あの花の盛りに

平坂 静音

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十二

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「つまり、加奈さんは座敷の主だか霊に食べられてしまってっていうこと? 欠けてしまった四君子の一つ、〈菊〉の埋め合わせに? 菊模様の着物を着ていたから?」
 わたしの声はやや呆れていたと思う。
「だから僕の推理というか、空想だよ」
 さすがに尚彦は恥ずかしそうに頬を赤くした。 
「それを元にして小説でも書いてみたら?」
 わたしが皮肉な言い方をしてみたせいか、尚彦はむきになって言いつのった。
「じゃ、今からあの座敷へ行ってみようよ。ほら、教授が言っていたじゃないか? 襖一枚向こうは別の国だとか。僕、なんだか今夜は春菜と別の国へ行ってみたい気分なんだ」
 急にそんなことを言われて、しかもそっと腰あたり手を伸ばされて、わたしは胸が爆発しそうになった。
 売り言葉に買い言葉、しかもそこへ甘いスパイスみたいなものをふりかけられて、わたしは座敷へ向かわずにはいられなくなった。
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