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宙ぶらりん
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その事実自体不利だが、さらにその話が、三人の男たちは《遊月楼》の妓女に魅了されたがため人生が狂ってしまった、《遊月楼》の新しい娘は、あれは妖婦だ、魔性の女だと妙に大げさに夜の世界にひろがってしまったのが、花鈴にとっては運がわるかった。どれほど落ち目とはいえ、遊里では《遊月楼》は老舗で噂のひろまるのは早い。とくに悪い噂は。
花鈴は複雑な心境をおさえて、そのことを早口で説明した。
冗談半分にしても、自分が魔性の女だと囁かれているというのは、どうにもきまりが悪い。その噂を聞いた遣り手婆も眉のはしを下げて、なんとも情けない顔をしたものだ。
(よりにもよって、あんたが妖婦で魔性の女だなんて、どこでどう話が転んでそんな噂が広まったのかね……。いっそ、あんたに男を食い殺すぐらいの気概があれば、あたしはまだ安心だよ)
なまじ自分たちがいらぬ画策をして返答を伸ばし伸ばししていたため、こんな仕儀におちいってしまったので、遣り手婆はひどくそのことを悔やんで責任を感じているのだ。どうにかして花鈴がいい客をつかまえないかぎり、彼女の悩みは消えないようだ。
「そうなのか……」
なんと言っていいのかわらかない、というふうに秋封が力なくつぶやいた。幸運なのか、不運なのか、彼には判断しづらいのだろう。
「だから、わたし宙ぶらりんの状況なんです」
自分で言いながら花鈴は、お祭り好きの御大尽が、宴の折に楼の中庭の大木から吊るして作らせ、気に入りの妓女にこがせて、その色鮮やかな裳裾が宙に舞うのを見て面白がっていた鞦韆(ぶらんこ)のことを思い出した。
ほんの座興だったが、女たちに人気で、そのまま残してある。時々、花鈴も気がむけばその鞦韆にのって裾を蹴散らせ風を楽しむ。ほんの一瞬、下界をはなれ、空で踊っているような不思議で心地良い気持ちになれるのだが、それはやはりほんの束の間のことだ。
跳んでいる瞬間は自由で楽しいけれど、その自由には限りがあり、下では濁世が待ちかまえている。花鈴は今、まさにその宙ぶらりんの気楽でいて、脆い状態に身を置いていた。
妓女としての情熱も野心もないけれど、いくらなんでもこのままの状況がつづけば、やがては《遊月楼》にもいられなくなる。借金返済のためには、それこそ安っぽい娼家に下げわたされる可能性も無い、とは言えないのだ。そして、三流の娼家でも借金が返済できなければ、いずれは場末の売春宿に落とされるかもしれない。
考えただけでもぞっとする。花鈴は生成り色に柳色をあわせた薄青色の衿元に首をすくめた。
「ふうん……宙ぶらりか。なんだか今のわたしと同じようだな」
秋封が、目尻に幼さと成熟さがほのかににじむ、複雑かつふしぎな表情で苦笑した。
「お坊ちゃん、いえ、若様とわたしが、同じですか?」
花鈴は複雑な心境をおさえて、そのことを早口で説明した。
冗談半分にしても、自分が魔性の女だと囁かれているというのは、どうにもきまりが悪い。その噂を聞いた遣り手婆も眉のはしを下げて、なんとも情けない顔をしたものだ。
(よりにもよって、あんたが妖婦で魔性の女だなんて、どこでどう話が転んでそんな噂が広まったのかね……。いっそ、あんたに男を食い殺すぐらいの気概があれば、あたしはまだ安心だよ)
なまじ自分たちがいらぬ画策をして返答を伸ばし伸ばししていたため、こんな仕儀におちいってしまったので、遣り手婆はひどくそのことを悔やんで責任を感じているのだ。どうにかして花鈴がいい客をつかまえないかぎり、彼女の悩みは消えないようだ。
「そうなのか……」
なんと言っていいのかわらかない、というふうに秋封が力なくつぶやいた。幸運なのか、不運なのか、彼には判断しづらいのだろう。
「だから、わたし宙ぶらりんの状況なんです」
自分で言いながら花鈴は、お祭り好きの御大尽が、宴の折に楼の中庭の大木から吊るして作らせ、気に入りの妓女にこがせて、その色鮮やかな裳裾が宙に舞うのを見て面白がっていた鞦韆(ぶらんこ)のことを思い出した。
ほんの座興だったが、女たちに人気で、そのまま残してある。時々、花鈴も気がむけばその鞦韆にのって裾を蹴散らせ風を楽しむ。ほんの一瞬、下界をはなれ、空で踊っているような不思議で心地良い気持ちになれるのだが、それはやはりほんの束の間のことだ。
跳んでいる瞬間は自由で楽しいけれど、その自由には限りがあり、下では濁世が待ちかまえている。花鈴は今、まさにその宙ぶらりんの気楽でいて、脆い状態に身を置いていた。
妓女としての情熱も野心もないけれど、いくらなんでもこのままの状況がつづけば、やがては《遊月楼》にもいられなくなる。借金返済のためには、それこそ安っぽい娼家に下げわたされる可能性も無い、とは言えないのだ。そして、三流の娼家でも借金が返済できなければ、いずれは場末の売春宿に落とされるかもしれない。
考えただけでもぞっとする。花鈴は生成り色に柳色をあわせた薄青色の衿元に首をすくめた。
「ふうん……宙ぶらりか。なんだか今のわたしと同じようだな」
秋封が、目尻に幼さと成熟さがほのかににじむ、複雑かつふしぎな表情で苦笑した。
「お坊ちゃん、いえ、若様とわたしが、同じですか?」
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