づいた。英風の隣の大柄な男が不思議そうな顔をして輪花を見ている。
「いろいろ大変な目に合わされたというのに……、その人のことを慕っていたのか?」
(わかりません……)
 輪花は力なく首をふった。
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